【漫画】「月の手取り8000円…??」コロナ禍のタクシー運転手が描く“赤裸々”な実録漫画が大反響「ボーナス80円」ってことある?
新型コロナウイルス感染症の影響であらゆる業界がダメージを受ける中、外出自粛などのあおりが直撃したタクシー業界。コロナ禍でのエピソードをはじめ、現役タクシードライバーの視点から業界のあれこれを描いた実録漫画
『タクシーはブラックじゃありません』
が反響を呼んでいる。

同作は、都内でタクシーの運転手をしている長谷川シグリオさんが自身の体験をもとにフィクションを交えつつ描くタクシー運転手の物語。第1話は、コロナ禍で1カ月の
手取り額が約8000円
という衝撃的な数字からスタートする。利用客の減少はもちろん、会社側による出勤人数の抑制や自主的な休みが重なってこうなったというが、それを差し引いても驚かざるを得ない。それでも乗客とのコミュニケーションでは話のタネになると前向き。このほかにも、乗客とのよくあるトラブル、渋滞時の対処法など、悲喜こもごもの実情を赤裸々に描いている。

変異株の出現や第6波と呼ばれる感染拡大など、今なお揺れるタクシー業界。今回は漫画家と運転手の二足の草鞋で活躍する長谷川シグリオさんに、本作執筆のきっかけや、兼業作家としての活動を聞いた。
漫画道の最中、きまぐれでタクシー業界に。なってみたら「奥深く面白い」

――長谷川さんはタクシードライバーと漫画家を兼業されているとうかがいました。まずは、どういった経緯でなったのか教えてください。
「もともと真っ当に漫画家を目指していたのですが、アシスタントを経て漫画家への道を進むうち、余り光明が見えなかったので転職しようと思い立ったのです。絵を描くこと以外に自分にできることは、車の運転くらいしか思い当たらなかったのですが、そうやって悩んでいるうちにネット広告でタクシーの求人を発見し、きまぐれで転職したというのが経緯ですね」
――最初は成り行きでドライバーの道を歩むことになったんですね。
「タクシードライバーになろうと思ってなったわけじゃなく、たまたま目についたからやってみた……と言う感じでした。しかし、実際にタクシードライバーになってみたら、タクシーという職業がとても奥深く面白いことに気づいたんです」
――本作は長谷川さん自身の仕事を題材にした作品ですが、企画はどんなところからスタートしたのでしょうか?
「『タクシーはブラックじゃありません』の企画は、担当さんに本作のネームを見せたことから始まりました。話題作りの箸休め的な感覚で描いたものだったんですが、担当さんに非常に好評で『このまま連載しましょう』との話になったんです」
――コロナ禍の影響をうかがわせるエピソードは、特に切実な印象が残りました。
「コロナはタクシー業界にとんでもない打撃を与えました。作中では面白おかしく描いていましたが、その実情は悲惨としか言えません。どこの業界も基本的に真面目で優しい人ほど良いお客さんだと思いますが、そういう人はしっかり自粛しているのです。なので休日や深夜などは、ほとんどまともに仕事ができない……と言ったようにタクシー業界は大打撃を受けてしまいました」
ドライバーと漫画家の兼業は「苛烈な働き方」

――タクシー業を漫画に描く上でこだわっている点や、気を付けているポイントはありますか?
「タクシーという仕事はエピソードが苦労話や不幸話に偏ってしまいがちなのですが、その中でもなるべく笑えるエピソードを作るように努力しました。接客業をやっているいろんな方が共感できるようなものを作ったつもりです。登場するお客さんが、みんな魅力的なキャラクターだと思っていただけると嬉しく思います」
――連載の中で読者から反響の大きかった話はありますか?
「好評だったエピソードは、タクシー同士のイザコザを描いた『VSタクシー』(第8話)ですね。良いタクシーと悪いタクシーを見分けることができるので、読んでる皆さんとしてもとても役に立つ話だったんじゃないかと思います」
――それでは、作者として特に力を入れたエピソードはありましたか?
「力を入れたエピソードは、怒った男性に追い回される話ですね。これだけは完全ノンフィクションだったので非常に思い入れが強いです」
――コロナ禍の中で兼業での連載は大変だったと思います。今後もこうした働き方を続けていくのでしょうか?
「タクシーと漫画家を兼業する……というのは、やはり苛烈な働き方なので積極的にやるべきではないと痛感しました。今後は漫画を描いているときはタクシーを辞め、漫画が連載終了してしまったら再就職という形を取れればと思っております」
――最後に、今後描きたいと思っている話があれば教えてください。
「今後描きたい話はたくさんありますが、やはり車の運転に大きなプライドを持ってタクシーをやっていたので、車関係でまた何か漫画が描ければと考えております」
取材協力:長谷川シグリオ(@sigmarion)