「おもしろいけれど、必ず役に立つ」をコンセプトに、ユニークなアイデア商品で大ヒットを連発する家電メーカーがある。それが日本屈指の電気街・秋葉原に「サンコーレアモノショップ 秋葉原総本店」を構えるサンコー株式会社(以下、サンコー)だ。
サンコーが開発する商品は、1人暮らしでも気軽に焼肉を楽しめる「至高のひとり焼肉『俺の石焼きプレート』」や、忙しいサラリーマンでも短時間でシワ伸ばしができる「シワを伸ばす乾燥機『アイロンいら~ず2』」というような、名前からすでに興味をそそるものばかり。オンラインショップを見ると、ついクリックしたくなる商品がズラリと並んでいる。
特に2020年以降のコロナ禍において自宅で楽しめるグッズを中心に人気に拍車がかかり、2021年はメディアの出演依頼が300件近くに達するなど、人気急上昇中。今回は商品開発の裏側について、サンコー株式会社 広報部長のえき晋介さんに聞いた。
コロナ禍で大ヒット!消費者の悩みを先回りしたユニーク家電
サンコーの始まりは2003年。当時パソコン周辺機器のメーカーで働いていた現社長が、「海外で見つけたおもしろい商品を販売したい!」と一念発起して起業したのがきっかけだ。
そこから売上を伸ばして、3年目からは自社開発商品の販売を開始。現在は自社で企画したアイデア商品を中心に販売をしている。しかし商品開発はただ「おもしろい発想」だけで完結するのではなく、「ユーザーのお悩みを解決する」ことを最も大事にしているという。
「基本的に、すべてのアイデアのきっかけは『お客様の生活のお悩みに応えたい!』というところからスタートします。ただユニークというだけではなく、実際に使って役に立つ高品質な商品を提供することを常に心がけています」
サンコーの商品開発のポイントは、画期的なアイデアだけでなく消費者の需要に先回りすること。それを実現しているグッズの1つが2018年に発売したロングセラー商品「ネッククーラーシリーズ」だ。一見ヘッドフォンのような見た目だが、内側には電源を入れると冷たくなるプレートがあり、首周りを冷やして全身の体温を下げることができるという優れもの。
「すごく冷えた缶ジュースをずっと当てているくらいひんやり冷たいです。『夏が暑いからどうにかしたい』という声に応えて開発したのですが、実際に販売してみると現場作業の方が熱中症対策に重宝されていたりと、予想以上に本格的な使い方がされていてとても驚きました」
また、ネッククーラーシリーズはマスク着用時の熱中症対策の需要もあって、夏のコロナ感染対策のお供としても愛される商品になった。
週に一度のアイデア出しが社員のノルマ
サンコーが年間で発売する新商品は、なんと約100点。それだけアイデアを出し続けるとなるとネタが枯渇してしまいそうに感じるが、社員が楽しんでアイデアを出す工夫がなされているのが大きな特徴。えきさんは「社員全員で常にネタを考えまくっています」と話す。
「当社には『毎週新商品のネタを1人1個以上出すこと』というルールがあります。社内にはアイデア出し専用のウェブ掲示板があるのですが、そこに自分の悩みや商品のアイデアなどを書き込む仕組みになっています。批判的なコメントやダメ出しは一切禁止なので、みんなのびのびとアイデアを出してくれています」
このルールは正社員からアルバイトまで全社員共通のルールになっていて、社員たちは毎日血眼でアイデアの種を拾い集めているのだとか。また、掲示板で良いアイデアが出ると賞が付与されるという。社員のモチベーション向上にも積極的だ。
会社全体で常にアイデアを追い求めているサンコー。そんななか、オフィスワーカーの悩みからヒントを得て作ったのが「お米もおかずもこれ一台!2段式超高速弁当箱炊飯器」。これは0.5合のお米ならわずか15分で炊ける弁当箱型の炊飯器で、付属のおかずトレイにおかずを入れて炊窯の上にセットすれば炊飯時の水蒸気で加熱し、炊飯と同時に調理が可能という便利グッズだ。
「これは『オフィスでも炊き立てご飯が食べたい!』という願いをかなえるために生まれました。1段目にお米を、2段目におかずを入れて家から持って行き、オフィスで炊飯してお昼に食べるという使い方をされている方が多いです。また、芸能人の方は電子レンジなどの調理器具がない楽屋で食事をしなければいけないことも多いため、この炊飯器を愛用している方もいらっしゃるんです。SNSに食事の様子を投稿していただいたりしています」
いつどこでもほかほかご飯を食べたいという欲求は、日本人なら誰でもあるもの。電源さえあればどこでも手軽にご飯が炊けると評判になり、オフィスワーカーだけでなく車中泊や釣り人、キャンパーなどにも大好評。近年のアウトドアブームにもぴったりな、痒いところに手が届くような商品だ。