かわいい女の子とシリアスなストーリーという相反する要素を両立、作者・相田裕に聞く

自身を死に損ないと称する元・会津藩士の鬼生田春安が、“母殺し”という宿願を抱く不死の少女・シノと出会い、その協力者として激動の時代を共に生きる姿を描いた「勇気あるものより散れ」(ヤングアニマル/白泉社※最新1巻発売中)。

シノの協力者として生かされた春安


日本が近代化へ向かう過渡期の明治7年の東京を舞台に、不死の少女をめぐる鮮烈な命の物語を描く作者・相田裕さんへインタビューを実施。本作に込める思いや作品への向き合い方について語ってもらった前回に続き、今回はキャラクター描写のこだわりや読者へのメッセージを伺った。


不死者の設定がテーマに深みを与える

――キャラクター設定や描写について、大切にしていることはどんなことですか?

【相田裕】「かわいい女の子が描きたい」というのは自分が漫画でやりたいことのひとつですが、かわいさとシリアスなストーリーというのは時に相反する要素です。それを両立させること。キャラクターたちにきちんと物語に参加してもらうために必要なのは、彼女たちが自分の意思を強く持って、自分で決断していくということだと思います。

――不死のキャラクターを描こうと思った理由についても教えてください。

【相田裕】戦うヒロインという題材を扱ううえで、普通の人間の女の子が刀で戦うのは無理が出てしまうので、なにか特殊な設定が必要でした。不死というのは定番のアイデアですが、たくさんの作品で扱われるということは、やはりドラマ性があるということなのだと思います。不死者の設定が、人間が命がけで戦うというテーマに深みを与えてくれると考えました。

不死の少女・シノ


――「不死になったらたくさんの漫画が残せる」というお話をされていたインタビューを拝見したのですが、漫画を描くのが嫌になったりしたことはないですか?漫画を描くことの楽しさや、魅力と感じていることについても教えてください。

【相田裕】嫌になる話というのは、今回は差し控えさせてください(笑)。ただ、漫画を描くのはとても労力がかかる作業で、作者がたくさんの時間をかけた分だけ作品に魂が宿るものだと信じています。作家個人が架空の世界を創造して、他者と世界やキャラクターを頭の中で共有できる。これが漫画制作の、苦労がありながらも素晴らしい点だと思います。

SNSでの感想が漫画家にとっての応援に

――描いていて特に楽しいキャラクター、描くのに苦労しているキャラクターはいますか?

【相田裕】シノの袴姿を描くのが楽しいです。全身の立ち姿や座ったところなど、描き甲斐があります。今後は凛々しい様子以外にも、かわいいところももっと描いていきたいなと思っています。菖蒲も楽しいのですが、スタイルが良く着物を着せるのが大変で、描くのに苦労もしているキャラクターです。

「勇気あるものより散れ」は女性キャラクターも魅力的!


春安はシンプルな着流し姿なので、その点は助かります(笑)。ラフな服装をはだけさせて、アクションをする姿を描くのは好きですね。

――物語のラストは読者の反応で流動的に決める、それができるのも長い連載の魅力、と考えていらっしゃるそうですが、SNS等で読者の反応はご覧になりますか?もしご覧になっている場合は、SNSでの声はどのようにとらえていますか?

【相田裕】SNS上の公式ハッシュタグの感想は見させていただいています。現在は非常に多くの漫画作品がWEB上で公開されていて、自分の作品の手応えのようなものを作家が感じ取りにくくなっていると思います。読んだ漫画がおもしろかった時は、誰でも簡単に発信できるSNSで感想を書いてもらえたら、それが漫画家にとってものすごい応援になります。私に限らず、好きな作家さんたちを応援していただけたらうれしいです。

明治時代の豆知識や実在の人物との関わりにも期待

――読者からの反応で、印象的だったことがあれば教えてください。

【相田裕】アクションがかっこいいと言っていただけるのが印象的です。刀での戦闘を描くのは初めてで手探りの状態で連載が始まりましたし、自分としてはアクションの描き方がまだまだ未熟だと思っていますので、これから精進してより満足してもらえるものを描けるようになりたいです。

刀を使ったアクションが見どころのひとつ


――今後の展開として特に読者に期待してほしいところなど、最後に作品のアピールをお願いします。

【相田裕】単行本1巻はまだ物語の序章部分なので、これからキャラクターの掘り下げがあったり人間関係が深まったり、シノの兄弟たちや歴史上の人物などさまざまな登場人物が出てくる予定です。彼らがどういう戦いを繰り広げるのか楽しみにしていてください。

ちょうど2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の舞台でもある明治時代の日本は、意外と私たちが知らないことが多いので、豆知識なども織り交ぜていろいろな魅力のある作品にしようと思っています。

――これから2人がどんな生きざまを見せてくれるのか、また歴史上の人物とどう絡んでいくのか、というのも楽しみです。この度は貴重なお話をありがとうございました。

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