世田谷パン界の奇才「Shima」が抱く職人としての矜持。地元民としての郷土愛

東京ウォーカー

「僕が若いときは、今ほどパン屋は多くなかったと思いますよ。でも、この辺は地域に住むお客様以外に外国人や学生さんなどいろんな方々がいらっしゃるので、やりがいはありますね。食通の方も多いですし」。世田谷で生まれ育ち、自らの店を地元にオープンして10年強が経った「Boulangerie Shima」(ブーランジュリ シマ)の島 健太店主はそう語る。

島 健太店主。店内には多種多様なパンがズラリと並ぶ


パン作りはマニアックでも普遍的なおいしさを


日本屈指のパン激戦区と言われる世田谷。その中で同店は最寄り駅からでも歩いて約15分はかかるが、遠方からもそのパンを求めてお客が訪れる人気店だ。特に絶品と名高いのは、「カレーパングランプリ」の第1回大会で東日本揚げカレーパン部門の最高金賞に輝いた「チキンスパイスカレーパン」(270円)。

【写真を見る】「チキンスパイスカレーパン」(右、270円)と、同様の生地で揚げる「チーズ揚げパン」(左、324円)。どちらも注文してすぐに揚がるよう工夫が施されている


このスペシャリテの魅力のひとつは、揚げたてであること。これは手間よりもおいしさを追求した結果だ。そしてこの探求心は、すべてのパンに当てはまる。生地にしても、たとえばハード系に使用している自家製天然酵母は、あえて扱いが難しい柑橘系の酵母をメインに使って発酵させる。

実験として、過去に試した酵母の数々は島さんの挑戦の証だ。店内のオブジェとしても一役買っている


ほかのパン職人が考えない発想で、自分だけのパンを。でもマニアックにならず、だれが食べてもおいしいパンを。挑戦的でありながら普遍的な味を追求する、そんな島さんの気概が酵母一つをとっても伝わってくる。

「リュスティック」(最右、194円~)は、島さんが修業を積んだ「パン・ド・コナ」時代からのスペシャリテ。オマージュの想いもあり、これだけは当時のレシピで作っている


熱さと温かさを兼ね備えたホカホカのパン店


なお、月曜日のShimaはパン店ではなくパン教室として営業している。これは、自らの地元に出店した島さんの、地域に根差したお店になりたいという想いの表れであるとともに、できたてのパンのおいしさを知ってほしいという願いでもある。

パンと同じぐらい研究熱心なのがカレー。島さんの背後には、約50種のスパイスやハーブが。毎月第一土日のスペシャルカレーパンデーでは、その成果による特別な逸品を味わえる


個性を放ちながらも常に感謝と向上心を忘れず、地元愛にあふれるパン店。今日も「Boulangerie Shima」には、島さんの温かい笑顔とホカホカのパンが待っている。

東京ウォーカー編集部

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