この世で一番美しいと言われた「白雪姫」のその後は?王子と結婚した15年後を描く「怖いけどおもしろい!」アフターメルヘン【著者に聞く】

白雪姫が動揺する理由は?画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

誰もが知るおとぎ話「白雪姫」。女王の持つ魔法の鏡が「この世で美しいのは、白雪姫だ」と言ったことで、美しさを妬まれ、白雪姫は女王に扮した老婆に毒リンゴを食べさせられる。永遠の眠りについた白雪姫はしかし、王子の愛で生き返るという話だ。童話の「その後」をモチーフに描いた作品が田島生野さんの「アフターメルヘン(上)」(イースト・プレス)。「こんな話想像つかない」と読者を驚かせている。今回は、作者・田島生野さんにインタビューを行い、制作秘話やこだわりについて話を聞いた。

美しさと醜さは表裏一体。憎悪や嫉妬、醜悪なものが美しいものを磨き上げる

第1話白雪姫(24)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

主人公は、廃品回収を生業とする兄弟。兄はヤコブ、弟はヴィルヘルムという。彼らは、「めでたし」のその後を見定め、不要品を回収し、おとぎの国の美化をはかり、規律を保つ。人は彼らをグリム兄弟と呼ぶ。

第1話白雪姫(2)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

第1話白雪姫(13)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

第1話白雪姫(14)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

第1話白雪姫(15)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

第1話の依頼主は「白雪姫」。毒リンゴの呪いから目覚め、王子と結ばれてから15年が経った。現在は、王妃となって一人娘マルガレータとともに幸せに暮らしている。2人は白雪姫に呼ばれて、廃品回収のため王城に向かった。兄ヤコブは「何年経っても白雪姫は美しいままですね」と白雪姫に言った。「それにあんな大きな娘さんがいらっしゃるなんて、お母さまそっくりで将来が楽しみです」と話すと、白雪姫は「そうかしら」と目を逸らした。

第1話白雪姫(16)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

第1話白雪姫(17)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

ヤコブは、一人娘に対して冷たい態度の白雪姫に違和感を抱きつつ、引き取り先の不要品の場所に案内された。引き取って欲しいものは、義理の母から受け継いだ「魔法の鏡」だった。大切にしていた鏡だったが、壊れてしまったという。

第1話白雪姫(18)画像提供:「アフターメルヘン」(C)田島生野/イースト・プレス

ヤコブは魔法の鏡を回収し、弟・ヴィルヘルムと落ち合う。そのとき、お城から「あなた、また途中で掃除を投げ出して遊んでいたわね!」と怒鳴り声が響く。この世で一番美しいと言われた白雪姫は「美」に執着するあまり、義母と同じように心を歪ませてしまったのだ。

第1話は「無限ループ」のようなオチで「大人になった白雪姫」の世界観を膨らませた


――まずは、おとぎ話のその後を描こうと思った経緯を教えてください。

前から童話モチーフは好きでしたし、自分のアナログチックな絵柄にもあっていると思ったので、いつかは描いてみたいテーマでした。元々、本作は私の個人SNSにアップしていた単発の短編創作漫画で、第1話にあたる「白雪姫」のエピソードのみの予定でした。当時描きたかったのは「純粋で美しいものが時を経て、やがてくすんでしまい、かつて自分をいたぶっていた悪役の立場に今度は自分がなってしまう」…という、いわゆる「無限ループ」みたいなオチで、その設定を描くために、「大人になった白雪姫」(連載化にあたり「おとぎ話のその後」)という世界観を膨らませていきました。

――誰もが知っているおとぎ話の続きを描く難しさや逆にこだわっている点はありますか?

おとぎ話は誰もが一度は読んだことがあり、読んだ人の思い出の数だけ、それぞれのおとぎ話に対するイメージが根付いていると思います。なので、「おとぎ話のその後」を描くにあたっては、できるだけ元の童話のイメージから大きく逸脱はせず、読者の方に納得感を抱いていただいた上での「アフターストーリー」になるように気をつけています。

そのためには、自分の中のおとぎ話の解像度を上げなければと思い、モチーフの童話のさまざまな訳や関連書籍を読み込みました。また、こだわりは、3話「ラプンツェル」の回に出てくる酒場に、「KHM12」と書かれた樽があるのですが、これは、「ラプンツェル」のグリム童話の通し番号(Kinder- und Hausmarchen 12)だったり、「いばら姫」の回に出てくるターリア姫は、童話「いばら姫」の原型となった「ペンタメローネ」の「太陽と月とターリア」から取っていたり、童話に詳しい方が見て「お!」となってほしい小ネタをいくつか描いているので、ぜひ探してみていただきたいです!

――グリム兄弟の正反対の性格が本作でいいスパイスになっていますね。キャラづくりで気をつけていることはありますか?

兄弟のキャラについては、作品のテーマでもある「美醜は表裏一体」を念頭に置いて描くようにしています。無知で純粋で楽しいことや美しいもの、おとぎの国の美しい側面を見て、いつも明るい弟と、その裏の美しいものだけではない、醜さや残酷さにも一定の理解や関心を示している兄。2人の立場や考え方の違いを通して、作品のテーマを楽しんでいただけるようにキャラクターをつくっています。また、各話のおとぎ話のゲストキャラは、掲載していただいている媒体のマトグロッソさんの読者層を鑑みて、見た目(キャラクターデザイン)的にも性格的にも、あまり漫画チックにデフォルメしすぎないようにしています。

――今後の展開を言える範囲で教えてください。

マトグロッソさんでの連載は現在佳境で、最終話も見えてきておりますので、まずはとにかく完走して最後まで皆様にお届けしたいと思っております!コミックス下巻の構成なども担当編集の方と相談中ですので、ぜひ上下巻そろえてお手に取っていただきたいです!

廃品回収を生業とする兄弟は、シンデレラ、ラプンツェル、裸の王様、いばら姫――など、おとぎの国の各地を巡る。田島さんが描く繊細、精緻なメルヘンの世界も見どころのひとつ。本作は、 マトグロッソ で連載中のほか、 COMICポルタ (@comic_porta)で出張掲載&非公開話数は分冊版で配信中。

取材協力:田島生野(@ikunoTJTJ)

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