もっとも信頼できる“裏切り者”!?家康と敵対した「嫌われ者家臣」本多正信の生き様【作者に訊く】
裏切りが常の戦国時代。下剋上で主君と敵対する武将も多い中で、一度は刃を交える立場になったにもかかわらず、徳川家康が呼び戻し重用した家臣がいた。その男・本多正信は、同僚たちから白い目を向けられながらもその手腕で「裏切り者」のレッテルを跳ね返していく――。

「マンガでわかる 戦国武将のさいご図鑑」
(マイナビ出版)や、
「マンガ版 教養として学んでおきたい5大宗教」
(執筆・監修:中村圭志、マイナビ出版)など、歴史・宗教に関する書籍も手がけるかたわら、歴史上の人物の生涯をYouTube漫画として描き人気を博す漫画家の徳永サトシさん。戦国時代を舞台にした作品では、史実をベースに創作を交え、歴史に詳しくない人にも楽しめる内容で、戦国のスターのみならずマイナー武将までさまざまな人物を取り上げている。
2023年6月に公開され、10万回以上の再生を数える漫画動画「本多正信の生涯~徳川家で最も嫌われた男~」では、家康の懐刀として江戸幕府開府後には老中にまで上り詰めた家臣・本多正信にフォーカスを当てる。


徳川家臣の中でも屈指の重要人物である正信だが、一度は家康を裏切り敵対。その後帰参が許されるも、冷や飯食いの環境で信頼を取り戻していったという異色の経歴の持ち主だ。今回は「嫌われ者」本多正信を描いたきっかけや、その人物像について作者の徳永さんに話を訊いた。
「マイナスな印象から始まる方が興味が湧く」本多正信を描いたきっかけ
――家康の幼少から仕えた正信ですが、「嫌われた男」という切り口で描いた理由を教えてください。
【徳永サトシ】「嫌われた男」というフレーズのキャッチーさに惹かれて、描きました。マイナスな印象から始まるほうが、その人物像に興味が湧きます。そして、周囲から嫌われる中でどのように振る舞ったのか知りたくなります。視聴者の興味が湧くようなキャッチフレーズを意識しています。

――「嫌われ者」の自覚で悩む、それでも信頼を取り戻そうとするというキャラクターに親しみを感じました。徳永さんがこのような人物像で描いたのはどうしてですか?
【徳永サトシ】事実として、本多正信は徳川家康の信頼を取り戻しているからです。徳川家に戻った時は40石だったのに、十数年後には1万石にまで増やしています。その裏には並大抵ではない努力があったのだろうと感じました。そして多くの悩みも付きまとったのだろうとも、その人物像を想像しました。
――動画の中で、裏切った後家康から「徳川家のために働け」と声をかけられるシーンは特に多くの反響が集まっています。この場面にかけた思いを教えてください。
【徳永サトシ】三河一向一揆で徳川家を裏切った者たちの多くは許しを請い徳川家に戻りましたが、正信はなかなか戻りませんでした。正信には正信の信条があったのだと思います。そんな状態から徳川家に戻るためには印象的なシーンが必要でした。だから、ページ数をさいて視聴者が納得できるようなシーンを心がけました。


取材協力:徳永サトシ(@tokunaga0621)