「鯛塩そば 灯花」(東京・曙橋ほか)などを展開している「灯花」グループの最新ブランドが誕生。それが「手もみ中華そば 麦の花」で、2018年7月10日に新宿区荒木町にオープンした。今回の店はこれまで得意としてきた淡麗系ではなく、昔ながらの中華そばがテーマ。オープンのいきさつを店主・川瀬裕也さんに聞いた。
飲み屋街のニーズに合わせた“シメにも使える”一杯
早稲田大学卒で前職は広告代理店のサラリーマン。そんなエリートだった川瀬さんが脱サラし、ラーメン店主に転身したのは2012年のこと。
「高校時代からラーメン作りが趣味で、自宅に友達を呼んでよく振る舞っていたんです。いつかはラーメン店主になりたいという夢をずっと持っていて、29歳でついに覚悟を決めて起業しました」(川瀬さん)。
現在の「手もみ中華そば 麦の花」の場所に、1号店となる「塩つけ麺 灯花」(現在は休業中)をオープン。つけ麺といえば、濃厚系が主流だが、鶏や魚介など素材の旨味を丁寧に引き出した淡麗系で瞬く間に人気店に。
その後、2015年には真鯛100%スープの「鯛塩そば 灯花」、2016年には京都の素材にこだわった「京紫灯花繚乱」(四谷三丁目)を立て続けにオープンさせ、四谷エリアで一大グループを築き上げていった。
2018年には「塩つけ麺 灯花」の店舗を「吟醸煮干 灯花紅猿」にリニューアル。「1号店は5席しかなく、(回転率の悪い)つけ麺だとお客様を待たせることになってしまい、煮干しラーメンの『灯花紅猿』に業態替えしました」(川瀬さん)。
そして今回、その「吟醸煮干 灯花紅猿」を「手もみ中華そば 麦の花」に再リニューアルさせた。
「売上は悪くはなかったのですが、『飲んだあとにも食べられるあっさり系のラーメンを作ってほしい』というお客様の声を多くいただき、再リニューアルすることにしました。(店がある)荒木町は飲み屋街なので、やはりその立地にあったコンセプト作りが重要だと考えています」(川瀬さん)。
「灯花」のイメージを一新させる、どこか懐かしい「手もみ中華そば」を披露
最新ブランド「手もみ中華そば 麦の花」のコンセプトは“昔ながらの中華そば”。スープはシンプルな清湯(チンタン)で、鶏ガラとモミジをベースに数種の魚介を合わせている。また、意識的に野菜を多めに投入。スープから出る油分や醤油ダレの塩分濃度を極力抑え、逆に野菜の甘味を生かすことで、あっさりで優しいスープに仕上げている。
そして今回、川瀬さんが「一番こだわった」というのが麺。有名製麺所「菅野製麺所」と共同開発した多加水の“手もみ麺”を採用している。多加水とは小麦に対する水の割合が多い麺のことで、ピロピロとみずみずしい喉ごしでスープとよく絡む。さらに茹でる直前に、丹念に手でもむのもポイント。そうすることで表面に凹凸ができ、麺をすすって噛むたびに異なるいろいろな食感が楽しめる。
これまで見た目も味も洗練された“淡麗系”が代名詞だった「灯花」グループ。そのイメージを覆すが「高校時代、初めて作ったラーメンがこんな感じでした」と川瀬さん。まさに「灯花」の原点ともいえる一杯だ。
取材・文=河合哲治郎/撮影=岩堀和彦