メタボの蛇口?おでんから水?大阪らしい「珍蛇口」で、他社に差をつけるカクダイの挑戦

関西ウォーカー

日頃何気なく使っている水道の蛇口。長さや大きさ、コックの違いはあれ、さほど大きな差はないと思っていないだろうか。ところが、そんな蛇口の概念に一石を投じる商品を次々投入しているメーカーがある。大阪で水回り商材全般を扱う株式会社カクダイだ。同社のユニークな蛇口やチャレンジングな取り組みについて、取材した。

一般的な洗面空間や蛇口はこんなイメージだ


143年の歴史ある企業。水回り全般や配管部材など扱うカクダイ

株式会社カクダイは、大阪市西区にある製造メーカー。創業は1879年(明治12年)、設立は1954年(昭和29年)と、長い歴史を誇る。取り扱うのは蛇口や水を受ける器など水回り全般に加え、洗面台下の配管部材にも力を入れる。

正面から見ると、思わず吹き出したくなる「誰や!メタボにしたん?」。この丸く膨らんだ左右非対称の形は、シリーズの中でも技術力を要したそう


洗面台には欠かせない止水栓や、洗面台の下をのぞけば、必ず見られる排水トラップなども同社の製品だ。トラップは洗面台などの下にあるU字やS字状の配管で、下からの排水の臭いやガスを遮断したり、害虫などが上がってくるのを防いだりしてくれる重要な部品。きっと一度は目にしたことがあるはずだ。

これがトラップ。洗面台下などに見られる排水管だ


よくあるのは銀色の配管だが、同社ではカラーバリエーションをそろえ、隠すだけでなく、あえて見せる配管としての商品も展開している。

こちらは止水栓。シルバーのほか、こういったカラーバリエーションもある


オシャレ蛇口から、おもしろ蛇口に方向転換

同社が注目されるようになったのは、個性豊かな蛇口の製造によるところが大きい。もともと行っていたのは、大手メーカー製品の代替蛇口や交換部品の製造と販売。当時は蛇口の材質や厚みなど細かく規定されていたため、どのメーカーでも互換性があり、代替部品にも需要が見込まれていた。

しかし、規定が緩和されたことにより、各メーカーが独自の規格で蛇口を製造するようになり、部品の互換性がなくなってしまった。さらに大手メーカーが自社で交換部品の販売を開始、交換部品市場がなくなっていくことが予想されるようになる。

そこで同社は生き残り戦略として、オリジナル蛇口の製造に力を入れることに。だが、ここで困難にぶち当たる。「はじめはオシャレな蛇口を作ろうとしていました。でも、それではどうしても大手メーカーや海外メーカーと似たようなデザインになってしまいます。“オシャレ”というジャンルで独自性を出すことは、非常に困難でした」と開発担当者は振り返る。

「ならば独自路線で行くべきだ」と考え、打ち出した路線が「関西の企業らしさ」前面に打ち出した「おもしろ蛇口」だった。そして2011年に開発を開始、実際の商品は2012年から発売された。

おもしろ蛇口には競争相手もアンチもいない

今までの路線とは全く違う商品ラインナップはまさに挑戦的な試みだったが「オシャレな蛇口は比較対象がたくさんあり、そのデザインをよいと感じる人も、よくないと感じる人も出てきます。もちろん、他社とも激しい競争にさらされます」と続ける。

ところが「おもしろ蛇口」には、比較対象がない。その結果「アンチが出ませんでした」とのこと。さらに「他社からすれば『こんなバカげた商品を作って(笑)』と思われるようなものばかりなので、競争の必要もありません」とメリットが多い。

「Da Reyaシリーズ」でも、特に開発に苦労したという「誰や!メタボにしたん?」横から見てもそのユニークな形が伝わってくる

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