リアルすぎるミニチュア玩具「ぷちサンプルシリーズ」がついに“推し活”に!人気の理由は「妄想力」?

1990年代後半から2000年代前半にかけ、突如として巻き起こった“食玩ブーム”。子供だましではない精巧なつくりが注目を集め、タイムスリップグリコやチョコエッグ、さらには松本人志が手掛けた「世界の珍獣」が登場するなど一大ムーブメントに。

その盛り上がりのなか、飲食店の店頭などで目にする食品サンプルをミニチュアサイズで商品化した「ぷちサンプルシリーズ」が誕生。次々とリリースされる商品はほかに類を見ない世界観を構築しており、全種類を集めようと躍起になる人が続出した。玩具店やバラエティショップで見たことがある人も多いのではないだろうか。

そこで今回は発売から20年を迎えることを記念し、「ぷちサンプルシリーズ」の誕生秘話や最新作について、発売元である株式会社リーメントの鈴木織恵さんに話を聞いた。

『推しのいる生活』の中身。アイドルファンなら一度は見たことがある⁉


第1弾は「和食」がテーマ!看板商品の誕生秘話

携帯電話につけるストラップやビールサーバーなどの雑貨商品を企画開発・販売していた株式会社リーメントが、最初に「ぷちサンプルシリーズ」を手掛けたのが2002年のこと。

「大人の間で食玩やミニチュアに関心が高まっているなかで、そのニーズに合致する商品を開発しようという動きがあったと聞いています」と、鈴木さん。そこで第1弾として登場したのが、和食屋の食品サンプルをテーマにした『和食処』だった。

特上うな重、盛り蕎麦、特上寿司、特上天丼、とんかつというラインナップで、そのどれもがまるで本物のように細かく作り込まれている。例えばうな重にいたっては、蒲焼のタレがごはんに染み込んだ様子も表現されているほど。鈴木さんは、「第1弾から大きな反響を得ることができ、本格的にぷちサンプルシリーズが当社にとって大切なものになっていきました」と話す。

記念すべき第1号のぷちサンプルシリーズ『和食処』(販売終了)


累計数百万個を売り上げたのは「家庭料理」

これまでに約200シリーズ以上も手掛けているなかで、最もヒットした商品はどのようなものだったのか。鈴木さんによると、いくつかの商品で累計販売数が数百万個に達したシリーズがあり、その代表が2005年2月にリリースされた『ごはんま〜だ?!』だったという。

大ヒットを記録した『ごはんま〜だ?!』(販売終了)


調味料から調理器具、それを使って作る料理の数々がそろうこの商品。中身はというと、みそ汁、厚焼き卵、焼き魚、ピザトースト、カレー、ロールキャベツ、梅酒、焼き餃子、えびフライ、お皿洗いに使用するグッズ類など、よくもここまで細かく作り込めると感動してしまう。

「圧倒的に女性のファンが多いので、身近な世界観のほうが好まれるんです。だからよりリアルに表現するために、『ここまでやるか?』と思うような細かい企画設定から造形、彩色に至るまでディテールには凝りますよ(笑)」

「これはボツだろう」を現実にするコツは“妄想”!?

こうした商品は一体どのような過程で生まれているのか。なかでも、企画の根本であるアイデアを固めていく作業について鈴木さんに聞いてみた。

「企画会議は月に2回です。10名ほどの社員がアイデアを持ち寄って、話し合いをしながら決めていきます。ニーズの高いテーマや、今までやったことのないテーマをどんなふうに落とし込んだらいいか、それぞれの考えや妄想を形にしていく作業ですね」

当然、採用にいたらないボツ企画も数多くあるというが、話し合いを進めていくなかで「これはボツだろう」と思われた企画が採用されることもあるんだとか。また、ファンがSNSに投稿した要望が目に留まり、商品化が実現されることも。それが男性の1人暮らしの部屋をテーマにした『俺んち来る?』だったそう。

1人暮らしの男性の家をテーマにした『俺んち来る?』。プロテインやゲーム機など「あるある!」なものばかり


「ぷちサンプルシリーズで男性の部屋をテーマにするのが初めてだったので、家主をどういうキャラにするかが難しい点でしたが、担当者が細かい部分を作り込むアイデアをたくさん持っていました。できあがったときには、床に転がるダンベルや迷彩柄のボクサーパンツ、元カノとのプリクラなど、いわゆる“陽キャ”っぽい設定だったんだなと(笑)」と鈴木さん。話を聞いているだけで、社員が心から楽しみながら商品作りをしているのが伝わってくる。

『俺んち来る?』の、「No.3 この新人グラビアアイドルめっちゃ可愛いじゃん…!」

『俺んち来る?』の、「No.8 そろそろ彼女欲しいんだけどなぁ〜」

『俺んち来る?』の、「No.7 押入れ整理したら色々出てきた…」


時代を追うごとにマニアック度とリアリティが加速!

これまでにリリースされた商品のなかから、筆者が特にインパクトが強いと感じたシリーズをご紹介。まずは、2005年に登場した『ぷちドラッグストア』『韓国ツアー』『郷土めぐり』の3つ。どういう観点から「これはおもしろくなりそうだ」という結論にいたったのか、その過程をのぞいてみたくなるシリーズだ。

フィギュアなどと組み合わせてもおもしろそうな『ぷちドラッグストア』(販売終了)

おそらく韓流ブーム到来時にリリースされた『韓国ツアー』。焼肉の焼き加減までリアル!(販売終了)

おもちゃから離れた大人でも楽しめそうな『郷土めぐり』(販売終了)


そして時代を追うごとに、まるで針に糸を通すかのような細やかで、ニッチすぎる世界観を追い求めていく。ザッと羅列していくと『アイ・ラブ・ハワイ』『おばあちゃん家』『世界の機内食』『ヨーロッパのおばあちゃん自慢の料理』など。どれもなかなかマニアックなテーマだが、鈴木さんによると「時代を反映していたり、その時の“リアル”はどういった形で表現できるかなど、そういう基準で企画が決まっていきます」という。

憧れのハワイ旅行気分を味わえる『アイ・ラブ・ハワイ』。お土産の定番、マカダミアナッツのチョコレートも。(販売終了)

世界中を探しても“おばあちゃんの家”のミニチュアはリーメントだけ!?『おばあちゃん家』。(販売終了)

旅好きな人にはたまらないシリーズ『世界の機内食』。(販売終了)

『おばあちゃん家』の海外版!『ヨーロッパのおばあちゃん自慢の料理』。(販売終了)


なかでもひときわ筆者の心に残った、2006年発売の『やっぱりコンビニ』も挙げておきたい。灯台下暗しのごとく「その手があったか」と思わず膝を打つアイデアで、タイトルに“やっぱり”が付く意味も深くうなづける。

筆者が心を打たれた『やっぱりコンビニ』。レジ横にあるおでんや揚げ物もばっちりそろう。(販売終了)


期待の最新作は?「推し活」すらもミニサイズに!

「時代を反映する」という意味では、2022年5月に発売されるシリーズがその最たる例と言えるだろう。“今日も推しが尊くて まじで神〜♡”というキャッチコピーが添えられた、『推しのいる生活』だ。

『推しのいる生活』は部屋に住んでいる女の子のキャラクター像を想像するのも醍醐味

新時代のぷちサンプルシリーズ『推しのいる生活』が5月に発売!思わず「見たことある!」と言いたくなるものばかり


“推し”のアイドルがいる女性の部屋をテーマにしたもので、Twitterで告知をしたところ、すでに熱いメッセージが次々と寄せられているという。

「ぷちサンプルシリーズそのものが神」「(小物アイテムの)チケット振込用紙に時代を感じる」と話題になり、該当ツイートには2万件ほどのいいねが付くほどに。ディテールもよりリアリティが増し、応援用のうちわがすっぽり収まるバッグや、アクリルスタンドなども推しがいる人の心をくすぐるはずだ。『俺んち来る?』と同じく、部屋の主の人物像が想像しやすいのもポイント。

『推しのいる生活』の、「No.7 絶対いま私のこと見てたよね!?ね!?」。ファンの必需品である「うちわが入るバッグ」まで!

『推しのいる生活』の、「No.2 このあと新曲歌いにカラオケ行こ!」。Instagramでよく見る光景そのもの!

『推しのいる生活』の、「No.1 初回と通常ばっちりお迎え♡」

『推しのいる生活』の、「No.3 本人不在のお誕生日会」

『推しのいる生活』と『俺んち来る?』企画開発者の小川智香さんと長尾百恵さん。妄想や実際に見たものなどが反映されている


発売から20年、新たなアプローチでまだまだファンを増やし続ける「ぷちサンプルシリーズ」。今後見かけた時には、どんな企画会議の末に販売にいたったかまでを想像するとより楽しめるかもしれない。

取材・文=橋本未来

この記事の画像一覧(全22枚)

Fandomplus特集

マンガ特集

マンガを読んで「推し」を見つけよう

ゲーム特集

eスポーツを「もっと知る」「体験する」

ホビー特集

「ホビー」のトレンドをチェック

注目情報