聴覚障害者の私とフードコートの呼び出しベル「それは振動しますか?」音が鳴ってもわからない、スタッフとのやり取りを描く【作者にインタビュー】
うさささん(
@usasa21
)は、耳に障害を持ち、生活音を把握することができない。特に人が多い場所では、補聴器をつけていてもどこから音が鳴っているのか判断することが難しいという。そんなときフードコートで手渡された「呼出しベル」。音が鳴るだけでは気づくことができないうさささんと、スタッフとのやりとりを漫画に描いた「耳がきこえない私と呼出しベル」に4.9万いいねと温かいコメントが届く。今回は、うささんに詳しく話を伺った。
出来上がりを知らせてくれる、ブザー。しかし、鳴っていることがわからないうさささんは…?

作者のうさささんは聴覚障害者で普段から補聴器をつけているが、ものの音の出どころや方向、内容をはっきり理解することができない。そんなとき、お店で手渡されたのが呼出しベル。そこには「ブザーが鳴ります」と書かれている。

鳴るだけなのか、振動もするのか。もし、振動しないタイプでも、音と同時にピカピカと光ってくれれば、それでわかるかもしれない。呼び出されるまで、一瞬たりとも目が離せない不安と闘っていた。

結局、その呼び出しベルは、音が鳴ると同時に光って振動もするタイプだった。しかし、中には音しか鳴らないベルもある。その後、うさささんはスタッフに、ベルは振動するか必ず確認ようになったという。

――光・振動・音、この3つがセットになっている呼び出しベルが普及するといいですね。ちなみに(役所などの)電光掲示板の方がわかりやすいですか?
はい、光・振動・音、すべてそろっている呼出しベルが普及されることを願っています。声だけの呼び出しに比べて、電光掲示板の方がわかりやすいです。ですが、モニターを凝視していないといけないというデメリットがあるんです。一人のときならいいのですが、わんぱくな娘から目が離せないので目が忙しくなってしまうんですね。

また、回転率の早いファストフードですと、モニターと店員さんの掛け声にタイムラグが発生しやすく「呼ばれた?呼ばれていない?」と迷ってしまうんです。役所でもほんの少し目を離した隙に呼ばれていて、自分が呼ばれていることに気づいたときに飛ばされてしまったこともありました。便利なようで少し不便なんですよね。

――店員さんたちの気配りに「ステキな話だなぁ」とたくさんのコメントが届いていました。いかがでしょうか?
呼出しベルの振動が苦手だけれど、聴覚障害者にとっては振動が必要なんだ、と気づきにつながった方がとても多くいらっしゃり、うれしく思いました。自分には不要でも、必要な人がいると知るとそのモノの見え方が変わりますしね。また、医療機関で働いている方からコメントがあったのですが「今までは直接呼びに行っていたけれど、振動式の呼出しベルを使えないかどうか上司に打診します!」と行動に移してくださったようです。”やさしい”が次に繋がり、発信してよかったと思いました。

――最近では、(ファミレスなどで)店員さんを呼ぶボタンがありますよね。呼び鈴が聞こえないと、押したかどうか心配になりませんか?
店員さんを呼ぶボタンは光らないタイプが多いように思います。まず自分の席の番号を確認し、店員さんが見るための呼出しモニターの場所をチェックします。呼出しボタンを押し、自分の席の番号がモニターに表示されたら「ちゃんと押せたな」と安心するんです。ただ、呼び鈴だけはどうしてもわからないので、練習あるのみだな…と思っています。

――「耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし。」が書籍になると伺いました。新刊はどのようなお話になっていますか?
耳がきこえない私が、耳がきこえる娘を産むことでストーリーが始まります。ある朝、娘がトースターを指差し「おとがなった」と言うんです。私はとても驚いてしまったんですね。なぜならば、漫画に音の描写のない家電たちは音を出さないと思っていたんです。きこえる娘のおかげで私は”トースターが喋る”ことを知りました。
音のない世界にいる私が、音のある娘の世界に触れ、驚いたり、泣いたり、葛藤したり、感動したり…そんなエッセイ漫画をギュッと詰めた一冊となっています。ぜひ、読んでもらえたらうれしいです。
うさささんが、開発の試作として駅に設置された「エキマトペ」を体験したエッセイ漫画は、12万いいねを獲得。うさささんの発信によって、必要なのは音ではなく、耳以外で確認できる方法なのだと知る。また、kodomoe(白泉社)にて「
耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし。
」を連載中のほか、
ブログ「うささかふぇ」
では、Xでは読めない作品も投稿している。
取材協力:うささ(@usasa21)