「頭痛をとって」「お酒がほしい」“お稲荷様”と持ちつ持たれつのご近所付き合い!?実在作家の不思議な体験を描く漫画に「うらやまです」の声【作者に聞く】

怪談の定番と言える幽霊やお化けは、どうしても不吉なイメージを持ちがち。けれど、“分かっている”人の前では意外と上手くやっていけるもので…?実在の作家が送る不可思議な日常を描いた漫画にTwitter上で「素敵なお話」「うらやまです」と、5500件を超える「いいね」が集まっている。

お稲荷様と頼み頼まれのご近所づきあいにほっこり!実在作家の不思議な日常描く『七海さんのオバケ生活』(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版

話題を呼んだのは、作家・エッセイストの加門七海さんが日々出会う奇妙な現象やこの世ならざるものとの共存を、漫画家・イラストレーターのみつつぐ( @mitutugu )さんが描く漫画 『七海さんのオバケ生活』 (朝日新聞出版)だ。加門さん、みつつぐさんに反響への思いを聞いた。

どこか気の合うお稲荷様に願い事、すると向こうも頼み事…不思議な関係にほっこり

Twitterで注目を集めたのは『七海さんのオバケ生活』の第1話。近所の「お稲荷様」とのほのぼのした関係が描かれている。

『七海さんのオバケ生活』第1話「お稲荷様との付き合い方」2(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


ある怪談会の仕事を前に、どうにも気乗りしないでいた加門さん。悪い予感がしながら出かけた加門さんは、稲荷神社、いわゆるお稲荷様にお参りすることを思いつく。住居周辺の氏神・産土神の中でもそのお稲荷様とは不思議と気が合い、相応の対価があれば多少のお願いごとなら引き受けてくれるという加門さん。社に向かい、「何事もなく過ごせますように」と、手持ちの扇子に乗って着いてきてもらえるようお祈りする。

『七海さんのオバケ生活』第1話「お稲荷様との付き合い方」5(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


すると、お稲荷様の「良いね!」という声が届いた加門さん。何に対しての言葉なのか加門さんは不思議に思いながらも、お稲荷様に守ってもらい、無事仕事を終えることができた。

『七海さんのオバケ生活』第1話「お稲荷様との付き合い方」8(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


だが、その日から数日後。加門さんは突如、激しい頭痛に襲われてしまう。原因が分からず打つ手なしの加門さんは、ふと、先日のお稲荷様の「良いね」の言葉を思い出す。どうやら先日の扇子が気に入っていたようだと思った加門さんは、今度はお稲荷様に、その扇子と引き換えに頭痛を取り除いてもらえないかと願う。

『七海さんのオバケ生活』第1話「お稲荷様との付き合い方」9(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


翌朝、嘘のように頭痛が解消された加門さんは、約束を守るため社に扇子をお供えする。加門さんは感謝を伝え立ち去ろうとするが、ひょっとすると他の誰かが持ち帰ってしまうかもしれないと思い、見つからないよう奥まった場所に置き直そうと社へ舞い戻る。

『七海さんのオバケ生活』第1話「お稲荷様との付き合い方」12(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


が、先ほど供えたばかりの扇子は忽然と姿を消していた。時間にしてわずか数分、他にお参りにきた人もおらず、その様子にお稲荷様はよほどあの扇子が気に入ったのだなと得心する加門さん。それ以来、加門さんは社を通りすがるたび挨拶をするようになり、お稲荷様の方からもお酒を頼まれたり、向こうからお願いごとがないかたずねてきたりと、神様と良好な関係が続いているのだという。

著者自身も「追体験」…コミカライズへの思いを聞く

人ならざるものとのご近所付き合いを描いたエピソード。Twitter上では「いい関係、うらやまです」「こんな素敵な関係築きたい」と共感の声が寄せられた。

「HONKOWA」で連載中の同作は2023年2月に単行本第1巻が発売。1巻には同エピソードのほか、お葬式での奇妙な話や、古書に宿った古い記憶の情景など、加門さんが語る実際に体験した不思議な出来事が全8話収録。また、巻末には単行本のおまけ漫画2話も収録され、発売後はたちまち重版が決まるなど注目を集めている。

『七海さんのオバケ生活』(1)書影(C)加門七海・みつつぐ / 朝日新聞出版


同作について、語りをつとめる加門さんは「“七海さん”のかわいさは最早フィクションの粋ですが、友人たちいわく、口調や怪異への反応などはとても私に似ているそうです。こちらの話もうまく落とし込んで描いてくださっているので、本人が追体験できるのが面白いですね。あらためて、漫画っていいなあと思います」と、みつつぐさんによる漫画作品として描かれる感想を語る。

また、漫画を担当するみつつぐさんは、以前から加門さんのファンだったそう。「加門先生は神仏やアニミズムなもの全般的に敬意を払うでしょうから、漫画を描く時にその辺りは忘れないように描いています」と、加門さんの体験談を漫画にする際に意識していることを教えてくれた。

SNSでの読者からの声や重版の決定など、反響を集めている『七海さんのオバケ生活』。加門さんは反響について「たくさんの方に面白く読んでいただけたようで、とても嬉しいです。みつつぐさん描く日常で起きるちょっとした怪異。これからも、どうぞお楽しみください」とコメント。

みつつぐさんは「元々のお話が面白いので私は絵をおこさせてもらうだけという所もありますが、反響があるという事は皆さんと面白いと思ってくれているツボが一緒なのかな、と思うと世の中と繋がっている感じがして楽しいですね。怖いものからゴリラまで面白ネタ満載ですので伝わって描けるように頑張っていきます」と、今後への意気込みを語った。

みつつぐさんのやわらかなタッチで描かれる加門さんの不思議な体験談。時には少し恐ろしく、けれども愛おしい“あちらの世界”との小さな交流録から今後も目が離せない。

取材協力:加門七海 みつつぐ / 朝日新聞出版

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