賃金カットは違法か? 正しい“給与明細の見方”

東京ウォーカー

厚生労働省の調べによると、賃金カットを実施または予定していた企業は、2008年度で81.8%! なんと、10社のうち8社は賃金カットを行う時代なのだとか…。かなりショッキングな事実だけど、そもそも賃金カットってそんな簡単にできるものなの? (個人的にも)気になる記者は、先月の給与明細片手に弁護士の先生を直撃! 正しい「給与明細の見方」を教えてもらった。

「ひと口に給与といっても、『一定割合の支払いが義務付けられているもの』と『いつでもカットできるもの』に分類できるんです」とは、書籍「法律力」の著者でもある弁護士の伊藤愛彦先生。

手元の給与明細でまずチェックすべきは、「基本給」と「時間外、休日、深夜労働による割増賃金」。これらは、会社の一方的な都合で減額することはできないので正当な金額が支払われているべき部分。これに対し、通勤や家族、住宅、役職などの各手当は、労働基準法でも支払いを義務付けていないので、会社の都合でいつでもカットできてしまう部分なので、減っていても残念ながら文句は言えないのだとか。

と、ここで一つのギモンが。基本給がカットされないなら大幅な“賃金カット”なんてありえないのでは? 「それが、会社は『就業規則』の賃金規定を変更すれば、賃金カットできてしまうんですよ」と、伊藤先生。え!? なんですと?

「そもそも、『就業規則』とは現場規律や、賃金などの労働条件について取り決めたものです。労働組合の代表などの意見を聞いた上で、労働基準監督署に届けますが、『業績の著しい悪化がある場合には、賃金を減額することができる』といった項目を加えることはさほど難しいことではないんですよ」

常時10人以上の社員がいる会社では必ず作成しなくてはいけない「就業規則」だが、10人以下や労働組合がない会社では作成義務がないため、いけないことなのだが(本来個別の労働者の同意が法律上必要という意)、事実上 “社長の独断”による賃金カットされている場合も少なくないのだそう。日本の90%以上が中小企業なだけに、伊藤先生も「就業規則の内容によっては、会社は同意を得られない従業員に対しても賃金カットできてしまうので、自分の会社の就業規則は、給与明細と同じようにチェックすることが肝要です」と力強く話す。

ちなみに、賃金の減額にも上限があり、「1回の減給額が1日分の平均賃金の50%を超えてはならない」もしくは「1か月の減額総額が、月収の総額の10%を超えてはいけない」と労働基準法で定められているので、ガクンと減った人は要注意だ。

身を守るアドバイスとしては、「業績や仕事の内容など、自分の労働の証拠を残しておくのがベストですね。おかしいなと思ったら、労働基準監督署などの行政に相談してください」と伊藤先生。まずは手元の給与明細や、就業規則をチェックしてみては? 賃金カットは今や他人事ではない話。アナタの会社もひょっとしたら、ひょっとするかも…。 【東京ウォーカー】

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