珍しい“天然氷”のかき氷、そのおいしさの秘密とは

東京ウォーカー

「優しい味わいが魅力」といわれる“天然氷”を使ったかき氷。その貴重な氷を食べられる場所は、今や日本でもわずか。いったい普通の氷とどう違って、美味しさの秘密はどこにあるのか、老舗の氷店を取材した。

栃木県日光市にある、100年以上の歴史を持つ天然氷店「松月氷室」では、5〜9月に天然氷を使ったかき氷が食べられる。「まず氷自体がうまい。さらに、硬くて溶けにくい氷をうまく削っているから、ふわりと溶ける優しい食感になるんだよ」というのは、同店社長の吉新昌夫さんだ。そんな極上の氷を楽しむため、店には20種類ものシロップがそろう。

松月氷室は、1894(明治27)年 創業。以来続く、熱い男たち氷作りとはどんなものなのか。これがまた、すごいのだ。

年間販売するすべての氷は、1、2月にすべて作らなければならない。池の水面に張った山の沢水でできた氷を、丁寧に電動カッターで切り出していくのだ。切り出した氷の厚さは約15cm、重さにして約60kg。その大きな氷を竹の先に鉄の鈎かぎがついた道具・鳶口(とびぐち)とはしごを使って、伝統的な保冷庫、“氷室”の中へと運び入れるのだから、重労働だ。氷室内では氷を溶かさないため、“平ぶち”と呼ばれる保冷用の氷をあてがい、全体をおがくずで覆っていく。水分を吸収したおがくずが気化熱を奪い、室内を冷却してくれるのだ。

そして2ヵ月後、出荷の時期が訪れる。その頃には、氷室のはりの高さ約3mまで積み上げられていたおがくずの山は、氷が溶けて2/3ほどの高さに。商品用の氷は取り出たら室外へ運び出し、氷に付いたおがくずを洗い流す。透明度が高くて硬い、空気が混ざっていない純粋な氷は、外気に触れていた部分を削り落とせば出荷準備OKだ。

ここでもうひとつポイントが。天然氷のかき氷は削る前の準備も違うのだ。

削る前に、氷を−5℃の冷蔵庫で常温である0℃に近づける。常温の状態で削られた氷は、食べても頭が痛くならず、削りは極めて薄くて口の中で溶ける軽さになるという。ふんわりと口の中でとけていく様を思い浮かべると…う〜ん、たまらない!

時間と手間をかけて作られた天然氷のかき氷は、店では異なるシロップをかける「ハーフ&ハーフ」や、野イチゴなど果汁入りのシロップが人気だ。特に「レインボー」(350円)はブルーハワイ、メロン、レモン、イチゴの4種類がかけられ、見た目もまさにレインボー! ほかにも特上マンゴー(450円)や抹茶ミルク(400円)など、種類が多すぎて目移りしそう。

いまや希少となった天然氷のかき氷。ぜひ一度、お試しあれ。【詳細は東京ウォーカー8/4発売号に掲載】

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