「今日で何連勤だ?」連勤を自慢しあったブラックな時代…死にかけた“俺”に起きた奇妙な現象【作者に聞く】
郵便配達員たちは毎日、町の隅々まで郵便物を配達して回っている。そんな現役の郵便局員が、実際に経験した不思議な話や怖い話を漫画化したのが「郵便屋が集めた奇談」である。この漫画の作者は、現役の郵便局員である送達ねこ(@jinjanosandou)さん。同僚たちが体験した話を漫画化していくうちに、送達ねこさんのもとには他局からも体験談が届くようになっていった。今回紹介する話は、事故を起こした配達員の身に起こった奇妙な事件の話「死に損なった俺の話」である。

時代は少し遡り、平成20年代前半の36協定も厳しくなかったころ。N局に勤めていた星野さんは、郵便局とは別の配送の仕事も兼業していたという。その日も18連勤中だったが、突発(急な欠勤)が起き、星野さんが急遽シフトに入ることになった。時代も時代だったが若さもあり、「ま、稼げるからいっか…」と軽く引き受けたそんな矢先に事件は起こった。

配達先の民家の前に車を停めて、荷物を持ち、呼び鈴を鳴らしたが音がしない。「壊れてる」と思って声がけをしようとした次の瞬間、星野さんの体は玄関をすり抜けるかのようにいつのまにか家の中に入っていた!!「なんで中?玄関開けてないが」と考えていると、その玄関をガラッと開けて血みどろの姿で入ってきた人物が…!その人物とは一体…!?「え?おれ?どうしたおれ?」と星野さんは混乱する。

本作について送達ねこさんに詳しく話を伺ってみた。
――平成20年代前半の話とのことですが、確かに少し前までは度を超した連勤やサービス残業、徹夜が当然のようにありました。郵便局も同じような状況だったのでしょうか?
郵便局もひと昔前は、人が足りないときは「ゆうメイトさん(当時の名称)」が十何連勤もしていました。兼業も普通で、休日や退勤後に別配送の仕事やスーパーの仕事に従事している人が少なくなかったです。
――送達ねこさんのもとに届いた体験談を漫画化されているとのことですが、まだ漫画化されていない話はどれくらいありますか?
70ほどあります。配達先で見聞きした怪異、郵便局内の不思議な出来事、事件の注意喚起などネタは尽きません。そのまま描くと差し障りのあるものも少なくないですが…。でも、そんな「表に出せない話」には、実は描く意義が大いにあると思うので、漫画の力をつけて、陽の下に出せる形にして、いつか全部を描きたいと思っています。

今回紹介した「死に損なった俺の話」の「死に損なった」という言葉には、2つの意味がある。ひとつは「もう少しで死にそうになる」。2つめは「死ぬことに失敗する」。今回の「死に損なう」は前者であるが、星野さんは死から生還したとき後者の意味も頭によぎる…。奇妙な現象だけでなく、思い悩む星野さんの姿にも注目して読み進めてほしい。
「郵便屋が集めた奇談」は、読者から「こういう不思議で怖い話って好き」「けっこう背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい…!」と好評だ。日本のどこかの町でひっそりと起こっている“怪異”を覗き見してみよう。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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