うつ病になるのは“ひよわ”だから?/『マンガでわかるうつ病のリアル』(7)
慣れないテレワークにストレスを抱えていたり、子供の面倒を見るのに疲れてしまったり。「楽しい予定もぐっと減って、なんとなく気分が落ちている……」という人や、その周りの人にぜひ読んでほしいのがこちらの作品。重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを連載形式でお届けする。

運動をしている人はうつ病にならない?

アスリートはうつ病とは程遠く、ひよわな人がうつ病になるというイメージがある

「『うつ病の人ってどんなイメージ?』と聞かれた時、スポーティーな雰囲気の人やシェイプアップされた体つきの人を思い浮かべる人は少ないと思います」
「うつ病を告白したアスリートなどをいくら知識として知っていたとしても、多くの人は意外な例として覚えているのであって、『うつ病』と聞いて真っ先にそういった人たちを連想はしませんよね」
「このようにうつ病のイメージがどうしても運動とは結び付かないからか『運動している人はならない』『体を鍛えている業界の人はそんな病気にはならない』『筋トレすれば治る』『薬なんか飲むより運動した方がいい』……などと考えている人がいるようです。実際に筆者もスポーツ施設等でうつ病を明かしたところ、そのように言われたことが何度もあります」
「心にコミットする。」のような夢のサービスはない

「では実際はどうなのでしょう? 運動習慣をつければ、体を鍛えれば、うつ病は治るのでしょうか?」
「いいえ。そんな単純な話ではありません。もしそうなら世界中の精神病院に立派なトレーニングジムが併設されている事でしょう。うつ病患者さん向けに『心にコミット RIZ◯P!』みたいなサービスがたくさんあることでしょう」
「ではそもそも運動をしている人、鍛えている人はならないのでしょうか?」
「いいえ。そんな事もありません。プロ格闘家やプロサッカー選手、プロ野球選手にオリンピックメダリストなど、多くの競技のアスリートがうつ病になり、中には自ら命を絶った人さえいます」
「○○すればうつ病治るよ」……なんてワケはない!

「世界には日本の人口以上の数のうつ病患者さんがいて(※)、元気になるために毎日努力をしています。そして世界中の専門家が何年も何十年にもわたってうつ病を治す研究をし続けています。ですが、残念ながら『これをすれば治る!』という特効薬はまだ見つかっていません」
※WHO(世界保健機関)は2015年に、全世界のうつ病患者数は3億人を超えると発表
「適度な運動が健康に良いというのは分かります。運動をうつ病治療に取り入れている病院だってあります。運動がうつ病の予防や回復に繋がる例だってもちろんあるでしょう。ですが、それは運動“すれば”治るという事にはなりません」
「うつ病は病気。医学という専門分野の領域です。運動を治療に取り入れるにしても、まずは主治医に相談するべきです。患者さんに元気になって欲しくて、つい『運動習慣つければうつなんか治るって!』などと勧めてしまうその善意までは否定しません。ですが餅は餅屋。病気の治療は専門家に任せておいていただければなと思います」
次回「うつ病で仕事に行けないのは当たり前」では、休職中うつ病患者の遊びと仕事の関係について紹介する。