ブームでも知名度に地域差ありの“サウナパンツ” 西日本を中心に広がる独自文化、その境界線はどこ?

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

アペゼにはあるのにサウナフジにはない問題

サウナパンツの境界線を探るうえでぶち当たる、1つ目の問題。同じ冨士商事グループの施設にもかかわらず、アペゼには“あり”、「サウナ&カプセル フジ栄」(愛知県名古屋市。以下、サウナフジ栄)には“ない”のだ。しかもサウナフジ栄は、アペゼより西にある。これは大問題だ。

「サウナフジ栄」のサウナ室。サウナパンツは用意されていない

サウナフジ栄の越智一将副店長に話をうかがうと、「同じグループであっても、方針などはそれぞれの店長に決定権があるので、『最初の方針がそうだった』としか申し上げることができないですね」という回答。

そこで冨士商事のサウナの歴史を紐解くと、男女利用可のアペゼの前身として、名古屋・今池に男性専用の「サウナフジ」(以下、フジ今池)が開業。1970年のことである。

続いて、1997年にサウナフジ栄が開業している。老舗の風格が漂うサウナフジ栄だが、アペゼの前身たるフジ今池と比べると随分新しい。フジ今池の開業当時は「名古屋のサウナにサウナパンツあり」が当たり前の時代だったと推測されるが、サウナフジ栄がオープンした平成初期は地域性に縛られず、施設側に「サウナパンツを置く or 置かない」の選択肢が出てきたのかもしれない。

愛知県名古屋市にある「アペゼ」。男性用の浴室にはサウナパンツが常備されている

越智副店長は「サウナパンツの導入で“衛生を保ちやすい”という側面はあると思います」と述べつつも、今のところ導入は考えていない様子。さまざまなサウナ施設への取材を通して判明したことではあるが、着用したまま水風呂に入ってしまうなどのマナー面、洗濯や補充などのコスト面など、サウナパンツを置くことに関してはメリットもある一方で、デメリットもあるのかもしれない。

「大人の漢の令和モダン」をコンセプトに、2022年7月に生まれ変わった「サウナ&カプセル フジ栄」

ただ、「2022年7月のリニューアルで、名物のプールを囲んでととのう“大人の漢の令和モダン”をコンセプトとする空間に生まれ変わりました。そういう意味では、サウナパンツを着用してリラックスされた方が浴場の雰囲気もよくなるかもしれませんね」と添えてくれた。

三河地方だがサウナピアにはある問題

「サウナピア」の外気浴スペース。開放的な空間ゆえ、サウナパンツの着用を強く推奨する

先ほど「愛知県・三河地方のサウナ施設にサウナパンツはない」と述べたばかりだが、実はイレギュラーが1つある。愛知県豊橋市にある「サウナピア」だ。

こちらにもサウナパンツが、気持ちいいほど整然と積まれている。4代目となる犬飼智久支配人に話をうかがうと、丁寧にも創業者にコンタクトをとってくれた。どうやらサウナピアの創業者が、かつて岐阜県岐阜市にあった「大和サウナ岐阜」(名古屋より西なのでサウナパンツあり)で修行をしたことが影響していることがわかった。

西麻布のサウナ・アダムアンドイブにもサウナパンツあり

「サウナパンツの境界線は名古屋」「岐阜のサウナの影響を受けたサウナピアが最東端」と結論付けたいところだが、東京にもサウナパンツを備えているサウナ施設がある。サウナ好きならすでにピンときているかもしれない。東京・西麻布に店を構える「サウナ・アダムアンドイブ」(以下、アダムアンドイブ)だ。

「アダムアンドイブ」のサウナ室。室温110度近い高温設定が特徴だ

サウナパンツを置いている理由についてムン・テッキュ社長に尋ねたが、「先代からずっと置いてあったのを継続したまでで、特に理由はありません」との回答だった。

そこで筆者の仮説をムン社長にぶつけてみた。まず、アダムアンドイブは「オロポ発祥の店」としても知られている点がひっかかる。“オロポ”とは「オロナミンC」と「ポカリスエット」をミックスした、サウナー御用達として今や全国的に広がっているドリンクのことだ。

浴室内の電話で注文すると、浴室内にドリンクを持ってきてくれるサービスが有名なアダムアンドイブ。サウナ上がりにそのまま浴室内でオロポを楽しみながらくつろぐという風習がある同店にとって、サウナパンツは合理的だったという筆者の説。また、西麻布という土地柄もあってか、芸能人も足繁く訪れるというアダムアンドイブ。プライバシーを守るのにも一役買っているのかもしれない。

これらの説に関しても「そこはあまり関係ないんじゃないかな」という回答であり、残念ながらサウナパンツがある理由についての明確な答えは得られなかった。

「アダムアンドイブ」の浴場。「サウナパンツのまま水風呂に入ってOK」など、独自のルールも多い

しかし、アダムアンドイブの場合、しっかり洗い流しさえすれば、サウナパンツを着用したまま水風呂に入るのもOKという独自のルールがあることを教えてくれた。また、着用するかしないかは自由であり、ムン社長自身もサウナに入るときは着用しないのだとか。ちなみに常連客はほとんど着用せず、若い客ほど着用する傾向があることも取材を通してわかった。

アダムアンドイブのほかに関東地方では、「リーガロイヤルホテル東京」の大浴場にもサウナパンツが常備されていることが判明。ホテルを運営しているロイヤルホテルの本社所在地は大阪であるため、その影響である可能性が高い。

また、「ホテルニューオータニ幕張」の会員制スポーツジム内の浴場にもサウナパンツが常備されていることが確認できた。ニューオータニ直営のため、本社は東京都とのこと。問い合わせてみたが、「なぜサウナパンツがあるのかはわかりかねます」とのことだった。ただ、国内屈指の名門ホテルであるニューオータニ。関西方面出身者のニーズにも応えているのではないかと推測する。かなりのイレギュラーである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3

この記事の画像一覧(全14枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

お花見ガイド2025

お花見ガイド2025

全国1300カ所のお花見スポットの人気ランキングから桜祭りや夜桜ライトアップイベントまで、お花見に役立つ情報が満載!

CHECK!2025年の桜開花予想はこちら CHECK!河津桜の情報はこちら

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!全国の花火大会ランキング

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る