鼻づまりで病院に行ったら、がん発覚!闘病した主婦が、書籍「鼻腔ガンになった話」に託したものとは【作者に聞いた】
鼻腔(びくう)がんになった体験を実話コミックエッセイとして描いた、主婦のやよい かめさん。その漫画をまとめた「鼻腔ガンになった話」が2023年3月16日に書籍として発売された。果たしてどんな思いを込めて描かれたのか。漫画を作ることになったきっかけや、闘病を通して感じたこと、伝えたいことを聞いてみた。

がんを体験して思った「いつ死ぬか分からないから、好きなことをやろう」
やよい かめさんは夫と子供2人の4人家族。鼻の不調を感じ始め、精密検査を受けたらまさかのがん宣告を受けた。突然の診断に焦るものの、家族はその事実を受け入れ前向きに対応。つらい時には励まし合うなどして、一家は闘病生活を共にしていくことになるという話だ。
鼻腔がんは肺がん、胃がんなどと比べればあまり知られていないが、部位が繊細な場所だけに、進行状況によっては眼球を摘出するおそれもあるという。
やよい かめさんが、がんの体験漫画を描き始めたきっかけは何だったのだろうか。「元々芸術大学を出て作家を目指して活動していましたが、それまでは育児や、夫の転勤が多い環境のせいにして本格的な活動が延び延びに。がん治療が終わった後、『人間いつ死ぬか分からないんだから、もっと好きなことをやろう!』と決めたんです」
デジタルで絵を描く方法を学んで、Instagramやホームページを始めた。「『せっかく描くんだったら、誰かの役に立つものを描こう』と思っていました。その頃Instagramで自分の闘病体験を投稿してる人を見かけたんです。自分の経験を漫画にしたら、がん検診に行く人が少しでも増えて、親をなくす子供も減るんじゃないか?もし1人でもそんな人がいてくれたら、漫画を描く意味がすごくあるかも!と描き出しました」






自分の体のことを後回しにせず、家族のために検査をして
入院中、最も不安に思ったのはやはり治療のことだった。「治療がうまくいかず、がんが進行してしまうことが一番怖かったです。『抗がん剤や放射線は本当に効果があるんだろうか?』『もし効かなかったらどうしよう』と考えていました。本やインターネットでそれらの治療に否定的な記事も見ていたので、余計に不安でした。結果的に私には、抗がん剤も放射線もとても効果があり、腫瘍が小さくなったのでホッとしました」。そんな闘病中の不安な心の描写は、やよい かめさんの主治医からも「ぜひ医療関係者も読んで、参考にしてほしい」と絶賛された。









家族との暮らし方はもちろん、副作用の不安に医療の知識…実際に体験してみてわかったことは数知れない。そのなかでも特に伝えたいのは、早期発見の重要性だった。「『(体の)調子が悪かったら我慢せず、病院に行きましょう。そしてできるだけ検診には行きましょう』ということです。細胞ががん化する理由の一つに、炎症を繰り返すことで細胞ががん化するというケースがあります。入院中は患者同士でも『もうちょっと早く病院に行っとけば!』と話しあっていました」
とくに年々進化する治療方法も心強いという。「抗がん剤の副作用も昔に比べたら軽くなっていますし、内視鏡手術や陽子線治療などいろんな技術がどんどん一般化されています。だから、むやみにがんを恐れず、気がかりなことがあったらすぐ病院に行っていただければと思います」







深刻なテーマではあるが、がんを擬人化するなどコミカルな部分や、家族・親族との触れ合いを描くなど、決して重くならずわかりやすい内容になっている。誰もが当事者になる可能性がある今、書籍に描かれた数々のエピソードはきっと参考になるはずだ。

取材・文=折笠隆