【漫画】家族のこと、全部知ってる?孫と祖母の入れ替わり描く「秘密のおばあちゃん」が心に刺さる
一緒に暮らす家族だから嫌いなところが目に付くというのはままあること。けれど、「知っている」つもりでも、家族にはまったく知らない別の顔もあるもので……。一日だけその体が入れ替わってしまった孫と祖母を描いた漫画『秘密のおばあちゃん』は、普段知ることのない家族の姿を垣間見せる作品だ。

「おばあちゃん」が嫌いな孫娘。祖母の姿になってはじめて知る一面とは
ある日、亡くなった祖父が夢枕に立ち、「今日だけだけどリナちゃんとおばあちゃんの体入れ替えとくから」と告げられた女の子「リナ」。目覚めるとリナは、嫌いなおばあちゃん「ミナ」の姿になっており、反対におばあちゃんはリナの体に。二人はそのまま一日を過ごすこととなってしまう。

母親のいないリナにとっては育ての親のような存在であるおばあちゃん。けれどリナの顔をうかがうような態度や、好きなこともなさそうなその姿に「あんなふうにはなりたくない」とリナは思っていた。

おばあちゃんの代わりに通院した帰りがけ、リナは祖母の友人らしき女性に声をかけられる。戸惑いながら連れてこられたのは、演奏用の貸しスタジオ。実はおばあちゃんは、友人たちとともにロックバンドを組み、そこでギターボーカルを担当していたのだ。無趣味だと思っていた「おばあちゃん」の、「ミナ」としての別の一面を垣間見て、リナの心に波紋が広がっていく――というストーリー。

集英社「翌日デビュー漫画賞」の準グランプリを受賞した本作の作者は、『うちのこざんまい』や『こちらアニマル社商品企画部育児課』などの作品を発表している内野こめこ(
@nokonokomeko
)さん。ウォーカープラスでは内野さんに、本作が描かれた舞台裏をインタビューした。
家族の見方への反省、なかなか気づけない「個人」の姿を描く
――「秘密のおばあちゃん」を描かれたきっかけについて教えてください。
「以前、喋るダイコンと少年の話を描いたのですが、それの終わりごろを描いているときに今度は誰のどういう話を描こうかなと考えているうち、何か“おばあさん”らしいイメージからは離れたことをしている普通のおばあさんの話がいいなと思いました」
――嫌いな“おばあちゃん”の、“ミナちゃん”としての世界が垣間見たことで心境や関係が変わっていく展開にグッときました。こうした「自分の知らない一面」の話を描こうとしたのは?
「何かきっかけがあるわけではありませんが、そばにいる相手でも全てを知っているわけではないとはいつも思っていて、とくに自分自身が若いときは、母を『母』、祖母を『祖母』という役割を通してしか見ていなくて、彼女たち個人のことはほとんど理解していなかったのではと思っています。そこの反省が反映されています」

――「おばあちゃん」の側が観たリナの世界については、あえて描かなかったように感じられました。
「あくまでもリナから見たおばあちゃん像の変化のみに焦点を絞るためです」
――おばあちゃんがロックをやっているという秘密には意表を突かれました。これはどんなところから思いついたアイデアでしょうか?
「うちは父方祖父母との同居だったのですが、祖母が童謡を歌うのが好きでよく歌っていたこと、また、私の父がずっと楽器をやっていることから、音楽→ロック!と思いつきました」
――キャラクターを描く上でこだわった点はどんなところですか?
「入れ替わり中と元に戻ってからでそれぞれ、中身の人間の性格に合うように表情を意識しました。中身リナは感情がコロコロ変わりすぐ表情に出るタイプで、中身おばあちゃんは穏やかな感じです」
――また、これまでの漫画制作と変えた・変わったところはありますか?
「特にはないかと思いますが、雑なりになるべく丁寧に描こうとは心がけました」
――本作の投稿で担当がついたということですが、漫画を描く上での今後の展望についてお聞かせください。
「今はまだ次男が幼児なのでなかなか漫画を描くことに時間を割けませんが、今後時間的な余裕が出来てきたらたくさん描いていけたらいいなと思っています。応援よろしくお願いします!」

取材協力:内野こめこ(@nokonokomeko)