お客さんの描く「迷路」が気になって仕方ない…ファミレスの一幕描いた漫画が「なんか良い」と不思議な読み味【作者に訊く】
老若男女、さまざまな人が思い思いの時間を過ごすファミリーレストラン。そんな中で、ノートに「迷路」を描き続けるあるお客さんのことがどうしても気になる……。『ファミレスで迷路かいてるサラリーマンが気になる』は、ファミレスでの一幕を描きTwitterで2000件の「いいね」を集めた創作漫画だ。

大きな事件が起こるわけでもない日常の一コマなのに、「なんだろう。すごく好きな感じ」「なんか良い」と、読者に印象を残す読み味が特徴の作品。ウォーカープラスでは作者の小畠泪(
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)さんに制作の舞台裏をうかがった。
迷路を描く男性客と、理由が気になる店員の日常に引き込まれる短編
小畠さんが1月、自身のTwitter上に投稿した同作。ファミリーレストランの店員として働く女性が、広げたノートに向かう男性客とすれ違うところから物語ははじまる。

「何書いてんねんろ…」と、素朴な興味からノートに視線を送った店員は、そこに描かれているのが迷路であることに気付く。
平日の日中にスーツ姿の男性が一心不乱に迷路を描いている姿がどうにも気になってしょうがない店員。「リストラ…?」「病んでんのかな…」「普通に好きなんかな」と、その内心は想像が膨らむばかりだった。

後日、その男性が再び来店すると、興味はますます掻き立てられ、男性からのオーダーにダッシュで対応。迷路の進展を覗き見しながら、どうしてか男性客のことも気になり出していた。

男性客の動向を追い続けるため勤務シフトをびっちり埋め、視線を送りすぎて気配に気付かれたり、その失敗を気にして寝不足になったり、半ば自滅する形で翻弄される日々を送っていたある日。いつもの通り迷路を描いていた男性のノートに、うっかりドリンクをこぼしてしまい……、というストーリー。

「迷路を描く男性」「迷路が気になる女性」というシンプルな構図ながら、多彩さに描かれる表情や内心でのツッコミのキレ、また気になってしまう女性店員の心の動きに引き込まれる作品だ。
「日常で起こりそうなことを面白く描く」にチャレンジした作品
作者の小畠泪さんは、「ジャンプSQ.RISE」にて読み切り作品を発表している漫画家。連載を目指し制作を続ける小畠さんに、本作を描いたきっかけやこだわりを訊いた。
――「迷路を描く」というアイデアが親近感湧く本作です。本作を描いたきっかけを教えてください。
「“日常に起こる範囲で少し面白い状況”って、どういうのがあるだろう?というところから思いつきました。“ファミレス×長居するサラリーマン”、かつ大人があまりしないような“迷路を描く”という行為をしていたら誰でも気になってしまうんじゃないかというのがきっかけです」
――店員さんの台詞や心の声がテンポよく笑えるのが本作の大きな魅力です。台詞はどんなところを意識されましたか?
「キャラの台詞は漫画を描く際に結構意識しているポイントです。いかにも台詞らしい台詞にしないようにというか、リアルな会話では意外と省略している言葉など漫画の中でも言わせないことがリアリティに繋がると思っています」

――また、表情豊かながら、サラリーマンの横顔を穏やかに眺める時の微妙な変化もあり、キャラクターに血が通っている印象も強かったです。
「表情はこだわってますね!私はくるくる表情が変わるキャラが好きなので、小さいコマも可愛く描くように心がけています。読んでいる人がどんなコマでもクスッとなるような絵が描けたら理想です」
――本作を描く上で意識した点や挑戦した点はありますか?
「どうしても漫画を描くとなると大それたことをしたくなるのですが、今作は『日常の中で起こりそうなことを面白く読んでもらう』という目標で描きました。私の作風や絵柄的にもそういった雰囲気が合いそうな自覚はあるので、新しい路線の第一歩になればいいなという思いです」

――また、ご自身でお気に入りの点を教えてください。
「バイト仲間の小さい女の子が要所要所で可愛いのでお気に入りです!メインの台詞を言っていないキャラがよくみたら隅で可愛いことしてる、みたいなのが好きなんです」
――小畠さんはこれまでも商業誌に読み切りを掲載されています。漫画制作の今後の目標を教えてください。
「商業連載を目指して日々頑張っています!またTwitterでは自由に制作した漫画をこれからも載せたいと思っていますので、ぜひ読んでくださったら嬉しいです!」
取材協力:小畠 泪(@5rnrnrn5)