「食堂 七彩」などで腕を磨いた店主が独立した「かしわぎ」。店名は東中野駅の開業時の駅名で、「地元の人に長く愛されたい」という思いが込められている。醤油ラーメンのほか、白たまり醤油やアサリなどの塩ダレを合わせた塩ラーメンも人気だ。
決して洗練された一杯ではない。また、特別高価な素材を使っているわけでもない。それでも「かしわぎ」のラーメンは、客をとりこにする不思議な力を秘めている。
中華の伝統的な製法がスープを高みに押し上げる
豚の旨味の中に、香味油の魚介の風味が立ち上り、奥深い味わい。黒胡椒を効かせ、パストラミ風に仕上げた肩ロースと、醤油ダレを塗ってオーブン焼きにしたバラの2種のチャーシューがのる。
■ラーメンデータ<麺>細・角・形状/製麺所: 麺屋 棣鄂・120g<スープ>タレ=醤油・仕上げ油=背脂魚介油/濃度: こってり○○○●○あっさり/種類:豚骨・魚介(煮干)
店主が最もこだわっているのがスープ。「掃湯方式」という、スープを掃除しながら仕上げる中華の技法を用いている。まず鶏ガラや豚骨などを強火で炊き、一度白湯の1番スープを作る。そこに新たなガラや煮干しと昆布、さらに鶏の挽き肉を加え、完成形となる2番スープに仕上げていく。
その時、挽き肉は旨味を出す一方、スープのアクや脂を吸収し、取り除く役目も。そうすることで白湯が、にごりのない清湯に変化していく。ただ、その分、手間も倍かかり、スープの仕込みには丸々2日を要するという。
スープを飲んだ時に感じるコッテリ感は、香味油が演出。カツオ節やサバ節、煮干しなどの魚介を背脂で火入れしていて香りも豊か。
麺は京都の名門製麺所に発注。小麦の風味よりもザクザクとした力強い食感を重視し、国産小麦だけでなくあえて外麦も配合している。
旨味の強い超特撰醤油など3種をブレンドした黒醤油ダレ。真っ黒い色の正体は中国のたまり醤油で甘味を演出。コクのあるイワシの魚醤が隠し味になっている。
「僕自身がニューウェーブ系より、ノスタルジックなタイプが好き」と語る店主の今田匠さん。最もこだわっているスープについては「高級な素材を使わなくても、手間ひまをかければ、おいしいスープができる。それをこれからも証明していきたいです」と伝統的な製法の追求に意気込みを見せる。【東京ウォーカー】
編集部