2026年7月31日(金)に開幕する舞台『母さん、ラブソングです。』で鈴木おさむさんと4度目のタッグを組む田中圭さん。今回の舞台では、スランプに陥るシンガーソングライターを演じるが、“ダメな人間性”に共感する部分も多いと語る。この舞台で約1年ぶりに役をまとう田中さんに、今の率直な思いから、演じることへの考え方、“人間のダメさ”への持論まで、さまざまな話を聞かせてもらった。
人間には「愛すべきダメさ」が必要
――今回演じるのは、一度ヒットを飛ばしたものの、スランプにおちいっているシンガーソングライターです。人物像について鈴木おさむさんと話されたことはありますか?
【田中圭】実はまだ全然話していないんです。でも設定を聞いたときに印象的だったのは、「ラブソングが書けない」という部分です。
僕はラブソングって恋人同士の愛だけじゃないと思っていて。友達への愛もあるし、家族への愛もあるし、ペットへの愛もあるし、自分自身への愛もある。愛の形っていろいろあるじゃないですか。だからラブソングが書けないということは、単純に恋愛感情がないという話ではない気がするんです。
――どういう人物だと想像していますか?
【田中圭】もともと彼はヒットを経験していて、自分の紡いだ言葉や歌で多くの人の共感を得ていたわけですよね。ということは、人に伝えたい感情や愛情みたいなものは持っているはずです。
それでも書けなくなったということは、自分をさらけ出すことに対する恐怖がどこかで生まれてしまったんじゃないかなと思うんです。全部出し切って、それが受け入れられなかったらどうしようとか、否定されたらどうしようとか…。自分の心の中にある、最後の砦みたいなものを守っている人なのかなって。自信がないからこそ、本当に大事な部分だけは見せられない。そんな人なのかなと想像しています。
――これまでの鈴木おさむ作品での田中さんは、夢を追いながらもなかなか報われない人物を演じることが多かった印象があります。
【田中圭】そうなんです。僕、おさむさんの作品では売れない人を演じることが多かったんです。夢を追っているけれど報われないとか、夢をあきらめるとか。今回は一回は売れているので、そこは役として成長したのかなと思っています(笑)。
――ちなみに、ダメな人物を演じることに抵抗はありますか?
【田中圭】全然ないです。というか、僕は基本的に人間はダメでもいいし、ダメな部分があるからこその人間だと考えているんです。極端な話ですけど、人間が完璧だったら戦争なんて起きないじゃないですか。人類の歴史上、ずっと争い続けてきているわけで。
そこにはいろいろな理由があるけれど、結局は人間にダメな部分があるからだと思うんです。もし人間が完璧なら、ロボットと同じになってしまいますからね。
――人間らしさは欠点も含めて、ということでしょうか。
【田中圭】そうですね。今はAIもどんどん発達していて、スマホで何でも調べられるし、会話もできるし、本当に便利ですよね。
便利になればなるほど、人間のダメな部分はAIと比較されて際立っていく気がするんです。何十年後、何百年後にはもっとそうなるかもしれない。でも僕は、人間はダメでいいと思っていますし、完璧だったらつまらないんじゃないかなと。
――だからこそ、ダメな役にも共感できる?
【田中圭】むしろダメな人のほうが好きだったりします。もちろん人を傷つけたり、不快にさせたりするのはよくないですけど。でも、愛すべきダメさってあるじゃないですか。そこはすごく大事ですし、その人なりの魅力や人間味は必要だと思います。
逆に欠点がなかったら、その人のオリジナリティって何だろうと思うんですよ。AIに「君の個性は何?」と聞くようなものになってしまう気がする。だからダメな役を演じることに抵抗はないですし、むしろ完璧な人間を演じるほうが難しいです。完璧な人を演じるときほど、「どんな瞬間に人間らしさを出そうかな」と悩みますね。