「父の形見は美少女VTuber」出オチから描かれる親子の絆に「感動がまってた」と反響【作者に聞く】
自分以外の存在に魂を吹き込むように、姿形はもちろん、年齢や性別も超えて活動できるバーチャルYouTuber(VTuber)。とは言え、その内幕を知った身内からすれば、VTuberと実態のギャップに衝撃を受けるもので……。死期が迫る厳格な父親と、父の“形見”として美少女VTuberを引き継ぐことになった息子を描く創作漫画『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』に、Twitter上で9700件以上の「いいね」とともに「ギャグか?と思ってたのに気づいたら泣いてた」「感動がまってた」と、笑いと感動の声が集まっている。

御城夏(
@ozyousummer
)さんが原作を、綿和わた(
@8watawata
)さんが作画を担当し描かれた同作。2人で作る作品制作の裏側について取材した。
父の形見はVTuber、約束を交わし引き継ぐ息子だが…予想を裏切る感動読み切り
広い日本家屋の一室、病床の父が息子・雄吾に「私はもう長くない」と語りかける場面から物語は始まる。

和服に身を包んだ父が「形見だと思って」と見せたのは、スマートフォンの画面に映る抱擁妹系VTuber『満豊恋慕』のアカウント。驚くべきことに、父は登録者数70万人を超える人気VTuberの“中の人”だったのだ。

真面目で威厳あふれる父が視聴者を「お兄ちゃん」と呼び、明るく振る舞う姿がかわいいと絶賛されていることを知り愕然とする雄吾は、そのVTuber活動を引き継ぐよう頼まれたことにも「正直やりたくない」と戸惑いを見せる。だが余命いくばくもない父の最期の願いと受け止め、自身が『満豊恋慕』になる代わりに、父には引継ぎを終えた後は治療に専念するよう親子の約束を交わす。

そうしてはじまった厳しいVTuber修業と、満豊恋慕としての配信の日々。雄吾は着実に、父が体現していた恋慕の姿に近づいていき、父がハマったその楽しさも理解していく。だが同時に父の病状も進行しており、息子にVTuberとして一人立ちのお墨付きを与えた直後、とうとう父は倒れてしまう――、というストーリーだ。

コンビで作り出したアクセル全開のアイデアと、ギャップ活かした作画
同作は、『父の形見』というタイトルで、ヤンマガ月間新人漫画賞(第511回 2022年11月期)で佳作を受賞した作品。父がイメージと真逆の美少女VTuberとして活動しているという導入のギャップに笑ってしまう一方、VTuberを通して親子の深い絆を描き上げた感動の物語となっている。作者の御城さんと綿和さんに、読者の興味を惹いた本作のアイデアや、制作上のこだわりについてうかがった。

――まず、お二人で漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
御城さん「二人で漫画について話している中で、御城が話作り、綿和さんが作画とお互い得意な部分を活かせる関係だと思ったので一緒にコンビを組むことにしました」
――本作のアイデアやストーリーはどんなところから生まれていったのでしょうか?
御城さん「一話完結である読切を考えるにあたり、出会い頭で面白さを提示しないと読者が最後までついていきづらいと思ったので、タイトルや序盤の展開で面白さが一気に伝わる作品にしようと考えました。簡単に言うと、『内容が気になる動画のタイトルとサムネイルを作ろう!』と同じ感覚です。その結果『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』が誕生しました。父親がVTuberという展開は昨今ではもう目新しくありませんが、“形見”という継承要素によって主人公がどうなるのか?と序盤からアクセル全開の作品になったと思います」
――威厳ある父が実は美少女VTuberで…というストーリーを描く上で、作画の面では特にどんなところを意識して描かれましたか?
綿和さん「作画は現実の父親とVTuberとのギャップをとにかく意識しました。序盤は出オチ感やギャグシーンが多いので中でもギャップを意識した作画を行っています」
――お二人で作品を作るに当たって、分担ははっきり分かれているのでしょうか?
御城さん「分担としては普段から御城が話作りと簡単なネーム(下書き)まで、綿和さんがそこからしっかりとしたネームと作画という形で行っています。御城が綿和のネームや作画に意見したり、綿和さんが御城のセリフ回しや下書きの構図に意見したりと、よくお互いの作業に意見を言い合って関心したり喧嘩したりしています」
――お二人それぞれ、本作で特にお気に入りのシーンや好きな部分を教えてください。
御城さん「私は冒頭の1~4ページです。序盤のインパクトに全力投球した作品なので、個人的にはここ以外にあり得ません。厳格な父親と可愛いアバターのギャップと主人公の反応が大好きです」

綿和さん「ライブのシーンが特にお気に入りです。単純に作画が上手くいったというのもあるのですが、病室と父親との対比があって心情が上手く表現出来たかなと思います。ここは御城さんの提案のおかげなので、とても感謝しています」

――本作には9000件以上のいいねとともに、「感動した」という声が多く寄せられています。反響についての思いを教えてください。
御城さん「今作は持ち込みであまり好印象ではなく、ヤングマガジンの月例賞でも受賞はしたものの掲載には至らずといった作品でした。編集部に許可をもらい供養的な意味でTwitterに投稿したので、想像を超える反響を頂き驚きました。個人的には出オチで設定をあまり活かせなかったと後悔していた作品でしたので、感動したと言う意見をいただいてとても嬉しかったです。漫画を描いてて良かったと思い励みになりました。読んでくださった皆様、本当にありがとうございます」
綿和さん「まさかここまで反響があると思わなかったので、自分でもすごく驚いています…!本当にありがとうございます!今回のこの反響を胸に次の作品を頑張って制作していきたいです!今後もTwitterに漫画作品を投稿していく予定なので是非ともTwitterをフォローしていただければと思います」
取材協力:御城夏(@ozyousummer) / 綿和わた(@8watawata)