ブームでも知名度に地域差ありの“サウナパンツ” 西日本を中心に広がる独自文化、その境界線はどこ?

東京ウォーカー(全国版)

「カプセル&サウナ フジ栄」のメインサウナ室である「漢のサウナ」

2019年頃よりじわじわとブームの波が押し寄せている「サウナ」。新施設のオープンやリニューアルのニュースは未だ絶えず、ブームは衰えるところを知らない。

さて、唐突ではあるが、「サウナパンツ」という物をご存知だろうか。

「サウナパンツ?まったく知らない」「存在は知っているけれど見たことはない」「よく行くサウナに常備されているのであるのが当たり前」など、認知度は人によってさまざまであろう。いずれにせよ、サウナパンツについて深く意識することは少ないかもしれない。

「大垣サウナ」で使用されているサウナパンツ

サウナパンツとは、主にサウナ施設内で着用するトランクス型のパンツのこと。「サウナ室→水風呂→小休憩」という流れを3回ほど繰り返すのがサウナの入浴法として定着しつつあるが、サウナパンツはサウナ室に入っている間に着用することが多い。また、小休憩(いわゆる“ととのいタイム”)の間に着用することも多い。一般的にスーパー銭湯などには置かれておらず、一部のサウナ専門施設で採用されている物だ。

サウナパンツは、浴室の前などに平積みされている場合が多い。写真は大垣サウナのもの

水風呂に入るときは基本的に脱ぐ必要があるので、サウナパンツは次から次へと交換していくのが一般的。着用する目的としては「裸で過ごすことの羞恥心をやわらげ、じっくりとサウナ浴に専念する」というのが主だろう。「直接座らないことで、サウナ室の衛生を保つ」という施設側にとってのメリットもあるはず。また、施設によっては下着代わりとして、館内着のズボンの下に着用する場合もあるという。

このサウナパンツを初めて採用したのは、カプセルホテルを初めて導入したことでも知られる大阪・ニュージャパングループだと言われている。それゆえに、サウナパンツは西日本のサウナ施設で採用されているケースが圧倒的に多い。一方、関東のサウナ施設でサウナパンツを採用している施設は希少。関東在住のサウナーが西日本のサウナ施設を訪れ、サウナパンツの利用法がわからずドギマギしてしまうというのもよく聞く話だ。

さて、さきほどから大まかに“東”と“西”に分けて話を進めているが、サウナパンツ文化における東西の境目は、具体的にどこなのだろう。独自に検証してみた。

サウナパンツの境界線ハンティング

サウナ検索サイトの情報を基に、電話などで独自調査を進めると「サウナパンツがある」という回答を得たのは、全国で39施設(2022年12月現在、内1施設は廃止予定と回答)。そのうち関西地方は15施設と圧倒的に多い。サウナパンツ発祥の地とされる大阪府で採用している施設は8軒。サウナ専門施設はもちろん、ホテルにあるサウナ付き大浴場でサウナパンツを採用しているケースも3軒あった。やはり関西にはサウナパンツ文化が根付いているのがわかる。

全国のサウナーから支持を得る老舗「大垣サウナ」

その影響は、東海地方にも及ぶ。天下分け目の関ヶ原からもほど近い、岐阜県大垣市は市内のいたる所から美しい水が湧き出る“水の都”。その大垣の湧水を湛えた水風呂で全国のサウナーから支持を得ている「大垣サウナ」(岐阜県大垣市)でも、サウナパンツが採用されている。

「大垣サウナ」の林 亨支配人に話をうかがうと、大垣サウナにサウナパンツがある理由については「深く考えたことがない」としながら、「サウナパンツの境界線は名古屋になると思います。かつて名古屋のサウナと言えば、冨士商事(サウナ&カプセル フジなど)、大和観光(現・ウェルビー)、日新観光(ニューグランドなど、現在サウナ事業からは撤退)の3強でした。いずれもサウナパンツがあったので、名古屋のサウナは関西圏の影響を受けているでしょうね」と自身の見解を聞かせてくれた。

実際に“東海地方のサウナの雄”的存在の「ウェルビー」の3店舗(栄、今池、名駅)に加え、後述する「リラクゼーション&スパ アペゼ」(以下、アペゼ)の合計4店舗(いずれも愛知県名古屋市)がサウナパンツを採用しており、それより東の「サウナイーグル」(愛知県知立市)、「メンズサウナプラザ」(愛知県豊田市)、「サウナオーギ」(愛知県豊橋市)では採用していない点を見ると、一応の境界線は「名古屋」と仮定して問題がなさそう。

なお、サウナイーグル、メンズサウナプラザ、サウナオーギは、同じ愛知県でも尾張地方に属する名古屋とは異なり、「三河」と呼ばれる別の地方にある施設だ。

独自の文化圏、経済圏を形成している名古屋であるが、“西日本”“東日本”の分類ではどっち付かずなことが少なくない。しかしサウナパンツに限って言えば、西日本の影響を受けていることは興味深いところである。

赤は「サウナパンツあり」のサウナ施設。青は「サウナパンツなし」のサウナ施設。黒色で記した4施設は“サウナパンツ文化圏外”にありながら、「サウナパンツあり」のイレギュラーだ

赤は「サウナパンツあり」のサウナ施設。青は「サウナパンツなし」のサウナ施設。“日付変更線”のように愛知県をいびつに分断している

「サウナパンツがある or ないの境界線」を名古屋と仮定したうえで地図上に線引きを行う。すると、名古屋の市街地を細かく分断する“日付変更線”のようないびつな線となった。この理由については、後述する“問題”によるところが大きい。

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