うつ病の薬が危険ってホント?/『マンガでわかるうつ病のリアル』(13)
慣れないテレワークにストレスを抱えていたり、子供の面倒を見るのに疲れてしまったり。「楽しい予定もぐっと減って、なんとなく気分が落ちている……」という人や、その周りの人にぜひ読んでほしいのがこちらの作品。重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを連載形式でお届けする。

ネットにはびこる噂。精神病の薬って危険なの?

うつ病の服薬治療について、根拠のないデマを信じるな

「『精神科の薬は危険!』『うつ病は薬を飲んでも治らない!』『薬なんか飲むからおかしくなる!』……。精神科で処方される薬を飲んでいることを伝えると、こんな風に言われることがあります」
「中には筆者のように『うつ病の薬は精神科医が金儲けをし続けるために作られたものなので、一度飲むと一生手放せなくなる!』『精神病の薬は製薬会社の陰謀だ!』などと言われる人も(筆者は数年間毎日薬を飲み続けましたが自然に薬の処方は減り、最後はゼロになり、今は通院も必要なくなり普通に日常生活を送っております)」
専門のプロが処方した薬を、何も知らない素人が否定するのはおかしくないか

「では実際、うつ病の人が飲む薬は危険なのでしょうか? ……よく考えてみてください。薬が危険なのは当たり前です。強い副作用だって、怖い飲み合わせだってあります。だからこそ何年も何年も勉強したプロの医療従事者が、慎重に慎重にすべてのバランスを計算して一人一人に合わせて処方するのです」
「例えばあなたが何かの病気で病院に行ったときに、プロの医療従事者ではなくそのへんの素人さんがテキトーに診察し、何となくのイメージやネット情報を頼りに薬を処方したとして、そんな薬を飲もうと思いますか? 大切な人に飲ませられますか? ……怖くて出来ませんよね」
「なら、プロが一定期間飲むように処方した薬を、プロに相談もなしに、まさにそのへんの素人の判断を頼りに減らしたりやめたりしてしまうのは……?」
「そう。精神科に限らず、薬はそもそも“専門知識のない人が取り扱ってはいけない危険なもの”なんです」
「誰もがお世話になったであろう、半分が優しさで出来ている頭痛薬でも、大量に飲んだりお酒と合わせたりすれば優しくなくなります。どんな薬でも用法用量を守って飲むのは当たり前です。なら、そのへんの薬局では買えない、病院でしか処方してもらえないような薬の用法用量を守るのはもっと当たり前でしょう」
明確な治療法が確立されていない中で、一縷の希望を懸けて服薬を続ける患者を邪魔しないで!

「うつ病の人だって、好きで薬を飲んでいるわけじゃありません。副作用は強いですし(筆者は副作用で20kg太りました)、お酒も気軽に飲めなくなりますし、精神科の薬にはまだまだジェネリックが無いケースもあり支払いが高額になることもありますし、誰だって出来れば飲みたくないんです」
「それに、飲んですぐに元気になるわけじゃない。その薬が合うか合わないか分かるのに1、2週間かかったりする。他の科の薬と同じで、飲んでさえいれば後はどんな生活をしてもいいわけではない。なかなか効果を実感できない日々が続けば『本当は飲まない方がいいんじゃ……』なんて不安がよぎることもあります」
「それでも元気になるために必死に耐えて毎日飲んでいるんです。そんなところに素人さんから、何となくのイメージやネットで見た過激な情報なんかを根拠に『危険だよ! やめなよ!』なんて言われたらどれだけのストレスになるでしょうか?」
「危険なのも、飲まないに越したことはないのも分かっていますので、どうかそっと見守ってあげてくださいませ」
次回「うつ病で好きな音楽が聴けなくなった」では、うつ病患者が日常の光や音に敏感になり、感じる苦痛を解説する。