【漫画】自分だけに見える「黒い風船」が意味するものとは。避けられない予兆を描いた短編ホラーに注目

東京ウォーカー(全国版)

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幼少の頃、自分にだけ見えた「黒い風船」。成長し、再び目にした風船が表す意味とは――。多くの人が利用するSNSは、漫画家が新作や意欲的な作品を自ら公開する場としても用いられている。折田洋次郎( @yojiroorita )さんが自身のTwitterに投稿した「黒い風船」もその1つで、短編ならではの根源的な恐怖を刺激する作品だ。

他の人には見えない「黒い風船」。待ち受ける破局に震える


黒い風船は「誰かの終着点」。その風船が割れる時、起こるのは…

語り手の「僕」には、子供の頃の忘れられないある記憶があった。ある日、友人との帰り道で見かけた黒い風船。誰が括りつけたのかも分からない風船を指差す「僕」だが、隣の友人は見えないという。すると、突然黒い風船が割れ、直後に風船のあった場所に2台の乗用車が突っ込み、「僕」の目の前で衝突したのだ。

「黒い風船」(2/12)画像提供:折田洋次郎(@yojiroorita)

言葉を飲む「僕」に、通りかかった老人が「おまえ…見えてただろ」と問いかける。老人は「僕」が見た“何か”を「誰かの終着点だ」と語り、絶対に近づくなと警告する。

「黒い風船」(4/12)画像提供:折田洋次郎(@yojiroorita)

「黒い風船」(5/12)画像提供:折田洋次郎(@yojiroorita)

それ以来、黒い風船を見ることはなかった「僕」。海外への修学旅行を控えたある日、学校の屋上にあの黒い風船が浮かんでいるのを見つけてしまう。

「黒い風船」(9/12)画像提供:折田洋次郎(@yojiroorita)

屋上へ行くと、そこには一人の女の子が佇んでいた。何か思いつめたような様子の女の子に「あの…そこの風船見える?」と「僕」が声をかけると、風船はひとりでに浮き去っていく。

「黒い風船」(10/12)画像提供:折田洋次郎(@yojiroorita)

「僕は彼女の運命を変えてしまったのだろうか」と思いながら迎えた修学旅行当日。飛び立った機内で「僕」はみたび黒い風船を見てしまう。その風船は「僕」や友人だけでなく、機内の乗客全員の傍らに浮かんでいたのだった――。

モノクロ漫画で「色」の持つ恐怖を演出

Twitterの投稿では1000件を超えるいいねを集めた本作。ウォーカープラスではこの反響を受け、作者の折田洋次郎さんに、本作を描いたきっかけや創作の舞台裏をインタビューした。

――「黒い風船」を描こうとしたきっかけを教えてください。

「昨年漫画で賞をいただき読み切りで掲載デビューはしたんですが(注:第78回ちばてつや賞一般部門入選「 カナブンと頭痛薬 」)、次の作品をなかなか進めることができずにいました。僕は『世にも奇妙な物語』的な不気味な話やホラーやスリラー映画が大好きなので、一度気晴らしにホラー系の短い作品でも描いてTwitterにあげてみようかと思って制作しました」

――風船には恐怖を掻き立てられました。アイデアはどんなところから生まれたのでしょうか?

「怖い映像作品でたびたび『赤い服を着た女性』が忍び寄ってくる系の話があるんですけど、話の中身よりも僕はその赤い服のビジュアルにいつも怖さを覚えていて。ホラー映画の『IT/イット』に出てくる赤い風船もそうだと思うんですけど、『色』は恐怖の印象を際立たせる演出としてすごく効果的だなぁと感じていました。

その繋がりで思い付いたのかは忘れましたが、ふと“黒い風船”という単語が頭に浮かんだんです。それで黒い色の風船は普段見ないので、そのミスマッチさを不気味に演出すれば面白くなるかも、と考えて話を作りました。あとはモノクロ漫画で色の演出は使えないので“黒”を配色することで違和感を感じる物であれば漫画でも演出できると思いました」

――写実的な風景と対照的に、黒い風船が並ぶ様には異質さを感じました。

「リアルな不気味さを出したくて背景は時間をかけて描きました。それと黒い風船がページの中で際立つように、明暗や黒ベタの割合とトーンの加減を意識しています。風船の中も禍々しく邪悪なものが蠢いている感じに見えるよう細かく作画しました」

――これまで発表された作品とは読み口が異なるという印象を受けました。ホラー作品はこれまで描かれたことがありましたか?

「ホラー漫画は初めて描きました。以前の作品は感情を吐き出すような感じで、キャラクターに自分を投影させて描いていましたが、今回はホラーで1発ネタの短い話なので、キャラクターよりも間や空気感を意識しています。あとはTwitterで多くの人に最後まで読んでもらえるように、興味をいかに持続させてページを進めてもらえるかを考えました」

――折田さんが漫画制作を始めたきっかけを教えてください。

「幼い頃から妄想することと絵を描くことが好きだったので、7、8歳の頃には将来は絶対漫画家になるんだと決めていました。ですが、漫画を描きたいと思いながらも実際には描かずに社会人になり、その後も胸の内で描きたい話の妄想が溜まっている状態のまま、悶々と歳を重ねてきて『このままではまずい、吐き出さないと』と思い、数年前に漫画を描き始めました」

――本格的に描き始めたのは社会人になってからなんですね。

「今まで描いた原稿はまだ100ページにも満たないので素人同然ですが、昨年描いた作品でちばてつや賞の入選をいただき、読み切りでのデビューはできました」

――今回はSNS上で大きな反響を集めました。折田さんの今後の展望について聞かせてください。

「ホラーに限らずまだ描きたい話は沢山あるので、Twitterやいろんなところで発表していきたいです。今はまだ働きながら合間と休みの日に趣味のように漫画を描いているので、今後の展望としては漫画を仕事にして美味しいご飯が食べたいです。誰かお願いします。

基本漫画は自分と向き合って孤独に1人シコシコと描くしかなく、とにかく時間がかかるんです。なので誰かに読んでもらえることが制作の1番の糧になるのでTwitterで応援していただけれると嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました」

取材協力:折田洋次郎(@yojiroorita)

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