コーヒーで旅する日本/九州編|知識を蓄え、理解した上で自分サイズにフィットさせる。「STELLIUM COFFEE」に生き方のヒントも見る

東京ウォーカー(全国版)

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州・山口はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州・山口で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

カウンター、ベンチはもちろん、壁のメニューもすべてデミアさんの手作り

九州編の第115回は大分県大分市にある「STELLIUM COFFEE」。JR大分駅がある市街中心部から北に車を走らせていくこと約10分。マンションやアパート、戸建て、さらに会社なども多い場所に小さく掲げられた「COFFEE」のサイン。手作り感あふれる雰囲気で、ファサードから温かみを感じる。DIYしたというカウンター越しにコーヒーを注文し、ドリンク片手にベンチに座って憩うひととき。これが「STELLIUM COFFEE」の日常の風景だ。

STELLIUMは占星術に由来する言葉で、幸運を意味するそう。「グッドラックに近い」とデミアさん

店を営むのはスウェーデン出身のデミア・ベドランさん。日本語はとても堪能で、人当たりも柔らかく、なにより明るい。「彼と話すと不思議と元気をもらえるんですよ」という評判通りのステキな人柄。コーヒーがとてもよく似合うデミアさんが、「STELLIUM COFFEE」を開業するにいたるまでの物語を聞いてみたい。

オーナー兼ロースターのデミア・ベドランさん

Profile|デミア・ベドランさん
スウェーデン出身。オーストラリア、ノルウェー、カナダなど世界各国を巡り、現地に滞在するライフスタイルを送る。日本に初めて訪れたのは17歳のとき。その後、いろいろな国で暮らすも日本に強く惹かれたこと、パートナーが日本人だったことから、2017年から本格的に日本に移り住む。結婚を機に奥さんの実家がある大分市へ。貿易関係の仕事を経て、コーヒーの移動販売をスタート。2024年7月に実店舗「STELLIUM COFFEE」をオープン。

“好き”を入口に

店ではエスプレッソ系メニューも人気。ラテアートも独学

オタク、ナード、ギーク…、これらはなにかに熱中・没頭している人を指す言葉。一昔前はややネガティブな意味合いで使われることがあったが、今は違う。むしろ、その呼称は褒め言葉に近いとさえ感じる。そう前置きしたうえで、「STELLIUM COFFEE」のデミア・ベドランさんは“コーヒーオタク”だ。そして、付け加えるととってもオープンマインドなオタク。

ハンドドリップコーヒーは豆がセレクトできる。各豆に書かれたフレーバーを参考にしてみるのもおすすめ

「STELLIUM COFFEE」をレコメンドしてくれたCreate Coffee Labの椎原さんは「英語や北欧の言語を理解できるため私たちが知らないようなマニアックなコーヒーの情報に精通していて、しかもそれを惜しみなく教えてくれる。デミアさんから、ワールドワイドな最新のコーヒー事情を得ることはよくあるんです」と話す。
これはデミアさんの性格によるものだ。ハマったらとにかく突き詰める。日本語もその典型の一つだったそうで、日常会話はペラペラ。あまり聞き馴染みのない難しい日本語でさえ、理解しているからすごい。
「ゲームやサブカルチャーから日本という国に興味を抱き、日本語は何度も繰り返し聞いて覚えました。一度興味が湧くと、とことん学んで、やり尽くさないと気がすまないんです」と笑うデミアさん。

興味を持ったらとことん追求

グラインダーもエスプレッソマシンもコストパフォーマンスを重視してセレクト

コーヒーもそうだったと続ける。デミアさんにとってコーヒーは基本的にカフェやコーヒーショップで楽しむ飲み物だったのが、コロナ禍で外出できない、店も閉まっている。でもおいしいコーヒーを飲みたい。じゃあ、豆を購入して、自宅で淹れよう。そんな流れで自分でコーヒーを淹れ始めたデミアさん。

実店舗での営業に加え、移動販売も定期的に行っている

「残念なことにそれが、全然おいしくなくて。なんとなく見よう見まねで淹れていたので、当たり前ですよね。そこから理由を突き詰めていくに従って、どんどんコーヒーの世界のおもしろさ、奥深さにハマっていきました。ただ、私はハマったからといってそこにお金をかけるというやり方は好きではなくて。身の回りにある最低限の道具でなんとかおいしいコーヒーを淹れたいと考えました。グラインダーもカフェなどで使われている、実績のあるマシンを選べば簡単なのかもしれませんが、そうなると費用がかかる。自分自身の予算内で購入できるベストなマシンを探すのは楽しいもの。しっかり調べて、信頼できるレビューを読み込んでいけば、あまり知られていないメーカーだけれど、素晴らしいスペックのマシンと出会える。こういったリサーチ・研究を突き詰めていくのが私の性に合っています」

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