ダメ当主?それとも名君?今川義元の息子・今川氏真の生涯を再検証【作者に訊く】
「海道一の弓取り」との異名を誇った戦国大名・今川義元。織田信長に大敗した桶狭間の戦いは有名だが、実は今川家自体は息子の今川氏真(いまがわうじざね)が継いでその後も存続していた。しかし、当主となった氏真は「今川家を滅亡させた暗君」のレッテルを貼られていて――。

「マンガでわかる 戦国武将のさいご図鑑」
(マイナビ出版)や、
「マンガ版 教養として学んでおきたい5大宗教」
(執筆・監修:中村圭志、マイナビ出版)など、歴史・宗教に関する書籍も手がけるかたわら、歴史上の人物の生涯をYouTube漫画として描き人気を博す漫画家の徳永サトシさん。戦国時代を舞台にした作品では、史実をベースに創作をまじえ歴史に詳しくない人にも楽しめる内容で、戦国のスターのみならずマイナー武将までさまざまな人物を取り上げている。


2022年6月に公開され、30万回再生を数える漫画動画「今川氏真の生涯~ポンコツか?名君か?~」では、今川義元の嫡子であり、戦国大名としての今川家最後の当主である今川氏真を分析。天下取りをうかがうほどの名家だった今川家を終わらせたという低評価もある中、さまざまな角度からその人物像を浮かび上がらせる作品だ。今回は、今川氏真の知られざる一面に焦点を当てたきっかけや氏真の描き方について、作者の徳永さんに話を訊いた。
「時代に恵まれなかった」氏真、読者からの「印象が変わった」という声



――今川氏真という人物に興味をもったきっかけと、その評価を検証するという方向性で作品を描いた理由をそれぞれ教えてください。
【徳永サトシ】今川氏真に興味を抱いたきっかけは、彼の父・今川義元を調べたことです。実力が高く評価されている父・義元とは対照的に、氏真の実力はかなり低く評価されています。個人的に「優秀な人物」よりも「どこか抜けている人物」の方が感情移入しやすいので、氏真により興味を持ちました。氏真のことを調べる前は、「わずか8年で今川氏を滅亡させた暗君」というイメージを持っていましたが、いろいろなエピソードを知っていくとそのイメージは変わっていきました。
――デザインや表情はどことなくヘタレながら、生きることに全力という作中の氏真のキャラクターには親近感を感じます。漫画の登場人物としてどんなイメージで描かれましたか。
【徳永サトシ】時代に恵まれなかった人物として描きました。氏真は戦乱の世の中では、大活躍することはありませんでした。ですが、蹴鞠、和歌、連歌などに精通した才能豊かな人物でもありました。時代が違えば、もっと評価は変わっていたのかもしれません。
――ユーザーからは「印象が変わりました」「時代が悪かった」と言った声が寄せられています。反響への思いを教えてください。
【徳永サトシ】「印象が変わった」という声がうれしかったです。僕自身が調べる中で抱いた感想でもあったので、共感してもらえたのがとてもうれしかったです。
取材協力:徳永サトシ(@tokunaga0621)