【漫画】アニメーターは最新アニメが観られない!?好きだからこその“職業病”に共感集まる

「好きなことを仕事にする」ことに憧れを持つ人は多いはず。けれど、プロになったからこそ好きなものに素直に向き合えないこともあるもので……。クリエイターの“職業病”とも言える現象を描いた漫画がSNS上で大きな反響を呼んでいる。

「アニメを楽しむどころじゃないんだよ」アニメーターにはアニメがどんな風に見える?画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)

「タイムシートが見える」アニメーターならではの“職業病”とは?

Twitter上で1万件以上のいいねを集めるなど話題となっているのは、月刊ニュータイプで『見原由真の五畳半アニメーター録』を連載中の漫画家・見原由真さん( @ace7kg )が、自身のTwitter上に投稿した漫画「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」。

見原さんの夫、タッペイさんは作画監督も務めるアニメーターで、妻であり漫画家でもある見原さんの視点からタッペイさんとの日常を観察した様子をコミックエッセイとして描いている。

【漫画】「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」を読む画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)


今回のエピソードは、タッペイさんが作画監督の仕事を請けるようになったばかりの頃のお話。自身の原画だけでなく、他のアニメーターから上がってきた原画をチェック・修正するポジションのタッペイさんは、テレビで新作アニメが流れるとすぐにチャンネルを変えてしまっていたという。

「アニメを楽しむどころじゃないんだよ!!」と、苦悶するタッペイさん。他のアニメーターが作り出すキャラの動きや作画、“自分ならどうするか”といった作画監督の目線から作品を見てしまうというタッペイさんの言葉に、見原さんは思い当たる節があった。

「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」2画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)


見原さんも物語を作り出す漫画家の目線から、映画や漫画に“自分ならどうするか”を同時進行で展開を考えてしまうことがしばしばあるという。業界は違えど、他者の作品の分析は、クリエイター特有の“職業病”なのだ。

「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」3画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)


かつては純粋に好きで楽しめていたものが、職業にしてしまったがゆえに楽しめないのはプロとして避けては通れない道かもしれないと思う見原さん。だからこそ、大好きなタッペイさんに寄り添えると考え、さらに深く話を聞こうとする。

が、タッペイさんは「キャラが動くたび“タイムシート”が見える」と、業界人以外にはなかなか分からない世界の話に突入していく。タイムシートとは、画の動きやセリフ、効果音のタイミングを書きこみ共有するアニメーション制作における指示書の一つ。タッペイさんはアニメを見ていると、その場面のタイムシートが同時進行で脳内再生されるのだとか。

「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」5画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)


「一つを突き詰めると向こう側の骨組みが見えるから」と答えるタッペイさんに、見えている世界が違うと振り落とされてしまった当時の見原さん。けれど数年後、タッペイさんは最近の作品もいつの間にか楽しめるようになっていた。いわく、「楽しむ余裕が出てきた」「今は絵よりストーリーが気になる」とのこと。見原さんはその姿に「焦っておせっかいをやくよりも“時間そのもの”が有効な場合も結婚生活にはある」と感じたという。

「時間が解決」だけじゃない、さまざまな向き合い方

「アニメーターの夫はアニメを観るのも一苦労」8画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)

また、作中にも描かれているように、この職業病はアニメーターに限った話ではなく、見原さんは「私の場合、漫画家になってから『自分だったら』という脳内の声は年々やかましくなるばかりで、未だに職業病の峠は越えられていません。拗らせているだけかもしれませんが、とりあえず今は、お客さん視点と作り手視点で一つの作品を二倍お得に味わえる調味料だと思って職業病と付き合っている状態です」と、漫画家としての自身の体験を話す。

また、タッペイさんの場合は時間が解決した職業病。反対に見原さんの場合を聞くと「基本的に職業病発動中はひとり心の中で留めておくのですが」と前置きした上で、「好みドンピシャな作品に出会ってしまった時は『自分だったら』だけでなく、分析や感想や感動など脳ミソに走ったすべての刺激をタッペイに全力でぶつけます」とのこと。

タッペイさんは見原さんの話を同じクリエイターとしての視点で話を受け止め、自身の見解も話してくれるといい、「たとえば私が『このキャラクターの心情を伝える工夫がすごくて…』などと言えば、『それはアニメでいう所の○○で…』といった風に職業病を職業病で見事に打ち返してきます。

相手の領域にずかずか踏み込むのではなく、各々自分の分野から見える景色をただしゃべっているだけなので『なんか面白いこと言ってる』とお互いが思える絶妙な距離感があり、飽きません」と、作り手同士ならではの職業病との向き合い方を教えてくれた。

好きを仕事にするジレンマや、クリエイター同士だからこその悩みへの寄り添い方が垣間見えるエピソードだ。

取材協力:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)

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