コーヒーで旅する日本/九州編|わいた温泉郷の新たな湯上がりスポットとして人気を集める「UNITED FLAG COFFEE STAND」

九州ウォーカー

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

店があるのは小国町の人気ベーカリー「そらいろのたね」のすぐ下

九州編の第48回は、熊本県小国町に2022年3月31日にオープンした「UNITED FLAG COFFEE STAND」。リーズナブルな家族風呂施設が多く集まるわいた温泉郷にあり、店は土曜・日曜・祝日のみの営業。SNSなどで情報発信はしていないものの、温泉目的で同地を訪れた観光客を中心に徐々に認知を広めている。わいた温泉郷はカフェはいくつかあるが、テイクアウト主体のコーヒースタンドはあまりない。ゆえに温泉に入る前や湯上がりに気軽にフラッと立ち寄って、コーヒーだけを楽しむという意味で、とても使い勝手が良い。どんなメニューを出していて、コーヒーに対してどんなこだわりがあるか。「UNITED FLAG COFFEE STAND」が温泉地にもたらす癒やしを探ってみた。

店主の樋口和さん

Profile|樋口和(ひぐち・かず)
1975(昭和50)年、熊本県小国町生まれ。大学卒業後、アパレルショップのスタッフとして数年勤務。とあるきっかけで習ったそば打ちに魅了され、小国町のファームロード沿いにそば専門店「和の花」を2002(平成14)年に開業。20年を経た今では、そば粉10、つなぎ1の割合で手打ちする、外一そばをはじめ、蒸し鶏が評判を集める人気店に。3年ほど前にコーヒーに興味を抱き、カフェを開く夢を持ち始める。親戚がかつて営んでいた飲食店の建物を活かす形で、2022年3月、「UNITED FLAG COFFEE STAND」をオープン。

湯上がりにコーヒーでひと息

木々の緑を見ながら飲むコーヒーは格別

大分自動車道九重ICから宝泉寺温泉を経て、小国町に至る国道387号から、少し山手に入った場所にあるわいた温泉郷。さまざまな温泉施設が点在するが、家族風呂が多く集まる温泉地として知られている。そんなエリアで人気のドライブルート、ファームロード沿いに現れる「UNITED FLAG COFFEE STAND」の文字。黒をベースにした、のどかな温泉地では目立つスタイリッシュな木造の小屋がショップだ。

コーヒーはテイクアウトが基本だが、敷地内にはパラソルを張った屋外席を用意し、温泉帰りと思われる客がタオルを首に巻いてコーヒーを飲む姿が日常。こののどかな風景は温泉地にあるコーヒースタンドならではだろう。

Tシャツやバッグなどオリジナルグッズも販売


直感で選んだ深煎りをフレンチプレスで

コーヒーはホット、アイスともに深煎りか中煎りが選べる

「UNITED FLAG COFFEE STAND」のメニューは実にシンプルだ。ブラックコーヒーはホットコーヒー(450円)、アイスコーヒー(500円)のみで、深煎りか中煎りが選べるスタイル。豆は福岡市の薬院にあるロースタリーカフェ、cafe MARUGOから仕入れている。その理由を店主の樋口和さんは「カフェを開きたいと考え始めた3年前から、さまざまなロースタリーのコーヒー豆を取り寄せて、飲み比べていました。知人に紹介してもらったMARUGOさんのコーヒーを飲んだ時に、『これだ!』って直感的に思ったんです。私は基本的にコーヒーらしいビター感、どっしりとしたボディ感のある深煎りが好き。そういう意味でもMARUGOさんの豆はどストライクでしたね」と話す。樋口さんはそば職人として20年のキャリアがあるが、コーヒーに関してはほぼ知識がなかった。だからこそ、直感を信じた。

フレンチプレスで抽出したホットコーヒー

樋口さんの言葉を借りれば、cafe MARUGOのコーヒーは「深煎りだけれど、豆ごとに香りの個性があり、力強いボディ感の中に繊細さも感じられる」。繊細な香り、風味特性という意味ではそばと通じるものがあるかもしれない。

現在、店に立つのは樋口さんの兄、裕一郎さん

抽出は深煎りメインのコーヒーショップでは珍しいフレンチプレスを採用。「私があまりコーヒーの抽出について知識がなく、店を開く際にMARUGOさんに相談しました。気軽に立ち寄ってコーヒーが買えるスタンドスタイルなので、お客さまをあまりおまたせするわけにはいきません。一方でやはり淹れたてのコーヒーを飲んでいただきたいと思いました。さらに、スタッフに店を任せる形になるので、誰が淹れても安定した味わいを出したい。そんなことをMARUGOさんに伝えたところ、フレンチプレスを提案されました。それぞれのコーヒー豆が持つ風味、香り、コーヒーオイル特有のコク、甘みをそのまま液体に落とすことができる点にも魅力を感じましたね」と樋口さん。

雑味をできるだけ出さないよう、抽出前に液面に浮かんできたアクをできる限り取り除くなど、独自の工夫も取り入れながら、よりおいしいコーヒーを淹れられるよう日々勉強をしているところだ。

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