うつ病の治療には長い時間がかかる/『マンガでわかるうつ病のリアル』(29)
慣れないテレワークにストレスを抱えていたり、子供の面倒を見るのに疲れてしまったり。「楽しい予定もぐっと減って、なんとなく気分が落ちている……」という人や、その周りの人にぜひ読んでほしいのがこちらの作品。重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを連載形式でお届けする。

治療に終わりはある!……が、時間はかかる

通院が半年で終わる人もいれば、20年かかる人もいる。個人差が大きいんだ

「うつ病は1週間や2週間で治るものではありませんし、薬が0になったから、退院したからといって治療も終了!というものでもありません。ある程度の治療期間が必要であり、治療期間には個人差もあるようです」
「筆者の例を上げますと、治療開始から約1年半後に閉鎖病棟に入院し、そこから退院して約2年で薬が0になり、その後も2年ほど通院が続きましたので、治療開始から通院終了までトータルで5年半ほどかかりました」
「筆者の周りには半年や1年で通院終了した人もいれば、終了までに20年ほどかかった人もいたりと、本当に様々です」
「そもそも同じ『うつ病』という病名であっても、重度の人もいれば軽度の人もいますし、病気になった原因も、メインで困っている症状も、治療をする環境もみんな違います。うつ病以外の病気も同時に治療している人もいれば、他の障害を持っている人もいます」
「経済的な問題がどうか、制度を利用できているか(連載第20回参照)、信頼できる医者が見つかったか、合う治療法が見つかったかなど、みんなバラバラです。治療法にも個人差があり、筆者の場合はカウンセリングが合わず投薬がメインでしたが、知人は逆に投薬が合わずカウンセリングがメインでした。このように人それぞれバラバラなのですから、治療期間もバラバラで当然でしょう」
治療期間が短いのは頑張った証?すぐ復職する人は優秀?全く関係ない!

「……ちょっと話は変わりますが、つい『うつ病 治療期間 平均』や『うつ病 休職期間 平均』などと調べてしまった方がいるかもしれません。そしてかつての筆者のように、その平均の短さに『マジかよ……』とビックリした人も多いのではないでしょうか」
「ですが、数ヶ月で治療が終わり復職するも数ヶ月でうつ病が再発し、また数ヶ月で治療が終わり復職するもまた数ヶ月で再発……を何度も繰り返す人もいます。10年以上かかって治療が終わり復職し、そのまま問題なく働き続けている人もいます」
「このように、治療期間の平均や復職までの平均期間だけではわからないこともたくさんあります。なので、筆者としては平均と比べることに特にメリットはないと思います。中には他の患者さんと治療期間や復職までの期間を比べて虚しいマウンティングをする人さえいますが(連載第9回参照)、どちらが長かろうが短かろうが関係ありません。比べることに何の意味もありません」
「治療期間は前述の通りバラバラで当然なのですから、期間が長い人が短い人より努力が足りないわけでも“下”なわけでもないのですから」
うつ病の本人が一番、自分の心と体と向き合っている。信じてやってほしい

「大切な人がうつ病になり、何ヶ月も何年も治療が続いているのを見れば『いつになったら治るんだ?』『医者の診断が間違っているんじゃないか?』と考えてしまうこともあるでしょう」
「前に比べてだいぶ元気そうなのに、働かずにずっと家にいるのを見れば『本当はもう治っているんじゃないか?』『いつまで休んでいるつもりだ?』とつい言いたくなることもあるでしょう」
「ですが筆者が思うに、うつ病の人は毎日『いつになったら治るんだ』と考え、毎日『本当はもう治っているんじゃないか?』と自身に向けて言っています。誰かが責めるまでもなく誰かが焦らせるまでもなく、おそらく患者さん自身が一番自分を責め、追い詰めているのです」
「ですから、どうかそんな言葉をかけてしまう前に『うつ病にはある程度の治療期間が必要であり、治療期間には個人差がある』ということを思い出してください。もしどうしても納得がいかなければ患者さんと相談した上で、主治医に相談するなりセカンド・オピニオンを検討するなりしてみてくださいませ」
次回、最終回「今日までうつ病と戦い続けてきたあなたへ」、うつ病のゴールとはどこにあるのだろうから。完全寛解した筆者から、あなたに心からのメッセージを届ける。