【漫画】抗がん剤治療をやめる選択をしたUさんの話。退院するときの晴れやかな顔が忘れられない
幸せに暮らしていた一家の母親が突然がんに。これからどうする?その時家族は?「がんサバイバー」という言葉もあるように、がんと闘病・共存しながら日常を送る生き方が注目されている。そんな中、自らのがんとの闘病や家族との触れ合いを漫画「鼻腔ガンになった話」にし、Instagramにアップして反響を呼んだのが、やよいかめさん(
@yayoi_kame
)。そのリメイク版を連載として描いていく。
※本作で紹介している症状は、個人の体験談でありすべての人に当てはまるものではありません。症状で悩んでいる場合は医師・看護師等の専門家に相談してください。また、センシティブな内容を含む為、閲覧にはご注意ください。
やよいかめさんはご主人とお子さん2人の4人家族。鼻詰まりの精密検査を受けたところ、思いがけず鼻腔がんと告げられた。抗がん剤治療や手術によって寛解を目指すことになり、まもなく入院。今回は第13話で、同じ病棟の患者であるUさんのエピソードを紹介する。





すれ違うときに会釈を交わす程度だった、同じ病棟の患者・Uさんと話す機会があった。











Uさんは抗がん剤の副作用による脱毛の体験をやよいかめさんに話した。まだ入院体験の浅いやよいかめさんは少し不安になる(抗がん剤の副作用は個人差があります)。それでもウィッグの話題で打ち解けることができた。明るい表情を見せるUさんだったが…。












病棟での治療をやめ、退院することを決意したUさん。「これからは家族と一緒に過ごせるんだ」と笑うUさんに対し、やよいかめさんは不安を隠しながら「よかったですね」と返すのが精一杯だった。
体験談を聞いて、脱毛に対する心構えができた
Uさんの抗がん剤によるつらい体験を最初に聞いて、気になったのは脱毛の話だった。「やっぱりインパクトがあったので、よく覚えています。それまでは少しずつ髪の毛が抜けるようなイメージをもっていたんですが、話を聞くと一気にガツンと抜けたそうなので、脱毛に対する心構えができました。私が『心しときます!』といったら、Uさんが笑ってうなずいていました」
やよいかめさんはUさんと決してじっくり話せたわけではなかったが、「お見舞いに来ていた旦那さんがものすごく背が高かったので、『スポーツされてたんですか?』という話から始まって、昔やっていた部活の話でちょっと盛り上がりました」。同時に、話し合うようになってから「抗がん剤も回数を重ねるとダメージが蓄積されるのかもしれない」と気になったという。
そんな彼女が退院を決意する。「その時やっと、病室に何人も先生がやってきた理由がわかった気がしました。とにかく心配でした。退院することで起こるどれもこれもが、少しずつ患者と家族の負担として蓄積されていくことを、叔母の自宅療養を通して知っていたからです」
それでも、Uさんはとってもうれしそうに見えた。「覚悟を決めて退院という選択をしたと感じました。きっと、家族と一緒に過ごせる時間は、ほかのどんな大変さと比較しても負けないんだなと。だったら余計なことは言わず、気持ちよく送り出してあげた方がいいと思って、心配は飲み込んでUさんの退院を喜びました」
取材・文=折笠隆