みかん山からオリーブ山へ。小田原市が今、変化をし始めている。小田原市はみかん生産量で神奈川県1位。近年は温州みかんのほかに、中晩柑(ちゅうばんかん)やレモン、湘南ゴールドなどの栽培が進んでいるが、市内丘陵地では、シカやサル、イノシシなど有害鳥獣による農作被害が深刻に。また農家の高齢化も進み、新たな担い手も不足している。
そこで、注目したのが「オリーブ」だ。鳥獣被害が少ないうえ、オイルやピクルスといった食品はもちろん、石鹸やクリームなど加工品の幅が広く、需要が高いことから、オリーブの木を育てる農家が増えているのだ。
山の上にある“マルシェ”で小田原オリーブ園のオリジナルグッズを
小田原オリーブで作るアイテムを購入できる場所のひとつが、早川にある「一夜城ヨロイヅカファーム」のマルシェ。「小田原オリーブ園」で育ったオリーブの実や葉を使った、小田原生まれのオリーブのアイテムが並ぶ。
2019年2月現在、オリーブオイルは販売終了し、2019年11〜12月に販売予定。オリーブリーフせっけんは、オリーブパウダーが多く入っているため、洗い上がりがしっとりとした触り心地。
小田原駅そばの地下街、HaRuNe小田原にある「地産カフェ」でも、せっけんとティーバッグを販売。お茶はウーロン茶のようなさっぱりした味わいで評判が高い。
小田原オリーブの特徴を生産者の「小田原オリーブ園」加藤幸枝さんに聞くと、「青リンゴの香りとフルーティな味わい、そしてピリッとした辛味のある、おいしいオイルです」と話す。安心安全な素材で作る、「犬用肉球クリーム」850円や「DOG SOAP」350円も生産・販売している。
収穫体験などイベントも今後開催予定
また、オリーブに関するイベントもある。小田原オリーブ研究会・会長補佐、小野澤藤一さんが所有する圃場(ほじょう)で、オリーブの収穫体験が2018年秋に開催された。
海に面した斜面に、津波の避難場所を造ろうと思い、そこにオリーブの木を植えたのがそもそものきっかけ。小野澤藤一さんは今後、地元の人とともに、作付け面積を増やし、一大オリーブ山を作りたいと意気込む。「今は植える人を増やしたい。圃場での収穫イベントは2019年度も開催したいですね。地元の「橘商工会」でも、オリーブ収穫後はイベントを開催・販売する予定です」。また、オリーブの植えられた圃場には、ゆくゆくは水と電気をひいてキャンプ場にし、市民のいこいの場として、より過ごしやすくしたいと今後の夢を熱く語ってくれた。
2018年11月には、「HaRuNe小田原」で収穫されたオリーブの販売とともに、オリーブの葉でリース作りなどの体験イベントも開催された。
現在、市内に植樹されたオリーブの木は3品種2,054本(2018年3月現在)。現在取り扱う商品が品薄になっているが、今後は栽培の拡大や、栽培技術の研究、さらなる新商品の開発・販売などが期待される。オリーブは、提灯やかまぼこ、梅干しなどとともに小田原名物の逸品となるのか、今後の活動に注目したい。
【構成=濱口真由美、取材・文=石澤理香子、撮影=島本絵梨佳】
横浜ウォーカー編集部