【漫画】歳をとっても“推し”は“推し” 月日を重ねたアイドルとファンを描いた漫画が心に刺さる
若かった頃の自分が大好きだったアイドル。でも自分もアイドルも、人はどうしても歳を重ねていくもの。30年ぶりに“推し”のライブに足を運んだ女性が見たものは――。漫画家の三月病(
@3_byou_
)さんのオリジナル漫画「齢をとるアイドルとそのファンの話です」がTwitterで発表され、「めちゃくちゃ心にくる」「こういう生き方がしたい」と反響を呼んでいる。

30年ぶりに見た“推しアイドル” 女性が得た答えとは?
娘に誘われて急遽アイドルのコンサートに観に行くことになった女性。公演するアイドルをチケットで確認すると、なんと自身が30年前にどっぷりはまっていたアイドルグループであることに気づく。とは言え、30年も経てばメンバーも入れ替わっているだろうと思う女性の目の前に現れたのは、全員が30年前そのままのメンバー。自分より年上のはずのアイドルたちは、激しさこそ減ったものの、キャリアを重ねてパワーアップした歌唱力とパフォーマンスで観客を魅了する。


その姿を見て、女性はかつて周囲の何気ない言葉から「歳をとった彼女たちに憧れを感じなくなったら」と恐怖を抱いてアイドルから距離を置いたことを思い出す。それから30年、女性は涙をとめどなく流しながら、自分と同じだけ歳を取ったアイドルのことを少しも変わらず好きなのだと、当時の疑念の“答え合わせ”に至るのだった。
「年齢だけでやめさせられないようになってほしい」という思い

同作は、求人検索エンジンの“スタンバイ”と漫画家エージェントがTwitter上で共同主催した「仕事探しはスタンバイ」マンガ大賞で7月第4週の大賞に選ばれた作品。投稿には1.2万件以上のいいねが寄せられ、読者からは「今推しが卒業したら...歳取ってしまったらどうなるんだろ...とか思ってしまってたから何か泣きそうになりました」「読んでだばーーとなりました」と、作品に共感する声が多くあがっている。
今回は作者の三月病さんに、作品のきっかけやこだわった点を聞いた。

――「齢をとるアイドルとそのファンの話」を描かれたきっかけを教えてください。
「『仕事探しはスタンバイ』漫画賞の応募作としてアイデアを練り始めたものです。今回の賞お題である『2050年にあったら良いと思う職業』の解釈を、今回は“新しい仕事”というよりも“続いてほしい仕事”という方向で考えました。アイドルを続けたい人が年齢だけでやめさせられないようになってほしいという気持ちも前々からあったため、このような話が出来ました」
――「仕事探しはスタンバイ」7月4週の大賞受賞と、作品への反響についてご感想は。
「狙っていた大賞がもらえて嬉しかったです。ひとえに見て下さったみなさんのおかげですし、感想も真剣に読んでくれたんだなというものがいくつも届いて、描いて良かったなと思います」
――作品作りで意識されたポイントはどんなところでしょうか。
「『共感』です。私はいろんな人に見てもらいたいあまりに、閲覧層を広く狙い過ぎてふわっとした共感の漫画を描くとめっっっっっちゃつまらなくなるので、いっそ『あなたに言っている』というくらいの気持ちで特定の層を深く狙うつもりで描きました。
その方が漫画が面白くなって結果的に狙った範囲の外の人にも見てもらえる場合がある、と経験則で知っているのでそれを意識した感じです。今回は私と同じような気持ちをもったことのある『ファン』の人たちを見ていました」
――30年後のアイドルの姿が魅力的なのも印象に残りました。「ぶりっ子アイドルの裏の顔のマンガ」でもアイドルをテーマに作品を描かれていますが、三月病さんもアイドルへの思い入れがあるのでしょうか?
「ライトにですが、アイドルを追っていた時期もありますし、今も好きです。貴重な人生を大衆に見せてくれてると思っているので、やめたかったらいつでもやめて他の道を進んでほしいし、続けたかったら誰もそれを邪魔しないでほしいと思っています」
――今後、創作活動でやってみたいことや目標があれば教えてください。
「生活にしていくという意味で、とにかく漫画を仕事にしていきたいです」
「好き」という気持ちは年齢なんて関係ない。アイドルだけでなく、好きな何かを持つ人にはきっと響くだろう素敵な作品だ。
取材協力:三月病(@3_byou_)さん