夫との会話は「言葉が空気のように抜けていく」アスペルガー症候群の夫と心が通じない。離婚後も元夫と同居した日々を描く

元夫からの連絡がすべて敬語に。離婚したとはいえ、同じ屋根の下に暮らしているのに…。画像提供:アゴ山さん

漫画家・アゴ山 (@agoyama.okane) さんが自身の体験をもとに描く『アスペルガー夫と離婚した後の話』は、心が通じ合わない苦しさを抱えながら離婚を選び、その後も元夫と同じ家で過ごした日々を描いた作品だ。

「話しているのに伝わらない」

『アスペルガー夫と離婚した後の話』1-1画像提供:アゴ山さん

1-2画像提供:アゴ山さん

1-3画像提供:アゴ山さん

本作は、アゴ山さん自身が経験した出来事を描いた実話である。結婚後に「カサンドラ症候群」という言葉を知り、調べていくうちに、発達特性のある配偶者との関係に生きづらさを感じ、同じような悩みを抱える人が多くいることを知ったという。「もっと同じような経験や悩みを抱えている人に届けばいいなと思い、作品を綴りました」と、漫画を描き始めた理由を語る。

アゴ山さんが元夫との生活で感じていたのは、「普通に生活をして普通に暮らせているのに、会話や行動になにか違和感を感じる」という説明しにくい感覚だった。「こちらの思ったことや伝えたいことがきちんと話しても伝わらない、言葉が空気の様に抜けていく感覚がありました」と振り返る。

「悪いのは私?」

元夫は世間的には「優しくて真面目な人」だった。そのため、自分が抱える悩みを誰かに相談しても、「悪いのは許容範囲が狭い私」というような受け止め方をされることが多かったという。周囲に理解してもらえない状況は、アゴ山さんを徐々に自己嫌悪へと追い込んでいった。

夫婦の間で感じる違和感は、外からは見えにくい。「自分が我慢すればいいのか」「考え方を変えるべきなのか」と、自分自身を責め続けてしまう。そんな出口の見えない思いも、本作では率直に描かれている。

離婚したのに、元夫と同じ屋根の下で

離婚後も、子どもたちのことや新しい家が見つかるまでの事情から、アゴ山さんはしばらく元夫と同居を続けることになった。「正直とてもつらかったです。ほぼ顔も合わせないようにしていましたが、元夫の私物や空気感がありましたし、子どもたちも不思議に思っていた」と当時を明かす。

夫婦ではなくなったあとも、同じ家には元夫の存在がある。「家全体が冷たく感じて、その中で数カ月暮らすというのが苦しかったです」という言葉からは、離婚がすぐにすべてを終わらせてくれるわけではない現実が伝わってくる。

娘が幼いころから見せていた、父親への反応

娘もまた、元夫に対して苦手意識を持っていたという。アゴ山さんは「娘が赤ちゃんのころから夫が抱いてもずっと泣いていたので、最初はイヤイヤ期やママ大好きなだけかなと思っていました」と振り返る。しかし成長して3〜4歳になっても父親にあまり懐かない様子を見て、「パパそのものが苦手なんだなあ…と感じていました」と話す。

「ひとりで悩まないで」作品に込めた思い

連載を始めると、アゴ山さん自身が驚くほど多くの共感の声が寄せられた。「こんなにも同じように悩んでいる人がいるんだ…と」と、その反響を振り返る。自身も「見知らぬネットの人たちに気が付かされ沢山助けられた」といい、作品を通して誰かの気持ちが少しでも救われればと願っている。

「ひとりで悩まず必ず誰か助けてくれる方はいるので、是非話してみてくれたらいいなと思います」とアゴ山さん。夫婦の間にある違和感は、他人からは見えにくいものかもしれない。それでも、同じ悩みを経験した人の言葉に触れることで、自分だけではないと気付けることもある。離婚後の生活まで含めて描かれるリアルな体験談に注目したい。

■取材協力:アゴ山(@longagoyama)

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