統合失調症の親を介護する8歳の娘!洗濯・料理・掃除をこなし、自分を殺して生きる「ヤングケアラー」の実話を描く話題作【作者に聞いた】

ウォーカープラス冬休み企画で人気漫画をお届け!本日は「ヤングケアラー」を題材にした水谷緑(@mizutanimidori)さんの「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)を紹介する。「ヤングケアラー」とは、家族・親族に病気や障害があり、18歳以下の子供が日常的に家事や家族の世話を担っていることをいう。本作は、実際にヤングケアラーだった方々の取材に基づいて描かれており、1人の少女が家族という形を守るために自らの心を閉ざし、再生するまでの物語を描いている。


8歳の子供が家事全般を担い、家族の形をサポートしている

小学3年生で家庭を支える主人公画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

主人公・音田ゆいは、8歳の小学3年生。母親が統合失調症という心の病を患っていて、物心ついた時から彼女は洗濯・買い物・料理・掃除など家族の世話を担っていた。学校帰りにスーパーに立ち寄って、夕飯の材料を買うのも彼女の日常。

母親は統合失調症という心の病を持っていた画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

部屋はいつも散乱していたが、片隅に洗濯物を取り込んでくれていた形跡を見て、今日は大丈夫かな?と、母親に声をかけた。「今、ごはん作るね」と――。

感情の起伏が激しくものを投げてくることもある画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

しかし、布団から起き上がった母親は、ゆいにティッシュ箱を投げつけてきた。ダメな状態だとわかると、ゆいは急いで押し入れに身を隠し、母親が落ち着くのを待った。

ただ静かに時間が過ぎるのを待ち、自分ができることをこなすゆい画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

母親の体調が優れない時は、主に薬を服用していない時。父親に相談してみるが、父親は弟のことばかり面倒を見て、母親の面倒はゆいに任せっきりだった。

せっかくの友達の誘いも、ゆいにとっては面倒ごとの一つだった画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

ゆいは家庭でできることの一切を抱えているため、いつも頭の中は家事のことでいっぱいだった。同級生と一緒に遊ぶことすらめんどくさいと思ってしまう。彼女はまだ8歳なのに、年相応の友達と過ごす楽しさを知らなかった。

母親の病状を父親に相談しても、あまり取り合ってはくれない画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

ゆいは、親がしなければいけない学校のことについて、大体のことはうまくスルーする方法を身に付けていた。先生に何か聞かれても、困っていることがないので相談することはなかった。

ゆいが家庭を守ろうとすればするほど、母親はゆいのことを嫌っていくように思えた画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

1人で家庭の全てを担う娘を見て、母親は「あんた本当の子供じゃないだろう」という。ゆいが家族のために努力しても、母親はゆいの姿を見てさらに追い詰められていくのだ。

自分の心を殺すことを選んだゆい。家族には本当の自分の気持ちを口にすることはできない画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋

ゆいは成長するとともに、次第に自分の心を殺して生きることを選んだ。母親が暴れずにいてくれるならと、いつしか心を無にして生きることが当たり前になってしまっていた。誰にも本当のことを言えず、自分が我慢すればいいと心を閉ざしてしまった後遺症は、鬱になって現れた。


小学生の15人に1人という割合でいるヤングケアラー

またまだ認知度が低いヤングケアラーだが、実際は小学生の15人に1人という割合でいる。本作は約2年をかけて10人以上の方にオンラインや対面、メールで何度も取材をしたという。

「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋画像提供:「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋


漫画を読むと、環境が当たり前になっていて自分がヤングケアラーだと気付かない場合もあるそうだ。そんな場合はどうしたらいいだろうか?作者の水谷さんに話を聞くと「困っていることに気づかないことが大半だと思うので難しいと思いますが、若い人でしたらまずは、普段自分が使ってるツール(SNS)で自分と似たような境遇の人や、支援団体を見つけるといいのではと思います。力になりたいと思ってる人はたくさんいます」と語ってくれた。

本作は主人公「ゆい」が学生生活を経て、就職、結婚、子育てを経験するなかで心を殺した自分を再生するまでの物語。漫画は10代の当事者でも読めるように全てルビ(ふりがな)つき、ヤングケアラーの支援団体なども記載されている。


取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)

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