愛らしい芸を披露する姿がSNSなどで大バズリしている、ラッコのメイとキラ。「鳥羽水族館」(三重県鳥羽市)で飼育されているそんな2頭のおかげか、日本では久々にラッコブームが起こりつつあるという。しかし、国内で飼育されているラッコは、わずか3頭しかいないことを知っているだろうか?
今回は日本国内でのラッコ飼育の現状について、約40年にわたり「鳥羽水族館」のラッコ飼育に携わる“ラッコおじさん”こと、石原良浩さんにお話をうかがった。過去にラッコブームが巻き起こり、日本各地の水族館で見られたラッコが、どうして3頭にまで減ってしまったのだろうか。
近い将来、国内の水族館ではラッコが見られなくなる可能性も
30年ほど前には日本国内で28カ所、122頭ものラッコが飼育されていたというが、現在国内で飼育されているラッコは全部で3頭。うち2頭を鳥羽水族館で飼育している。
「ラッコの飼育頭数が減少している理由はいろいろとありますが、過去に122頭いたラッコの半数以上が国内で生まれた個体で、世代を重ねるうちに繁殖能力という点で障害が出てきたことが1つの原因です」(石原さん)
国内で飼育されているラッコ3頭のうち、メスの1頭はすでに繁殖が難しいとされる16歳以上となり、残りのオスとメスは同じ両親から生まれたきょうだいなので繁殖させることはできない。現状のままでは、日本国内でラッコを繁殖させることは至難の業だ。
それならば新しいラッコを輸入すればいいのかというと、そう簡単な話ではないのだという。日本では主にアメリカから野生のラッコを輸入していたが、アメリカの国内法でラッコを含む海洋哺乳類の捕獲が禁止されたため、輸入することができなくなったのだ。
現在では国内に3頭というラッコだが、なにも急に数が減ったわけではない。
「かつて、今以上のラッコブームがあり、多くの方がラッコに注目してくれていました。しかしブームが終わると、ラッコに対して皆さんの興味や関心が向かなくなりました。その間もラッコを取り巻く環境は変化し、国内での飼育頭数が少しずつ減っていったんです。3頭になった今、再び注目を浴び、皆さんがその少なさに驚かれているというのが現状です。数が減ってしまったことは残念ですが、皆さんに再び興味を持ってもらえたことはうれしいですね」(石原さん)
また、日本国内では一時絶滅したとされていた野生のラッコが、北海道東部沿岸に近年戻ってきており、繁殖していることも確認された。石原さんは、メイやキラなどに興味を持ってもらうことで、野生のラッコも気にかけてほしい、ラッコのためにも海を綺麗に保とうと思ってもらえたらうれしい、と話す。
「今も昔も変わらないんですよ、ラッコのかわいさはね。ずっとかわいいんです。今また、こうやって皆さんにかわいいと思ってもらえることが本当にうれしいです」(石原さん)
鳥羽水族館のラッコが芸達者である意外な理由
日本国内で飼育されているラッコ3頭のうち、2頭を飼育している「鳥羽水族館」。その愛らしい仕草がSNSで拡散され、今や“鳥羽水族館のアイドル”となったメイとキラは、芸達者なラッコとして話題だ。
1日3回の食事の時間には、2頭と飼育員によるパフォーマンスを見ることができる。食事の前になると、水槽前には多くの人だかりが。特に土曜・日曜・祝日には、1時間前から場所取りをする人もいるほどの人気ぶりだ。
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