3層補修トリートメントで実現したサロンクオリティの指通り。『GINZUBA』が目指す「ヘアケアからヘアライフへ」という新しい世界

東京ウォーカー(全国版)

“時間を惜しまない至高(※)のヘアケア”という軸で、ヘアライフブランドとして日本だけでなく世界を狙いに行くために立ち上げられた『GINZUBA(ギンズバ)』。この斬新なネーミングのブランドが今、3日に1回自宅で「3層補修トリートメント」で髪をケアするだけで至高のヘアケアが体感できると、SNSを中心に話題となっている。今回は、ブランドを展開するトリコ株式会社の代表取締役CEO花房香那さんと、『GINZUBA』の開発にゼロから携わった共同創業者・プロダクトマネージャー加藤敏美さんに、開発秘話や海外展開への展望について話を伺った。
*GINZUBAブランド内において

トリコ株式会社の代表取締役CEO花房香那さん(左)と、共同創業者・プロダクトマネージャー加藤敏美さん(右)【撮影=阿部昌也】


自宅で3日に1回の3層補修で美容院の指通りが体験できる『GINZUBA』

ーー新ブランド『GINZUBA』について、どういったブランドか教えてください。
【加藤敏美】“時間を惜しまない至高のヘアケア”というキャッチコピーをブランドの軸にしています。これまで家庭でするヘアケアは“パッとできる”とか、“すぐ美しくなる”って謳っていて、わりとコスパ重視で製品が作られている傾向がありました。それで、花房と「ヘアケアの世界って、何で美容院でしかできないことが多いんだろうね」と話していて。今思えば、その何気ない会話から誕生したブランドなんですよね。

【加藤敏美】私は、一消費者として、ドラッグストアや美容院で販売されている製品で髪をケアしても、美容院の仕上がりと比べると、クオリティがガクッと落ちるって感じていたんです。美容院に行って1、2週間くらいすると「あれ?あのときのツヤ感が減っているな」と気づいて、市販品を使ってもやっぱり限界を感じたんですよね。それで「美容院また行かなきゃ」ってなる…。そんなことを繰り返していたのが発端で、「美容院に行かなかったら、髪の毛がバサバサになってきた」っていう、悲しい気持ちにならないようにするにはどうしたらいいんだろうね?とか、家でどうやったら美容院のクオリティを再現できるか?というようなことをテーマに商品開発をしています。

美容院に行って日にちが経ってから、市販のヘアケア用品を使用しても、それほど効果は感じられなかったそう【撮影=阿部昌也】


【加藤敏美】そして、“自己投資をして自分の自己肯定感を上げてほしい”という、弊社のフィロソフィーもあります。ですから、『GINZUBA』も髪の毛の質を高めるものを作りたいというよりかは、自分の髪の毛をケアしている時間を大切にしつつ、製品の品質や仕上がりに対する体感も、ものすごくいいものにしたい。そんな想いも込めてブランドを立ち上げています。この想いはもうひとつのブランド『FUJIMI』でも同じです。

ーー『GINZUBA』というネーミングも変わっていますね。響きがいい。
【花房香那】そうなんですよ。変わっている名前にしたかったんです。シブい感じが好きなんですよね。『FUJIMI』っていう名前はすごく気に入っていて、忘れにくいじゃないですか。それに、よく「なんで『FUJIMI』なんですか?」って声をかけてもらえるんです。ですから、ネーミングもインパクトのあるものにしたいと話していて、インパクト重視で『GINZUBA』と命名しました(笑)。

『GINZUBA』への想いを語る花房香那さん【撮影=阿部昌也】


【加藤敏美】「『GINZUBA』の“Z”って読むんですか?読まないんですか?」って聞かれたりします。オシャレなファッションブランドだと読まない文字がありますよね。でも『GINZUBA』は『ギンズバ』と、そのままの読み方です。“メイド イン ジャパン”という部分は大事にしたくて、そこから日本らしい刀をモチーフに刃の銀色から“GIN”、そして刀を振り下ろして切り裂いたときの「ズバッ!」っという擬音から“ZUBA”を掛け合わせて、『GINZUBA』ってネーミングしました。さらに、日頃からヘアケアに求められる髪の毛への仕込みが、職人が使う道具の感覚や追求しているクオリティに似ているなと思ったんです。たとえば寿司屋だったら、包丁を次の日のためにちゃんと研いでおくじゃないですか。それってヘアケアも同じで、明日の自分のためにちゃんとケアしますから。そんな職人のような想いと、丁寧にプロダクトを作っていきたいという想いも、この『GINZUBA』という名前に込められています。この名前で日本から世界に広げていきたいと思っています。

ーーブランドカラーの黒にも意味があるのでしょうか?
【加藤敏美】はい、『GINZUBA』は、私たちがちゃんといいと思えるものを作りたかったので、髪が黒く生えてくるアジア人(東洋人)向けの製品になっています。実は、髪の毛の構造って人による違いがほとんどないんです。違いが現れるとしたらダメージによるもの。ブリーチやカラーであったり、紫外線を浴びた量であったり。使っている枕の違いだけでダメージに差が出るんです。そして、ダメージを受けた髪の毛を改善する機能は、東洋人の黒い髪毛であれば基本的に同じという考えで作っています。

ーー3日に1回の使用で美容院の施術と同様の効果が得られるのはユーザーにとってすごく魅力的だと思いますが、商品を開発する側としてはかなり大変だったのではないですか?特に苦労したことはありますか?
【加藤敏美】かなり大変でした(苦笑)。商品開発で特に苦労した点は、クオリティを維持しつつシンプルにすることと、家で使いやすくするところですね。美容院のクオリティを家で実現するとなると、どうしても3から5ステップ、多いと8ステップくらい段階を踏んでいく必要があるんです。同じようなステップ系のトリートメントはすでに存在しているので、そのまま商品化することも可能でした。花房とも「美容院のものをそのまま使えばよくない?」って話をしていたんですけど、よくよく調べてみると、美容師さんたちは面倒なことをたくさんやってくれていたんですね。

【加藤敏美】たとえば、まず揉み込んで、途中で塗って洗い流して、また塗ってさらに洗い流して、といった具合に。さらに、クオリティを維持するために途中でドライヤーを当ててちょっと熱を入れてあげたり、アイロンを当ててあげたりもしていて。これは家ではあまりにも扱いづらすぎるなと(笑)。だから、どこまでシンプルにできるかを追求することが一番難しかったですね。本当は3ステップじゃなくて1ステップにしたかったんですよ。でもクオリティを追求することも目的だったので、シンプルさとクオリティの両方の視点で追求していき、最終的に3ステップになりました。

黒で統一した洗練されたデザインの『GINZUBA』


ーーなるほど。ステップ数とクオリティの維持の絶妙なバランスでできているわけですね。
【加藤敏美】開発段階では2剤で作ったり1剤で作ったりしましたが、どうしても仕上がりが一般的な市販トリートメントと変わらなくて。美容院の指通りになるものを目指していたので、“美容院クオリティ”の髪の毛の構造を、研究者の方と一緒に「1剤はこんな役割があって」とか「この3剤をオイルにしたらどうなります?」とか、めちゃくちゃ話し合いをしました。何回もトライアルを上げてもらって、1年ぐらいの時間をかけて、ようやく満足のいく仕上がりに到達することができたんです。

補修、吸着、保護の3ステップを自宅でするだけで、美容院のような指通りが体感できるのが『GINZUBA』の最大の特徴


【加藤敏美】当初は「3ステップってユーザーに受け入れてもらえるだろうか?」という不安もありました。そこで、出会った人や友人、知人、いろいろな方にヒアリングして、美容院のクオリティという体感に対して3ステップが一番シンプルという声をいただくことができ、3ステップトリートメントが商品化にいたったという感じです。

【加藤敏美】『GINZUBA』は、それぞれのステップの役割にちゃんと意味があって、途中で洗い流す必要がなく1剤から3剤を順番に髪の毛に塗り重ねて、最後に洗い流してもらうスタイルとなっています。3ステップありつつも一番シンプル。しかも2番目の剤は、市販されているスペシャルケアのトリートメントでもだいたい「15分から20分おいてください」というコミュニケーションが一般的なのですが、『GINZUBA』の場合はたった3分置いてもらうだけでOKなんです。このわずか3分でどれだけ高クオリティの体感が出せるかっていうところが、特に努力したポイントですね。

【花房香那】これまでの化粧品やプロテイン、そして今回のヘアケアも、加藤はお願いしたことに対して勉強して習得する力がすごく高いんです。無理難題を形にする力が本当にすごい!

【加藤敏美】ありがたいですね(笑)。

【花房香那】私はいつも美容院でトリートメントをただただ髪の毛に塗ってもらっていただけだったので、「それが自宅でもできる商品を作ってほしい」と加藤に伝えただけなんです。そうしたら、この形で上がってきました。私たちの目指すものを形にしてくれるOEMを見つけて、求めた効果を発揮する形まで持っていくスピードが本当に速い。すごいスピードで、その道のプロ並みの情報量をまとめるのが、彼女の特技だと思っています。

【加藤敏美】花房はもともとデザイナーで、私は美大出身で、花房と出会う前はWebデザイナーだったので、これまでこういうプロダクトは全く作ったことがなかったんです。でも、この会社(トリコ)で、プロテインとフェイスマスク、そしてヘアケアを作らせてもらったので、進め方のコツはつかめました。新しくプロダクトを作るときは本を5冊から10冊ぐらい読んで、あとはOEMや研究者の方、美容師さんなどに話を聞いています。ただ、専門家に話を聞けば聞くほど、やったほうがいいことは増えるし、細かくなるので大変なんですよね。そのうえで「本当に売れるのか?」「現実的なプロジェクトなのか?」っていうところは、花房に戻していろいろと意見を求めました。

美大出身の加藤さんは、Webデザイナー・プロジェクトマネージャーの経験を経て、トリコに入社。現在はデザイナーとプロダクトマネージャーなど幅広く兼任する【撮影=阿部昌也】


【加藤敏美】化粧やヘアケアって難しく、面倒くささが充実感につながることがあるので、あえて香りを強くつけています。一般のシャンプーやトリートメントはサッパリした香りが好まれますけど、『GINZUBA』の場合は、すごくリッチな印象をつけたかったし、「どんな人が使うんだろう?」と想像したときに、逆にあえて強い香りのほうがいいんじゃないかと思ったんです。ただ、どうしても、その分野での研究者や美容師さんなど専門家が見つからなくて…。

【花房香那】賦香率(ふこうりつ)については専門家のアドバイスを受けながら、どういう印象を持たせたいかといったところを知り合いからヒアリングして作っていきました。

【加藤敏美】OEM側には、商品のバックグラウンドをちゃんと理解してくれる人、コミュニケーションを密にとれる方がいて、しっかりとした商品を作っていただけることを求めています。花房も私も、化粧品や食品を作ってきた経験値はまだ低いですが、その分、一般消費者としての感覚があるので、人が求めているとか求めていないとか、体感が得られそうかどうかみたいなところは、こちらで判断すればいいかなと考えています。これまでのプロダクト開発を通じて、そういう作り方もありかなと思っています。本当に一人ひとりと、みんなでディスカッションしながら作る。

ーー製品化する前のテストでは、どれくらいのヒアリングを行ったのですか?
【加藤敏美】実際にトライアルを利用していただいた方は、100人を超えると思います。体感後のインタビューは50人近くに実施しました。2、3回トライアルをしてもらい、使用前とその後、そして何回か使用してもらったあとと、それぞれ意見を聞きました。そして、特に髪を大事にしていそうな人にたくさん話を聞いた動画はみんなで見ています。インタビューをカテゴライズして、どこのジャンルから攻めるか、マーケ的な意味でもインタビューをしたり、商品開発だけでなく、どう売っていくかみたいなところはかなり揉みましたね。

【加藤敏美】開発側の想いが強いと、どうしても売る側とのコミュニケーションが変わってきちゃうんですよね。技術的な面が強くなりすぎて、消費者に伝わりづらくなったりして…。そういう理由もあって、当初はわかりにくい説明になっていました。ただ、体感してもらい、利用者の髪の毛をよくしたいという目的があるので、「そこに最速で近づけるコミュニケーションはなんだろう?」って考え尽くしました。

ーーインフルエンサーの方のひと言が“刺さる”ケースもありますよね。
【花房香那】そうなんです。「とにかくプルップルになるんだよね」みたいな軽い言葉が刺さったりとかね。

【加藤敏美】そうなんですよね。でも開発側からするとそこに辿り着くのがすごく難しくて、頑張って開発した想いを聞いてほしいじゃないですか。「〇〇を〇〇するからプルップルになるんだけど」って(苦笑)。

【花房香那】伊勢丹のポップアップで、インフルエンサーのひと言の力はすごく感じました。店頭で私たちが一生懸命に話していたんですけど、インフルエンサーさんのひと投稿で商品への理解度や認知度が一気に広がりましたね。

ーー性別による髪質の違いはありますか?
【加藤敏美】髪が生えるまでにホルモンが影響するので、髪が薄くなったり細くなるのが早い方は男性ホルモンの多さが影響している可能性はあります。ただ、生えてくる髪の構造と、そのダメージのかかり方は男女ほぼ一緒です。女性のほうが長い髪の方が多いので、その分、ダメージを受けやすいという事実はありますね。

【加藤敏美】『GINZUBA』はダメージを予防するためではなく、髪が受けたダメージをどこまで改善するかにスポットを当てて作った商品です。ですから、男女問わずどなたでも体感してもらえるはずです。ただ、指通りのいいサラサラ感に命をかけて作ったので、男性でちゃんとセットしている方とか、パーマをしっかり当てている方や無造作ヘアの方などには向いていないかもしれません。

【花房香那】芯からまとまって、サラサラになるので、ワックスとかで髪の毛がうまく持ち上がらなくなっちゃうんです。

【加藤敏美】よく「どんな仕上がりになりますか?」と聞かれますが、「とにかく指通りがよくなって、毛束感とかがなく、サラッとした髪の毛に仕上がります」という部分を強調するようにしています。もちろんユニセックスな方向でプロダクトは作っているので、アジア人(東洋人)の方であれば髪質も基本的には選ばず、どなたにも体感いただけます。花房のようにサラッとした髪質を目指している方には、きっとご満足いただけるんじゃないかと思います。

ーーちなみに、アジア人でも金髪の方の場合はどうなんですか?
【加藤敏美】まず、基本的に欧米人のようなブロンドの髪の毛の人は、黒の要素がそもそもなかったりするので、髪の構造が我々アジア人(東洋人)とは違うんですよ。ですから、もとが黒髪なら金髪でもご使用いただけます。少し脱線しますが、金髪はもう“ダメージの権化”ですね(笑)。黒髪から色を抜く場合がブリーチで、上から浸透させて載せる場合がカラーリングになるので、ブリーチもカラーリングも基本的に痛み方は同じなんです。基本的にブリーチ毛の人って、キューティクルがすべて剥がれていて、しっとりさせる内部の物質が流出しているから、髪質がすごくパサパサになっているんですよ。ですから、ぜひ『GINZUBA』を試していただきたいですね。

【加藤敏美】私は、『GINZUBA』の開発をしてるときにブリーチにしたんです。黒髪だと髪の毛がよくなりすぎちゃって、効果がわからなくなってしまって(笑)。開発してから半年ぐらい経ってブリーチしてみました。私は毎日『GINZUBA』を使っています。オフィシャルのコミュニケーションとしては「3日に1回」としていますが、それは健康毛の場合なんです。『GINZUBA』はダメージの中に入り込んで補修と保湿をして、しっかり1本1本立たせる効果があります。

【加藤敏美】ただ、健康毛でブリーチやカラーリングをしていない方が毎日ご使用いただくと、効果がシャンプーしても落ちなくて、髪の毛自体がどんどん重くなってペタッとしてしまうんです。ですから、まずは3日に1回で試してみてください。私のようにブリーチされている方なら毎日使ってもらってもいいと思います。また、もともとサラサラで特に髪質に悩みがない方も、特別な日の前日とか週1回とか、人によって使い方を調整していただくアプローチをしています。

ーー『FUJIMI』と比較して、違う部分と共通する部分を教えてください。
【花房香那】今年(2023年)の1月にリブランディングをした『FUJIMI』は、パーソナライズできて、ハードルが高くなく人に寄り添うブランドかなと考えています。ブランドテーマも、誰に対しても優しいところがポイントで、それとは逆に『GINZUBA』は、名前の由来にもあるように切れ味のいい、尖ったイメージです。「ヘアケアってもう遅いよね、ヘアライフのほうまで来てるよね」っていう、新しいカテゴリーの先駆けになりたいという想いが強かったので、「シャープなブランド」という立ち位置になります。

【花房香那】また、『GINZUBA』はアジアという市場を強く意識して開発しましたし、国際的なブランドになりたいという想いも強いんです。

『GINZUBA』は、新しいカテゴリーに切れ味よくズバッと切り込んでいき、国際的なブランドを目指している【撮影=阿部昌也】

【花房香那】一方で、トリコという会社には、“私らしい美しさで、私をもっと好きになる”というミッションがあります。ですから、自己肯定感を上げられるとか、使っている時間が自己愛に満ちるみたいなところは、どのブランドのアプローチでも共通だと考えています。

【加藤敏美】「優しいブランドじゃなくて尖ったブランドをやりたい」というオーダーが花房からありました。

【花房香那】「切れ味をすごく上げて」みたいなオーダーをしました(笑)。だって、トリートメントで3本っておもしろいじゃないですか。

ーー確かに、ネーミングを含めてこれまでにないですね。
【花房香那】そういうのをやりたかったんです。

【加藤敏美】斬新さという意味で“刀”を使ったりしています。すでにあるものを作ってもしょうがないですしね。

【花房香那】これは『FUJIMI』でも感じたんですけど、健康食品やスキンケアの商品って、もう世の中に溢れているんです。でも、ヘアケアのブランドでハイブランドはあまりない。だから、絶対ここに波が来るだろうと思っているんです。飽和したカテゴリーなので、逆にハイエンドな価格帯のヘアケアブランドを作りたいという想いをすごく強く持っています。顔って、クレンジングをして洗顔をして、導入美容液と化粧水を塗って、さらに乳液も使って、めっちゃ塗っているじゃないですか。7、8種類も塗っているんですよ。それも毎日。でも髪の毛の場合は、シャンプーしてトリートメントを塗ったら終わり。だから、髪ももっと追求しようと思って、こだわり抜きました。

「髪の毛も洗顔と同じようにもっと労わるべき」と言う花房さん。そんな理由から、ハイエンドのヘアケアブランドを立ち上げたいと思っていたそう【撮影=阿部昌也】


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