今日までうつ病と戦い続けてきたあなたへ/『マンガでわかるうつ病のリアル』(30)

慣れないテレワークにストレスを抱えていたり、子供の面倒を見るのに疲れてしまったり。「楽しい予定もぐっと減って、なんとなく気分が落ちている……」という人や、その周りの人にぜひ読んでほしいのがこちらの作品。重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを連載形式でお届けする。

登場人物たち無断転載禁止


うつ病との戦いにゴールは……ある!

きっと元気になれる、大丈夫


「うつ病になる前の自分に戻る」が正解とは限らない!

ゴールは元の自分?

「うつ病治療の“ゴール”とは何でしょう?」

「筆者はずっとずっと『うつ病になる前の自分に戻る』がゴールだと考えていました。元の自分に戻らなければマンガ家に復帰できない。元の自分のようにバリバリマンガを描けなければ、この大変な業界で活動なんてしていけない……そんな風に考えていました」

「そして、なかなか治療が進まず焦りや屈辱で頭がいっぱいになっていたある日『元の自分に戻って元の自分のように働いたところで、また病気になるだけだ……』と気づき『早く終わりにしなきゃ。だって治療をがんばる意味がないんだもん』と、すべてが絶望に変わり、とうとう自死に踏み切ってしまいました」

自分の心と深く対話して、本当はどうなりたいのかを見つけるんだ

筆者はうつ病を「消す」から「受け入れる」に考えが変わった


「運良く自死に失敗した筆者は、閉鎖病棟に入院し個室に閉じ込められることになりました。誰とも関われず強制的にマンガからも切り離され、自問自答ぐらいしかできない環境で数日間を過ごしました」

「とてもつらかったですが、自問自答をするうちに『元の自分に戻らなければマンガが描けないわけではない。病気のまま活動しているマンガ家もいる。元の自分に戻ることだけが復帰の道ではないのではないか……』と思い、自分のゴールが『マンガ家に戻る』であって『うつ病になる前の自分に戻る』ではないと気づきました」

「そして『マンガ家に戻れるなら必ずしも完全寛解しなくてもいいし、薬が一生必要だったとしてもいいや』と、“うつ病を消す”考えから“うつ病を受け入れる”考えに変わり、気持ちが一気に軽くなったのをよく覚えています」

あなたが思い描くゴールに、きっとたどりつけるはず。だって今日まで「生きてきた」あなただから

人によってゴールの価値観は違う

「“あなたのゴール”が何なのかは筆者にはわかりません。『完全寛解』『社会復帰』『薬がゼロになる』『周りの患者より早く仕事を始める』『生きたいとハッキリ思えるようになる』など、たくさんのゴールがあると思いますが、それは他人が決めることではありません」

「みんな価値観が違うんですからバラバラで当たり前。どれが上なわけでも100点なわけでもありません。筆者の見つけたゴールとあなたのゴールはきっと違いますし、他の患者さんのゴールとも違うでしょう」

「ただ共通しているのは、みんなそのゴールにたどり着き、その人なりの“普通の日々”を過ごしたいのではないでしょうか? “元気になりたい”のではないでしょうか?」

「あなたが願った“普通の日々”がどんなものなのかは筆者にはわかりません。あなたが思う“元気なあなた”も筆者にはわかりません」

「でもこれだけはハッキリ言えます。あなたが願った“普通の日々”は可能性のない未来なんかじゃない。“元気なあなた”はけっして夢物語なんかじゃない」

「あなたなら大丈夫。ずっとずっと病気と戦ってきたあなただから大丈夫」

ずっと贈りたかった言葉を、最後に伝えさせてほしい

治療を続けてきたあなたへ


「日本では毎年毎年、一国の紛争の犠牲者数ほどの人が自ら命を絶っています。そんな社会でなおかつ、自死のリスクが非常に高く、毎日『死にたい』気持ちに襲われるうつ病という大病を抱えながらも、あなたは今この瞬間も生きている」

「誰もそのすごさに気づかないかもしれない。誰もそれを褒めてはくれないかもしれない。でも、あなたは偉い。絶対に」

「実は治療は義務じゃない。投げ出したって罰則もない。なのにあなたは治療を投げ出さずに今この瞬間まで戦ってきた。もし今投げ出していたとしても、投げ出すその瞬間まであなたは戦った」

「這うような思いで病院に行き、認めたくもない病気を認め、戦うと決意し、飲みたくもない薬を飲み、何もできないつらさに屈辱に耐え、心ない言葉に耐え、いつ終わるかわからない、終わりが来るのかさえわからない“治療”をずっとずっと続けた」

「それはあなたの本心が『死にたい』ではなく『元気になれるなら生きたい』である何よりの証拠ではないでしょうか?」

「どうかその本心から目を背けないでください。今日までがんばってきたあなたを、あなたが裏切らないであげてください」

「筆者は完全寛解したあともつらい目に遭いました。仕事も何もかも投げ出したくなることもありました。でも『死にたい』だけは本当に一度もありません。毎日ハッピーなんてことはなくても、自死に失敗してよかったとは今も心から思っています」

「きっと元気になれる」

「前例がたくさんいる。ここにもいる」

「また心から笑える日がくる。心から楽しいと思える日がくる」

「死ななくて良かったと思う日が必ずくる」

「今は信じられないかもしれません。けど、どうか僕のメッセージを覚えておいてください」

「“今日を生きたあなたに、未来のあなたは必ず感謝する”」

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