近頃、何かと世間の話題に上がることが多い「NFT(エヌエフティー)」だが、この言葉の意味を理解している人はまだまだ少ない。簡単に説明すると、NFTとは“代替不可能”なトークンのことで、コピーが簡単なデジタルデータと違って「唯一無二の価値を付与できるトークン」なのだ。とはいえ、現状のNFT市場は投機目的な色合いが濃く、一部には詐欺や犯罪を行う人も存在する。そのため、日本ではNFTを採用することを懸念する声もある。
そこで今回、「暗号資産は今非常に大きい勢いで成長しており、日本の経済の成長の基盤となることは間違いない」と断言する、ふじすえ健三氏にインタビューを実施。同市場の“可能性”や、日本が世界に誇る漫画・アニメ・ゲームを支えるクリエイターを支援する“秘策”について聞いた。
NFTの恩恵をクリエイターが受けることができる土台を作る
――ふじすえさんNFTの問題に取り組んだ理由を教えてください。
【ふじすえ健三】日本の漫画・アニメ・ゲームといった創作文化コンテンツは世界に通用する競争力を持っています。その産業規模は十数兆円にものぼり、建築業に匹敵するものとなっています。しかも、現在もまだ成長市場となっています。これからの日本を盛り上げていくためには、このような日本の競争力のある市場をさらに伸ばしていく必要があります。
一方で、日本の“創作文化コンテンツ”の下支えをしているのはクリエイターです。そこで私は、クリエイターの皆さんに対してインターネット経由で直接ヒアリングを行い、要望を聞きました。すると、多くの方から「NFT(非代替性トークン)をきちんと使うことができるようにしてほしい」という声が聞かれました。
――なるほど、“現場の声”が元になっているわけですね。一般的に、NFTの問題点としては、イーサリアム(ETH)などの暗号資産に一度交換する必要が手間となる点(暗号資産取引所にいちいち口座を開設する必要があるなど)や、売買した後の税務処理が複雑である点があげられます。
【ふじすえ健三】はい。それらの問題を解決することにより、NFTで、日本の漫画・アニメ・ゲームなどにおける創作物の「世界中で取引可能になる仕組み」を構築し、その恩恵を直接クリエイターが受けることができる土台を実現できると考えています。それが実現すれば、日本のコンテンツ産業をますます世界で普及させ、またコンテンツをつくるクリエイターにも恩恵が回り、また新しい作品が創られていくという循環ができることが期待されます。
日本のNFT法整備は世界に比べて遅れている
――それはぜひ実現していただきたいです。ちなみに、日本のNFTの法整備は、世界の潮流と比べて遅れている?それとも早いのでしょうか?
【ふじすえ健三】NFTを活用したビジネスの拡大という観点から見ると、日本のNFT法整備は遅いと思います。現状だと、NFTは有体物(形のあるもの)ではないため、民法上の所有権が認められません(東京地裁平成27年8月5日判決では、ビットコインは有体性を欠くため、所有権の客体にならないと判示)。他方、シンガポールでは、NFT購入時にNFT自体の所有権類似の権利が付与されるのが一般的となっています。
また、オンラインゲームやアプリゲームなどでの有償のくじ系資金のガチャは、ガチャによってゲーム内のトークン価値以上のキャラクターを獲得すると一種のギャンブルの形態が成立することから、トークン価値を下回るキャラクターしか獲得できないような状況が発生しています。つまり、ガチャの刑法上の賭博罪(第185条)への該当性が問題となります。さらに、NFTの価値算定についても評価手法が確立されていないため、NFTが盗難に遭い、損害賠償請求を行うにしても、価値評価について争いが生じる可能性があります。これらの問題・課題については、自民党デジタル社会推進本部 NFT政策検討PT「NFTホワイトペーパー」にも検討課題として記載されています。
――税務上の問題ひとつをとっても、とても大変そうですね。
【ふじすえ健三】NFT売買の税務処理も煩雑であることから、一般ユーザーの利用がまだ進む状況とはなっていない状況です。日本の暗号資産に対する最大税率が55%(所得税45%、住民税10%)と諸外国と比べても極めて高い税率になっているのも暗号資産、NFTの利用促進の足を止める要因となっていると考えられます。私は、この税制を改正することで国内の暗号資産の利用促進を加速させ、NFTの活用による日本コンテンツ産業の振興につなげたいと考えています。暗号資産・NFTの利用が拡大することにより、上記のようなNFTに関する法規制の整備も加速的に進んでいくと考えています。