森見登美彦の同名小説を原作とした長編アニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』。頭がよく、探究心旺盛な小学4年生の少年“アオヤマ君”を演じるのは、本作が声優初挑戦となる北香那。そして、アオヤマ君が通う歯科医院に勤める明るくもミステリアスな“お姉さん”を蒼井優が務める。
ファンタジア国際映画祭で最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞の長編部門を受賞するなど注目を集める本作は、郊外の街に突如ペンギンが出没し、その不思議な出来事を調べはじめたアオヤマ君のひと夏の体験を描いた物語。主演声優を務めた2人に、作品の魅力や声の演技に対するこだわりを聞いた。
――少し不思議な出来事を描いた本作ですが、お二人の物語に対する第一印象を聞かせてください。
北「最初はペンギンと少年とお姉さんのかわいらしいお話かなと思っていたんです。原作を読み進めるうちに、本当に切ないし、生きることを考えさせられたと言っても過言じゃないくらい深いお話だなと感じました」
蒼井「私は台本ではじめて触れたんですが、その時はよく分からなくて(笑)。夏に公開される映画だし、笑って泣ける王道な作品を想像していたんですが、少し違う形でみんなが楽しめる作品でした。
エンディングの宇多田ヒカルさんの『Good Night』を聞いている時に、一気にこの映画が走馬燈のようにグワーっと押し寄せてくるような感覚になる映画で、それがものすごく面白くて。大人の夏休みにいい映画だなって思いました。でも、絶対何人かで観に行った方がいいと思います。あれはなんだったのかって語りたくなるから(笑)」
――完成した作品を観て、印象に残っているシーンを教えてください。
北「私が一番好きなのは、アオヤマ君がはじめてお姉さんの家に行くところです。男の子が年上の憧れのお姉さんの家に行ったという照れている感じや緊張が、アオヤマ君の顔に出ているんですよ。『ああ、ドキドキしているんだな』と、見ていてかわいいなと思っちゃいました」
蒼井「私は後半になるんですけど、2人でペンギンに乗るシーンがあるじゃないですか。アニメだからもちろん乗っていないんですけど、乗った気になれるというのは声優をやらせていただけたからこそ体感できることで、そういうのがやっぱり楽しいです。実写ではそういうわけにはいかず、大体固い板の上に乗ることになるので(笑)」
――北さんは本作は声優初挑戦となりますが、演じるにあたりキャラクターの表現で意識したことは?
北「アオヤマ君は自分でも言うくらい頭のいい子で、そういう子が時折見せる子供らしさやおかしくなる言い回しといったかわいらしさに惹かれました。なので、語尾に子供らしさを加えてみたり、抜ける感じの喋り方もはっきり言わずふわっとさせることで、そういうかわいらしさを引き出せるかなと思いました」
――小学4年生の男の子を演じるにおいて参考にしたことはありますか。
北「男の子の声のトーンが分からなかったので、自分の妹の授業参観に参加したんです。アオヤマ君ぐらいの年頃の男の子の感じを頭に入れて演技の参考にしました。向こうから喋りかけてもくるので、『そうなんだー』なんて言いながら勉強していました(笑)」
――蒼井さん演じる “お姉さん”は、優しく包み込むようなトーンに感じました。
蒼井「とにかくアオヤマ君に対しての愛情を持ち続けてほしいということだったんです。お姉さんには『やあ、少年』って台詞がすごく多いんですけど、一辺倒にならないように、ちょっとずつ差をつけられたらいいなと思って演じました。普段はお姉さんみたいなキャラクターを演じることがあまりないので、すごくやりづらかったです(笑)」
――“お姉さん”の演技の上でのモデルはいるのでしょうか?
蒼井「後々いろいろな物語が出てくるけれど、”お姉さん”は基本的にはものすごくオーソドックスな役で優しくて美人でスタイルもいい、そこにサバサバした感じもありつつという、男性の理想が全部詰まった役じゃないですか(笑)。私が今まで見てきた実写映画にはこういう人が出てきたことがなかったので、特定の人物をイメージしてはいないんですけど。とにかく声を出してみて、そこから石田監督と音響監督さんにベースの部分を決めてもらってのスタートでしたね」