注目のフィギュアスケート重松チームに迫る【前編】

東京ウォーカー(全国版)

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東京に大雪の降った1月18日、東京都西東京市東伏見のリンクには普段と変わらず、重松直樹コーチと教え子たちの姿があった。世界ジュニアの代表の座を勝ち取った宮田大地、不振からの脱出を目指し黙々と練習を積む梶田健登。それぞれの課題に真摯に取り組む姿を見ることができた。

重松コーチの現役時代を今でも覚えているファンもいることだろう。1994年には全日本ジュニア優勝、世界ジュニア2位など輝かしい実績を残し、世界選手権への出場も果たした当時の人気スケーターだ。コーチとしても無良崇人、中村健人など多くの選手を育成・輩出している。ここしばらくは指導する男子選手が少ない時期が続いていたが、今季、二人の才能ある男子選手が重松チームに加わることになった。宮田大地、そして梶田健登だ。

課題のジャンプの克服を目指して


宮田大地は福岡県出身、中庭健介コーチの指導の下、頭角を現し、法政大学への進学を機に重松チームに移籍した選手だ。

2015東京ブロック、SPのスタート前、重松コーチと話す宮田大地


「僕の課題はトリプルアクセル、4回転といった高難度のジャンプです。重松コーチの指導が自分に合っていると思い、移籍を決断しました」。

かつて、重松コーチに指導を受け、ジャンプを身に着けた無良崇人、中村健人のことが頭にあったようだ。

「中庭先生は、現役時代の自分のやり方を基に、僕にヒントを与えてくれていました。一方、重松先生は僕に足りない新しいことを教えてくれる。スケートの幅が出て良いと思います。春からずっと重松先生とスケーティングを磨いてきました。その成果が出てきていると感じています」。

復活を期して練習を積む


そしてもう一人、今季、重松チームに移籍したのが梶田健登。2014年にはジュニアグランプリに出場するなど期待を集めた存在だったが、その後スランプに陥り、今は復活を期して練習を積んでいる。

【写真を見る】教え子の梶田健登(写真右)とともに。二人三脚で復活を目指す


「重松先生はスケートの細かな感覚を大切にしている先生だと感じています。ジャンプについても、成功、失敗だけを取り上げるのではなく、転んでも良いところを褒めてくれたり、逆に成功した場合でも、悪いところがあればそれを指摘してくれます。その影響で自分自身、以前よりデリケートな部分、細かな感覚を意識するようになりました。スケーティングについても、エッジをストロークの最後までしっかり使って、途中で浮いたりしないように心掛けるようになりました。重松先生の教え方は自分に合っていると感じています」と話してくれた。

一方、重松コーチは、「今季は男子の素晴らしい選手が二人チームに加わりましたが、空回りしないように頑張っています。二人は同じ学年ですし、お互い刺激になっていると思います」と語る。

宮田選手については、福岡で以前、どのような練習をやっていたのかを知りたくて、中庭健介前コーチに質問をしたそうだが、彼の返答は、“重松先生の思うようにやって下さい、僕から言うことは何もありません”とのことだったそうだ。そこでまずは基礎からやり直すことを決めたのだという。

また、梶田選手については、元々同じリンクで練習していたが、2015年3月に重松チームの門を叩いた。重松コーチは、「点数、結果も大事だが、それよりも私のスケートを学びたい、との思いから、悩んだ末に決断したようです」と梶田選手のチーム入りの経緯を教えてくれた。

重松コーチへインタビューをした当時は、まだシーズン序盤で、今季の目標を聞くことが狙いだったのだが、重松コーチの答えは決して焦ることなく、選手を思いやる内容だった。

「宮田君は今年(2015年)大学に入学し、東京に出てきました。環境も変わり、それに対応するだけで精一杯なはずです。無理がないように気を付けながら、負荷をかけられるときはかけて、練習を進めています」

「梶田君はしばらく不振が続いています。まずは毎日コンスタントに練習ができる体を作ることを目指していて、それが仕上がってくるのを待っている段階です」

移籍した選手からは、重松コーチの指導は以前とは何から何まで違う、勉強になる、という声が聞かれる。

選手それぞれの成長が楽しみ


「何故できないのか、どうして出来るのか、僕なりに、本人に伝わる言葉を探りながら指導しています。それが基礎からつながって、技が成功する根拠になるのだということを伝えていきたいんです」と指導哲学の一端を覗かせてくれた。

重松コーチはかつて無良崇人、中村健人、女子では水津瑠美、庄司理紗など、素晴らしい選手を育ててきたが、彼らのキャリアの最後まで面倒を見たわけではなかった。そのことについて尋ねたところ、まず初めに返ってきた言葉は、「彼らには感謝しています。本当に勉強になりました」、続けて「今受け持っている選手たちも今後どうなっていくかは分かりません。彼らの引退まで立ち会えるかどうかは分かりませんが、自分が正しいと思ったことを、個々それぞれの価値観、性格に合わせながら、本人が気付く方向に伝えて導いていけたらいいな、と考えています。最近は指導する選手も増えてきましたが、どの選手も皆楽しみです。彼らの今いるポジションから一歩前の目標に向かって一生懸命頑張ってほしい、と考えているので、レベルの高い目標を目指している子もいれば、現在、1級、2級で頑張っている子もいますが、それぞれが楽しみなんです」

そして宮田、梶田両選手の今後についても聞いた。※後編に続く

【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】

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