「スーパーハンコアート」をご存じだろうか?これはハンコを無数に押して描くアートのことで、その創始者が安東和之さんだ。どのようにして発想し、今に至るのか。また、スーパーハンコアートのおもしろさや難しさとは? 安東さん自身のこれまでと、これからについても教えてもらった。
もともと言葉遊びが好きで文字×アートを発明
――安東さんのプロフィールを教えてください。
【安東】大分県出身で、東京都在住。フリーのアーティストとして活動しています。ハンコをたくさん押して絵を描く、スーパーハンコアートを創案し数多く制作してきました。個展やグループ展、イベントに加えて、TV(「ヒルナンデス!」「スッキリ」など)をはじめ、メディアにも多く取り上げていただいています。また、スーパーハンコアート以外にもボードゲーム制作や指サック似顔絵なども手掛けています。
――スーパーハンコアートを始めたきっかけは?
【安東】もともと言葉で遊ぶこと、大喜利や4コマ漫画などが好きで、ハンコに着目しました。スーパーハンコアートはただの絵ではなく、近寄って観た時のハンコの文字によって、また違った意味を持たせられておもしろいんじゃないかと。そういった動機で始めて、今に至ります。
――スーパーハンコアートと、ほかのアートとの違いは?
【安東】まず、ハンコを画材として使っている点は珍しいと思います。遠くから観るとひとつの絵ですが、近くで観るとハンコで描かれているという驚きがあり、そのハンコの文字によってまたもうひとつの意味を持たせられます。
あと、愚痴や文句など、なかなか声に出して言いづらいことも、その驚きでごまかされ、割とポップに表現できます。以上のような特徴はあると思いますが、ほかのアートとの違いかどうかはわかりません。ハンコを使った作品は別でもあるでしょうし、改めて違いを考えると、ちょっと難しいですね。
――スーパーハンコアートならではのおもしろさや難しさは?
【安東】観覧者の視点でいうと、やはりまず「ハンコで絵が描かれている!」という驚きがあると思います。ひとつの作品で何万回と押すこともあるので、「根性がすごい」とか「思いついても誰もやらない」とか「発想が変態」とかよく褒められます。
作り手の目線でいうと、ひとつの作品が完成した時の達成感がすごいです。大きな作品が多いのですが、何カ月も毎日ハンコを押して完成した巨大な作品を見た時の気分は、これ以上ないぐらいの快感です。あと非常にわかりづらい仕掛け(ある部分だけハンコの文字が違う、色が違う、など)を考えるのも楽しいです。そういう意味では変態的かもしれません。
難しさという点では、ハンコを正確に押す(角度や色の濃さなど)ことに意外と技術が要ります。始めたばかりの頃はそれに苦戦していました。