ギター業界に革命を起こしたRoland/BOSSに聞く!「エフェクター」と「アンプ」の開発秘話
東京ウォーカー(全国版)
ギタリストの必需品「エフェクター」って?
「エフェクター」とは、エレキギターの音色を変化させるギタリストのマストアイテムのひとつ。エレキギターの音を増幅するギター・アンプとの間に接続して使われることが多い。

1977年に発売されたコンパクトエフェクターの初代モデル「OD-1」「PH-1」「SP-1」は、「手軽にプロのような音を出したい」という声を受けて開発。ギターの音に歪み(ひずみ)を作るディストーションやオーバードライブという効果は、当時のロックミュージックの流行に合わせたものだった。エフェクターには多種多様な効果が存在し、“どんな音が出したいか“という演奏者それぞれの趣味に合わせて購入するものだそう。
「BOSSのコンパクトエフェクターはこれまでに150種類以上発売しています。音楽の流行に合わせて作るのはもちろんですが、我々から『こんな音はどうですか』とミュージシャンに提案して開発することも。その結果、種類が豊富になっているんです。中には部品調達が難しくなり、生産を終了してしまったものもあります」
そんななか、1978年に発売した「DS-1」はロングヒット製品のひとつ。ギター上級者に限らず、入門者にもおすすめのエフェクターになっているのだとか。一般的には安くても1万円以上するエフェクターだが、“初心者に使ってもらいたいエフェクター”として「DS-1」「OD-1」はリーズナブルな価格を維持しているという。
「発売したものの、ニッチ過ぎて売れ行きが伸びなかった製品もあります。『スローギア』という、バイオリンのように後から音を大きくする効果を付けられるエフェクターは、特殊すぎて万人受けしなかったようです。とはいえ一部のマニアックな界隈では人気が出たので、いろいろなエフェクターをまとめて好きな組み合わせにできるマルチエフェクターには搭載されてます」

エフェクターは、音を出す回路の部品を変えると出る音も変化するほど、かなり繊細なつくりになっている。そのため、作りたい音に対して、回路の反応から部品の組み合わせや選定を行う。このときに、部品は比較的手に入りやすいもので作るのがポイントなのだとか。その理由として「高価な部品を使うと製品の価格が上がってしまうことになるので、買いやすさ、手に入りやすさの面で注意が必要です」と脇山さん。
価格への工夫と、国内外どこででも購入できるという販路の多さに加えて、厳しい検査をクリアしたものしか世に出ていないという信頼性の高さから、BOSSのエフェクターが定番化したのではないかと考えられる。
「部品が手に入らなくなると、製品自体が作れなくなることがあります。ですが、今ある技術を使って同じ音を出せないかと試行錯誤し、リバイバルした製品もあるんです。1980年代に人気を博した『SDE-3000』は、ハードロックバンド『ヴァン・ヘイレン』のギタリストであるエディ・ヴァン・ヘイレンが現役時代に使用していたことでも知られる名機。部品が調達できず廃盤となっていましたが、2023年に『SDE-3000D』、『SDE-3000EVH』としてリバイバルしました」
「SDE-3000D」は当時の製品の魅力を再現しつつ、今の技術でしかできないことを盛り込んだものとなっているそう。

ただのスピーカーじゃない「アンプ」の役割
「アンプ」とは「アンプリファイア(増幅器)」の略称で、音を大きくするための電子機器。エレキギターはそのまま弾くと非常に音が小さいが、その音を大きくするために使用される。そして、アンプには「オーディオアンプ」と「ギターアンプ」という種類がある。オーディオアンプは入ってきた音を大きくし、ギターアンプは入ってきた音を大きくするのに加え、異なる音にするというもの。エレキギターの音色はアンプが加わることでやっと完成するのだとか。
「最初はオーディオアンプしかなかったのですが、ビートルズやローリング・ストーンズなどが流行った時代に、音をどんどん大きくしていくと歪みが生じるということがわかりました。この歪んだ音が当時のロックミュージックとの相性がよく、『かっこいい!』と反響がありました。それがギターアンプが生まれたきっかけです」
通常、音を歪ませるのはオーディオアンプとしてはよくない現象なのだが、ギターアンプでは歪みを生むことこそが醍醐味なのだそう。
Rolandのアンプは国内のあらゆる音楽スタジオで設置されており、スタジオ経営者からの評価も高いという。アンプに使用される「真空管」という電流や音声信号の制御・増幅を行う部品は、サイズが大きく衝撃に弱いうえに寿命が短い。さらに現在は産地も限られている部品であるため、高価な反面壊れやすいという難点があった。

1975年に発売した「JC-120」はクリーンアンプという、入った音をそのまま大きくするタイプのアンプで、真空管を使用しない設計にしているため、当時のアンプの常識を塗り替えた製品でもあった。真空管を使用しないことで、真空管を使ったアンプでは表現できないクリーンなサウンドが多くのギタリストを魅了。耐久性が高く壊れにくい設計なので、多くの人が出入りする音楽スタジオにとってもメリットだらけの製品だ。「JC-120」は現在も生産が続いているロングセラー・モデルでもある。
使用する部品や素材によって、細かく音の表現が変わる電子楽器。高価な素材や入手困難になった素材を使用せずとも、同じ音が出せるように設計するのにはかなり精密な作業が求められる。そんな状況でも「プレーンな状態から徐々に歪んでいく、この過程にあるギターサウンドの最もおいしい部分を楽しみたいんです」と語る脇山さんは、演奏者の目線からも開発に取り組んでいるようだ。
「これからギターを始めてみたいと思っている人には、“実際の音をしっかり聴くこと”を大切にしてもらいたいです。音を出すこと自体はギター、アンプ、シールドケーブルがあればできるので、あとは音色の違いを確認できるような環境を作るために、ヘッドフォンやアンプを準備するといいと思います。マルチエフェクターの『GT-1』、アンプは『WAZA-AIR』が持ち運びに便利ですよ」


Rolandではプロ・アマチュアの線引きをせずに製品を製造・販売しており、価格帯によるグレードの差はあれど、どのモデルも音のクオリティを徹底している。「アマチュアだから」「趣味だから」などと、とらわれず音楽を楽しんでほしいのだそう。
電子楽器メーカーならではの強みを生かして
近年はパソコン上で楽曲制作を行い、動画配信サイトに投稿するクリエイターも増えてきている。多くの機材をそろえずとも、パソコン一台で音楽を演奏できるようになっている状況について、楽器メーカーとしてどのように考えているのだろうか。
「音楽の楽しみ方が時代とともに変わってきているなと感じています。簡単に曲を作れることで誰もがクリエイターになれるし、音楽クリエイターが増えるのは大歓迎です。我々は、その活動の中で生まれる『こういう音が出したいんだけどな』という欲求に応えていきたいと思います」

Rolandの製品には、パソコンで使用できるソフトウェアシンセサイザーやクラウドサービスなどもあり、パソコン上で楽曲制作をする人たちに向けたサービスも数多く展開している。電子楽器メーカーならではの展開だ。「最終的には人の手で演奏されるので、プレイヤーのニュアンスを表現できるようにしたい」と脇山さん。音楽において人の手で行うプロセスがなくなることはないため、今後も時代に合わせた製品やサービスを提供していくのだとか。
「コロナ禍によってライフスタイルが変化し、家で過ごす時間が増え、楽器の売上も上がりました。インターネットやSNSが発達したことで演奏の場も広がり、クリエイター同士で繋がりやすくなった今、その繋がりをサポートする、クラウドサービスの『Roland Cloud』やAIなどのツールをもっと活用していただきたいです。また、BOSSは考え方にとらわれない『ブレイクスルー』をテーマに、サウンドイノベーターとしての役割を果たしていきたいと思います」
雨の日が増えるこれからの季節。Rolandが開発する挑戦的な電子楽器と、BOSSが生み出す革新的な機器が織りなすギター演奏を、改めて楽しんでみては。
取材・文=織田繭(にげば企画)
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