「猫はすべての人間の言葉を理解している」「雲は地球が見ている夢」一昔前は信じられていた西洋の迷信を片っ端から実践する新感覚コミック【作者に聞いた】
作画:尾花せいご
(@seishoobi)
さんと監修:西洋魔術博物館
(@MuseeMagica)
さんによる創作漫画「放課後おまじない倶楽部」は、迷信研究部に入部した少年と、不思議な雰囲気が漂う顧問との日々を描くオリジナル作品だ。
緻密で精細な絵とノスタルジックな絵柄に定評のある尾花さんの作画と、西洋魔術や西洋の魔物、伝承、迷信などの著書多数の西洋魔術博物館さんが監修した多彩な迷信やおまじないのエピソードが大きな魅力となっている同作。エピソードの紹介とともに、監修の西洋魔術博物館さんに作品内で描かれる伝承について詳しい話を聞いた。
部員1人、顧問1人の迷信研究部が過ごすおかしくて穏やかな日常
季節外れの転校生・栗丸君と、迷信研究部顧問・天野先生の出会いからはじまる本作。栗丸くんは、ミステリアスな雰囲気を放つ天野先生の誘いもあり、西洋に古くから伝わる迷信や伝承を現代日本で実践してみようという奇妙な部活動「迷信研究部」に入部することに。「クリスマスツリーを2月2日までに片付けないとゴブリンになる」、「1月20日の前夜に夕食を抜いて眠ると、将来の伴侶を夢に見る」などなど、不思議で奇妙だが、当時は皆が真剣に信じていた伝承を実践していく。





監修・西洋魔術博物館さんに聞く迷信との出合い
――迷信や雑学を収集しようと思ったきっかけを教えてください。
【西洋魔術博物館さん(以下、西洋魔術博物館)】魔術資料を求めて古い文献などを集めていくと、期せずしてさまざまな民間伝承の類に触れることが多く、これはこれでおもしろいと思いました。また西洋の迷信を知ることで文学作品や映画の場面の背景やニュアンスもわかるようになり、実り多い収集となりました。





――西洋のオカルト的文化の学問に興味を持ったきっかけを教えてください。
【西洋魔術博物館】1970年代前半に日本でもオカルトブームがあり、TVや雑誌などで超能力や大予言、UFOやネッシーが取り上げられていました。当時中学生だった自分もご多分に漏れずその種のことに魅力を感じたものです。またそういった流行りものに詳しいと、学校の昼休みに人気者になれたりするじゃないですか(笑)。自分はそこで西洋の魔術というものを知り、その種の読書を始めた次第。1年も経つと他のみんなは次の流行りものに移行していったのですが、自分は魔術から動かなかった、と。






――迷信だとわかっていながらも普段無意識にやってしまうことを教えてください。
【西洋魔術博物館】霊柩車を見ると両手の親指を握りこみます。








――いくつも著書があるところ、漫画の監修をすることになった感想を教えてください。
【西洋魔術博物館】物心ついたころから漫画に親しんでいた世代ですので、漫画に関わる仕事ができるのは実にうれしいというか光栄というか。




――漫画の中で「空中を舞う落ち葉をキャッチして、『よい旅を』と唱えて、旅立つ妖精・ブラウニーを祝福するといいことがある」という伝承が出てきます。この伝承はいつごろ、どの地域で言い伝えられるようになったのでしょうか?
【西洋魔術博物館】1878年サセックスのフォークロア記録に「落ち葉を空中でキャッチできると幸福が12カ月続く」というものがあります。落ち葉をブラウニーと同一視していると考えられるわけです。だいたいの昔話にあっては、幸せの小人を捕獲してもひどい目にあうばかりですので、ここは祝福して放してやるほうが賢明という発想でしょう。











――「雲は地球が見ている夢」という迷信が出てきました。こちらについても解説をお願いします。
【西洋魔術博物館】これは迷信というよりも大宇宙・小宇宙論からの派生物です。人体の周囲にオーラがあって、そこに浮かぶ色や形象からさまざまな事物を判断するという術があるわけで、それを地球に応用すると大気圏が地球のオーラとなり、雲がシンボルとなるという次第。観天望気の術の背景といってよいかと。










――「お弁当の時間に猫の王様の話をすると、猫好きが反応してくれる」という話がありました。猫の王様の話とは、どんなお話なのでしょうか?
【西洋魔術博物館】「旅人が夜、廃墟となった教会近くを通りがかると、なにやら音がする。覗いてみると猫たちがたくさん集まってお葬式をしている。やがて王冠を乗せた棺が運び込まれてきた。怖くなった旅人は急いでその場を立ち去り、なんとか人里にたどりついて、宿屋で猫の葬式に遭遇した話をする。すると話を聞いていた宿屋の猫が『ならばおれが猫の王様だ!』と人語で叫んで暖炉に飛び込み、煙突を昇って消えていった」。
バリエーションはありますが、基本はだいたいこんなところです。猫たちには独自の社会と規則があるとする逸話といってよいかと。この話に食いつくのは猫好きに決まってますので、ある種の威力偵察として用いることができるわけです。







――迷信や伝承は、いったい誰が言い出したのかまったくわからない、といったところにも魅力があると思います。だからこそ信じられていたような気さえします。そのルーツを探るような研究もされているのでしょうか?
【西洋魔術博物館】英国の話になりますが、迷信研究はまず収集が重要ですので一般の人も参加しやすいというか。19世紀に入ると「うちのメイドから聞いた話」「乳母に教わった」などの報告が大量に集まるようになり、それらを分類していくうちに、うっすらながら姿が見えてくるわけです。そこからのルーツ探しは語源学や考古学にも関わりますので、なかなかハードルが高いというか。厳密な証明も困難な分野ですので、自分などは恐れ多くて近づけません。
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