“報われない人だらけ”高校生たちの数珠繋ぎの思いを描く連作に「みんな幸せになってくれ」と反響【作者に聞く】
周囲からミステリアスなイメージを持たれている男子高校生。学校ではクールな彼は、バイト先では買い物客の主婦に赤面をこらえられないほどの恋をしていた。その彼を影から見つめる少女と、彼女に付き添うもう一人の女の子、高校生たちの「片思い」が数珠繋ぎになっていて――。

漫画家の寺田亜太朗(
@t_atarou
)さんが今年4月からSNSで公開しているオリジナル漫画
「こじらせ片思いしかいない」
シリーズに、Twitter上で「続きが気になります」「みんな幸せになってくれ」と大きな反響が集まっている。第1話にあたる「応援しにくいラブコメ」には6.8万超のいいねが寄せられ、pixivマンガ月例賞(2023年4月投稿分)の大賞にも選出された同シリーズ。作者の寺田さんに、本作を描いたきっかけや作品への思いを取材した。
クールな高校生は主婦に片思い、そんな彼を見つめる同級生…連鎖する思い
私生活がうかがい知れないクールな高校生の「氷山ショウ」。彼は学校でのイメージとは裏腹に、バイト先にやってくる三児の母「マイノさん」に焦がれるような恋心を抱いていた。

自分の親ほどの年齢の既婚女性であるマイノさんに会うために、わざわざ隣町のスーパーをバイト先に選んだ氷山。ストーカーすれすれの無鉄砲さは、友人の「井伊ヤツ」のみが知るところだった。
そんな氷山を影から見守っていたのが、同級生の少女「恋塚ハル」。小学校時代から幾度となく自身を助けてくれた氷山を想う彼女は、不器用ながら話しかけるチャンスをうかがっていたのだ。

そしてハルの友人「重井ヤマ」は、内心でハルの想いが報われないと思い、内心で「わたしじゃダメ……?」と、やはり秘めた感情を抱えており――。「こじらせ片思いしかいない」というタイトル通り、高校生たちの胸中にあるそれぞれの思いが一方通行で連鎖する模様を描いた群像劇だ。

「いろいろなパーソナリティーの片思いを」ワンアイデアではじまった個人制作
読者からは「全てのいく先が平等に気になります」「想いが報われない人だらけ」「いろんな人が交差してて面白い」と、感情の矢印は向けられていても交わらないその人間関係に注目が集まる同シリーズ。作者の寺田亜太朗さんはウェブメディア「ヒューペル」上で
『猫を拾った話。』
(原作・本田八十二)を連載するほか、
『ジンメンソウといっしょ』
(KADOKAWA)や
『あやつき』
(講談社)など商業作品を数多く発表するプロの漫画家だ。
ウォーカープラスでは寺田さんに、同シリーズのアイデアのきっかけや、個人制作ならではの見どころなど話をうかがった。

――「こじらせ片思いしかいない」シリーズを描いたきっかけを教えてください。
「恋愛漫画を読むのは好きなのですが、自分では駆け引きなどがまったく描けずに悩んでいたところで……。揺るがない『好き』の片思いなら描けるかもしれない、と思って始めた漫画でした」
――第1作の「応援しにくいラブコメ」から多くの反響が集まりました。もともとシリーズとして描こうと考えられていたのですか?
「『らんま1/2』のような、それぞれの恋が行動理念になっているコメディが好きなので、シリーズというより、各キャラクターの説明だけをしている漫画という印象です」
――各キャラクターの想いとその背景が丁寧に描かれているのが大きな魅力です。人物を描く上で意識している点があれば教えてください。
「ありがとうございます。それぞれ、どこかひとつでも共感してもらえるように描ければいいなと思っています」
――個人制作のシリーズということで、商業作品とあえてアプローチを変えている点はありますか?
「思いついたシーンを落書きで出してみた…、という以上のことは現状ありません(笑)。ワンアイデアでストーリーもないものも気軽に見てもらえるのがSNSのいいところですね」
――寺田さんがご自身でお気に入りのシーンや、楽しんで描いた点があれば教えてください。
「ハルの“恋する目”の表現に、キラキラしたエフェクトを使えて楽しかったです」

――本作はSNSでの反響をはじめ、pixiv月例賞を受賞するなど注目を集めています。作品の今後についてメッセージをお願いします。
「こじらせたキャラクターを楽しんでいただいた方々、ありがとうございます。できればいろいろなパーソナリティーの片思いを描ければいいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします」
取材協力:寺田亜太朗(@t_atarou)