コロコロ×スト6漫画で「もう一度、小学生に対してムーブメントを」コロコロ編集部がストリートファイターコラボをはじめる思い

「コロコロコミック」と『ストリートファイター6』(以下、スト6)がコラボレーションした漫画「STREET FIGHTER LUKE RISING」(作画:吉緒もこもこ丸まさお)が、2025年6月29日からWeb漫画サイト「週刊コロコロコミック」で連載をスタートした。スト6の主なユーザー層は20~30代と言われるなか、小学生に向けてコラボ連載を仕掛けるに至った経緯や、小学生の中でのeスポーツの受容、コラボの先に目指すものまで、小学館コロコロコミック編集部の西手成人副編集長と、河村夏樹さんに話を聞いた。


「スト6の裾野を広げたい」コロコロとカプコンがタッグを組んだわけ
――「STREET FIGHTER LUKE RISING」の連載がスタートしました。あらためて作品の概要を教えてください。
【河村】作者は「少年ジャンプ+」で『ゲーミングお嬢様』(原作:大@nani)の作画を担当されていた吉緒もこもこ丸まさお先生で、漫画配信サイト「週刊コロコロコミック」で週間連載します。内容としてはストーリー本編というような形で主人公・ルークがいろんな強者を探して、世界中を旅していくというような話の作りになっています。

また、吉緒先生の大きな武器として、すごくコメディチックに場面を回していただけるというところがあるので、そちらを盛り込みながら、子どもも大人も楽しんでいただけるようなストーリー漫画にできたらなと思っております。
――吉緒もこもこ丸まさお先生にオファーした際はどんな反応でしたか?
【西手】『ゲーミングお嬢様』でストリートファイターのネタも描かれていたのもあって、二つ返事でご快諾いただけました。吉緒先生もコロコロコミックでかつてストリートファイター2の漫画を読んでいたのが原体験だったそうで、スト6の漫画が描けるのはありがたいとおっしゃっていただきました。
吉緒先生からは「ルークという主人公が明るくて軽い性格なので、コメディチックな場面を見やすく、楽しみながらお話を描いています。ストリートファイターは歴史を積み重ねたレジェンドキャラがたくさんいますし、自分もみんな大好きなので、新世代主人公のルークがそのレジェンドファイターたちと戦って、何を感じてどこに行くのか、真剣に向き合って描いています」とメッセージを預かっています。


――ありがとうございます。今回のコラボ連載はどのような形でスタートしたのでしょうか?
【西手】(カプコンIPの)コミカライズはなかなか難しいのかなと思っていたんですが、ありがたいことに今回はカプコンさんの方から「スト6の裾野をもっと広げていきたい」とご相談いただきました。
僕自身もストII直撃世代で、コロコロに配属されたときはずっと「ストリートファイター」というコンテンツが自分の中にずっとあって、(コミカライズを)やっぱりやりたいなって思いはあったので、こちらからも「ぜひ」という形でトントン拍子で進んでいきました。漫画の内容も「コロコロさんにお任せいたします」というスタンスでお話をいただいて、ストーリー漫画にと提案したところ「非常に面白い」とお墨付きをいただけました。
Switch 2がスト6の年齢層をさらに広げる起爆剤に?
――週刊コロコロコミックでの連載にあたり、想定している読者層は?
【西手】コロコロコミックとして、まず小学生に読んでもらいたいとはすごく思っています。ただ、今回Web媒体の方での連載で、Webは年齢が比較的高めの読者がちょっと多いというのもあり、「ストリートファイター」という作品自体が好きな人にもお届けできたらいいなとも思っています。幅広い年齢層の方に、ストリートファイターの魅力をちゃんとしっかり伝えられるような作品にしていきたいです。
――ちなみに、今コロコロコミックの中で小学生に特に支持されている作品やジャンルはどんなものが挙げられますか?
【西手】大きく2つあって、「ベイブレード」と『運命の巻戻士』の二本柱です。ベイブレードはホビーとのコラボレーションで生まれて今もやっぱり人気があります。『運命の巻戻士』はSFストーリー漫画で、ホビー展開はなく漫画一本で勝負しているんですが、こちらもものすごく人気を集めている作品です。ホビーとして遊べる、買える商品があるベイブレードと、オリジナル漫画である『運命の巻戻士』の両方で人気をとれているので、今はいい状況かなと感じています。
――令和の小学生にも、体を動かして遊ぶベイブレードは人気なんですね。
【西手】現在展開されているベイブレードの新シリーズは、単なる玩具じゃなく、競技性のあるギアスポーツという打ち出し方をしっかりしていて、競技として本気でやってくれている方が多いかなと考えています。
――競技性という点でいうと、小学生の中でのeスポーツの立ち位置は肌感としてどのように捉えられていますか?
【西手】eスポーツは小学生はほぼやっていないんじゃないかな、と。eスポーツで遊ぶみたいなところでいうと、スプラトゥーンかスマブラかなみたいな感じだと思います。
一時、フォートナイトが流行っていた時期はあるんですが、ただ小学生向けの大会、小学生が参加できる大会自体がそもそもあんまり存在していないな、って状況があって。eスポーツへの憧れみたいなものを持っている子どもも多分いると思うんですが、その場所がまだ整備されきっていないのかなという印象ですね。
――そうした状況の中、漫画をはじめ、コロコロコミックが小学生にスト6を届ける施策はどのようなものを想定されていますか?
【西手】月刊コロコロコミック本誌側ではカラーの記事で特集を組んだりしているので、それと漫画とを連動して告知しながら、両方で盛り上げていければいいかなと思っています。
また、今回は我々もコラボ連載をぜひにと思った大きなポイントとして、スト6のNintendo Switch 2版(以下「Switch 2」)が発売されたところがあります。今まではPlayStation やXbox、Steamがメインで、どうしても小学生がスト6に触れる機会が少なかったんです。今、Switch 2がどれぐらい小学生に渡っているかは未知数なところではあるんですけれども、これまでよりは間違いなく子どもの手の届く範囲にスト6がやってくる、子どもにリーチできる可能性があるなと。
――たとえばベイブレードのように、リアルでゲーム機を持ち寄ってスト6を遊ぶみたいなイメージも持たれていますか?
【西手】そうですね、持ち寄って遊ぶのか、オンラインでかはわからないですけど、「集まって遊んでやるのは楽しいですよ」という思いはありますし、Switch 2とは相性がいいんじゃないかなと思います。
1対1の対戦格闘ゲームの熱さみたいなものって、やれば感じてもらえるだろうなと思う一方、やる機会がなかったし、自分のようなストII世代の格闘ゲーム全盛期に比べて高齢化みたいなものもあったと思っていて。カプコンさんもスト6でユーザーの平均年齢が10歳ほど下がったとおっしゃっていたので、(今回のコラボやSwitch 2版の展開で)それをさらに10歳下げるのも可能なんじゃないかなと思って取り組んでいます。
ゲーム内コラボも視野、「格闘ゲームって面白い」を子どもに伝えたい

――今後、誌面以外での展開も構想されていますか?
【西手】カプコンさんとは、ゲーム内コラボレーションみたいなことができないかという相談はさせていただいています。「STREET FIGHTER LUKE RISING」という作品としてであったり、コロコロコミックとしてであったりというイメージで、この秋に向けて仕込んでいこうかなという形で動いているところです。
――リアルイベントなどの動きは?
【西手】今後、子どもたちの反響が大きかったら大会みたいなことができたらいいなというのは、夢としてはあります。
――今後が楽しみなところです。最後に、「STREET FIGHTER LUKE RISING」を通して、子どもたちにどのようなものを届けたいと考えていますか?
【西手】格闘ゲームは本当に子どもが離れてしまった分野ではあるかなと思っていて、そこで「格闘ゲームって面白いよ」というのを一番に伝えたいところがすごくあります。カプコンさんも、Switch 2版は当然子どもも意識しているとはおっしゃっていたので。
今、多人数対戦ゲームがすごく多い中で、チーム戦だと(勝負の)責任みたいなものが分散されるわけじゃないですか。そういう意味で、1対1で自分の力を懸けて戦う格闘ゲームの熱さみたいなものがしっかり伝わる漫画にしたいですし、それを読んで格闘ゲームの面白さがちゃんと伝わってほしいという思いが僕の中にはあります。
せっかくスト6で格闘ゲームの年齢層が下がっているのであれば、僕らが小学生や中学生のときにハマっていたあの熱狂みたいなものを、もう一度、小学生に対してムーブメントを起こせたらいいなと思います。
漫画:吉緒もこもこ丸まさお
(C)CAPCOM