ブルースやR&Bの影響を受けて誕生したとも言われるロックミュージックは、老若男女問わず世界中で愛されている音楽ジャンルだ。近年ではYouTubeをはじめとした動画配信サイトで「名曲を弾いてみた」動画を投稿する人も増え、なかでもギターを演奏する人が多い。
そのせいか、「エフェクター」や「アンプ」といったギターの関連用語を耳にするようにはなったものの、実際のところ何を指しているのか、どんな役割があるのかを詳しく知る機会は少ない。コロナ禍でギターを始めたという人も増えているそうだが、関連用語や機械のことを学ぶ機会がない人も多いのではないだろうか。
そこで今回は、国内外の多くのアーティストや音楽スタジオで愛用されているギター用電子楽器を製造・販売するローランド株式会社(以下、Roland) BOSS事業本部 本部長の脇山光弘さんにインタビュー。Rolandとギター関連製品ブランド「BOSS」の歴史や開発秘話について話を聞いた。
電子楽器業界に革命を起こしたRoland
1972年に創業したRoland。電子楽器を専門とするメーカーとして誕生し、2022年には創業50周年を迎えた。現在までに、日本で初めてとなる国産のシンセサイザーや、アコースティックピアノのように鍵盤を押す力加減で音の強弱を付けられる電子ピアノなどを開発した。
Rolandの製品の代表格であるリズムマシン「TR-808」はその名称から業界内では「ヤオヤ」という愛称が定着するほどポピュラーな存在になり、現在のダンスミュージックの発展に大きく関わった製品でもある。この「TR-808」は、“日本の特筆すべき技術のひとつ”として東京・上野にある国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録されているほど。
「アーティストのニーズに応じるための電子楽器を開発していますが、そうして発売された製品がこれまでにない革新的な楽器になることもあります。中でも『ループステーション』という、主にひとりで演奏を行う方が使用される録音した音を繰り返す電子楽器は、想定以上の反響があり大きなムーブメントとなりました。数ある製品の中で個人的に印象に残っている電子楽器です」
海外のアーティストからも信頼を得ているRolandは、国内外問わず電子楽器業界を牽引する存在に。また、主にギターやベースのエフェクターやアンプなどの製品のブランド「BOSS」を展開している。Roland創業初期から立ち上げられ、こちらも2023年に設立50年を迎えた。
「70年代はレッド・ツェッペリンを筆頭にハードロックが流行した時代で、『ギターの音色を変えていろいろな音で演奏したい』というニーズが高まっていました。こうしたギタリストの思いに応えるべく、ギタリストに向けたブランドとして1973年にBOSSの前身となる会社をを立ち上げました。“強さ”や“男くささ”という当時のギタリストのイメージから『BOSS』と命名したんです」
翌年の1974年、アコースティックギターの音を増幅するプリアンプがBOSSブランド初の製品として世に送り出された。その後、1976年に発売したBOSSのエフェクター第1号となる「CE-1」は、著名なギタリストに使用されるほどのヒット製品に。1977年には現在も絶大な人気を誇るコンパクトペダルのシリーズを発売し、世界中のアーティストから愛され続けている。