【漫画】ギャルと図書委員、それぞれの“創作”第一歩を描いた青春短編に共感大「私も小説書きたくなった」

無愛想な図書委員の少年と明るいギャル。一見正反対に映る二人だが、ある時、彼女が物語を書こうとしていることを少年が知り……。あららぎ菜名( @Araragi_Nana_23 )さんのオリジナル漫画『まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ』は、創作への不安と楽しさ、そして青春のみずみずしさを描いた作品だ。

創作にまっすぐなギャルと、「読むのと書くのは違う」と割り切る少年。小説を作る二人の姿がみずみずしいオリジナル漫画あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)

読者から「私も小説書きたくなった」「凄く素敵な話」と反響を呼んだ同作を紹介するとともに、作者のあららぎ菜名さんに本作を描いた舞台裏をインタビューした。

対照的な二人が歩む「創作」の世界に引き込まれる

何事にもそっけなく、本の世界にのめりこむ図書委員の桐谷文。そんな彼に「どんな本読んでるの~?」と、図書室に来ては気さくに話しかけるのが蓮見梅子だった。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(4/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


親しげな梅子にも塩対応の桐谷だったが、ある時、彼女が開いていた教科書の落書きに目が留まる。それは紛れもなく小説の文章。それを知られた梅子は「お話を書きたくて」と、文化祭に自分の小説を出展したいのだと打ち明ける。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(8/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


本の虫である桐谷に意見が聞きたくて仲よくなろうとしていた梅子。桐谷は「僕小説書いたことないけど」と前置きしつつ、忌憚のない感想を蓮見に伝える。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(13/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


それから、書き直すたび梅子の物語に目を通すことになった桐谷。改稿のたび面白くなっていく彼女の小説に触発され、桐谷は「(僕なら?)」と、自分でも書きたいという思いが膨らみ――、というストーリー。

不安ながらも夢を形作るため歩みを止めない梅子と、「読むことと書くことは違う」と言い聞かせながら物語への衝動が湧き上がる桐谷。小説を軸に二人が影響しあう姿が愛おしいとともに、作中、断片的に描かれる梅子と桐谷の物語が読みたくもなる一作だ。

きっかけは「書いていいのか」「それでも書いてみたい」人の背中を押す思い

作者のあららぎ菜名さんは、イラストレーター・デザイナー業とともに、SNSで大きな反響を呼んだ『東京藝大ものがたり』(飛鳥新社)をはじめ作品を発表するプロの漫画家。そんなあららぎさんに、『まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ』を描いたきっかけをうかがった。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(24/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


――「創作」の一歩目を描いた、勇気をもらえる作品です。本作を描いたきっかけを教えてください。

「きっかけは、『本当は“なにか作ってみたい”と思っているのに、創作は高尚なことだから自分にはできない』と思っている人は実は多いのではないか?と、ふと考えたことからです。私は漫画や小説、映画で『すごい!面白い!』と感動する作品に出合うと『自分も描きたい』と気持ちが高ぶってしまいます。

面白くて感動させられる物語はこの世の中に数え切れないほど存在します。だから『今更自分が作らなくったっていい』と思うかもしれませんが、創作は表現であり、その人が持つ世界はその人にしか描けません。『面白くなければだめだ』『上手くなければだめだ』は、最初は考えなくていいのです。なんとなくでもいいから、もっと手軽に創作に触れてほしいと思い、この物語を作りました」

――明るくも創作に対して真摯な梅子と、小説を挟み変化していく桐谷の二人がいずれも愛おしく映ります。

「梅子はもともと小説が好きで、ある日強烈に惹かれる物語に出合います。そうして『自分も創作をしてみたい!』と思い、自ら行動を開始します。創作へのハードルが低く、『とりあえずやってみよう!』と行動する、ある意味創作者の“理想”を表しています。

対する桐谷は読者に徹底しており、読者の目線から梅子が書いた小説を読む、編集者の立場です。梅子はキチンとした形に仕上げようと本の虫である桐谷に声をかけ、『面白い』と思ってもらうために、何度も自らの物語を直し続けます。そうしてどんどん作品のクオリティが上がっていき、桐谷の奥底に隠れていた“創作欲”に火をつけました。私は、好きは伝染していくものだと信じているので、この二人にもそうあって欲しいという願いを込めました」

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(20/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


――梅子の小説の内容を桐谷が「イメージ」する描写が「どんな作品なんだろう?」と想像をかきたてます。

「この作品は小説を題材にした話なので、梅子の描く物語の大筋はざっと考えました。梅子と桐谷の話は“現実”の世界なので、梅子の小説はファンタジーにして、“現実”と“空想”の世界を対比させようとしました。現実に入り込む空想世界のの画面映えは意図したところです。

実は小学生の頃、私も梅子のようにファンタジー小説を書いていました。児童文学のファンタジーではなくて、『スレイヤーズ』や『魔術士オーフェン』のようなライトノベル調の内容でしたが、ファンタジー世界は書いててワクワクします」

――また、断片的に梅子や桐谷の作品の「本文」も描かれます。劇中作はあららぎさんが実際に執筆されたのでしょうか?

「まるまる一本は書きあげてはいませんが、2~3シーンくらいは漫画の原稿上で実際に書きました。

ある村で“呪われた双子”と呼ばれた子供二人が、願いを叶えてくれる龍を追いかけて冒険する物語です。途中人助けをしたり、悪い人間に追われたりします。ネタバレになりますがその願いを叶える龍というのは良い龍ではなく、世の中に厄災をもたらす邪龍でした。双子は、その龍の正体を知り、最後なんとかして自分たちの世界から追い出すことに成功するというオチです」

――本作の中で、ご自身で特に印象深いシーンを挙げるならどこですか?

「桐谷がどんどん良くなる梅子の作品に対して、悔しがって、自分でペンを取る場面です。一番描きたかったシーンでした。『自分が書いていいのか』という恐怖と『それでも書いてみたい』という桐谷の心情を表現しました」

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(23/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


――本作は読者から多くの反響を集め、またpixivコミック月例賞にも選ばれました。反響への思いを教えてください。

「たくさんの読者さんに読んでいただけたことが大変嬉しかったですし、同時にやはり桐谷のような人は少なくないのだと思いました。梅子のようにどんどん動けたらいいですが、なにかを作ること、そして誰かに見せることは怖いです。ただ桐谷が梅子に背中を押してもらい、作品を書ききることで見えてくる世界があります。

そして出来上がった作品は、たとえ上手くできなかったとしても人が作った作品とは違う愛おしさを感じさせてくれます。ぜひその感覚を体感していただきたいです」

――あららぎさんは自主制作はもちろん、プロの漫画家として活動されています。今後の活動に教えてください。

「Twitterではたまにエッセイ漫画を投稿しており、近々新しい漫画も発表予定です。連載企画も作っているところなので、皆さまにお披露目できるよう頑張ります」

取材協力:あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)

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