仕事に疲れた人へ…。理不尽なクレームの帰路、踏切の幽霊に「飲もうぜ」と語る配達員の夜【作者に聞く】

その踏切には幽霊が眠るという送達ねこ(@jinjanosandou)

その町には、受験に失敗して命を絶った高校生の幽霊が出る踏切がある。見えない人が多いが、配達エリアにその踏切を含む郵便配達員・水谷くんは“見えるタイプ”だ。幽霊は何をするでもなく、ただ静かに踏切に横たわっている。読者からは「幽霊が怖い風貌ではなくて、眠るように横たわっているのがとても印象的でした」という声が届いている。

幽霊は何をするでもなく、そこに眠っていた送達ねこ(@jinjanosandou)

踏切に眠る_P003送達ねこ(@jinjanosandou)

踏切に眠る_P004送達ねこ(@jinjanosandou)


踏んだり蹴ったりの誕生日に起きた出来事


水谷くんの配達エリアは幽霊が出るだけでなく、クレーマーやトラブルも多い。ある日、クレーム客から延々と説教を聞かされ、局に帰ると新人が入力し忘れた未処理の仕事が放置されていた。仕方なく代わりに処理する水谷くんだったが、ふと「今日俺、誕生日じゃん」と気づく。帰りのコンビニで自分への祝いとして“ちょっといいビール”を購入するのだが、例の踏切に差し掛かってしまう。

劇中には、水谷くんがビールを隠すシーンがある。現役郵便局員でもある作者の送達ねこ(@jinjanosandou)さんは、このシーンについて「知らない人に、思いがけず道やお店の中で会釈されることもあります。仕事から解放されてノーガードになっていますから、ちょっとドキッとします。完全にひとりになれるまで『会社員の顔』が脱げない緊張感があります」と、不特定多数の人と接する職業ならではの心情を明かす。

「人生を踏ん張った人の強さ」読者から反響


踏切の幽霊と対峙した水谷くんは、「お前知らないで 行ったろ。飲もうぜ」と語りかける。送達ねこさんはこのセリフについて、「水谷くんには、受験や就活などの分岐点で挫折を経て今の仕事に就いた経緯があります。そんな悪夢みたいな人生ゲームを降りた幽霊の気持ちがわかる。ただ、年若くして亡くなった幽霊が、この世でしか得られない『喜び』の1つを知らないまま行ってしまったろうとも感じている。苦労の多い人生を踏ん張った者だけが知る、ささやかな喜びを幽霊と分かち合おうと考えました」と込めた思いを語る。

同作は、送達ねこさんのもとに届いた同僚の体験談を漫画化した「郵便屋が集めた奇談」の1エピソードだ。読者からは「生きやすい世界ってなんだろう?」「幸せに生きられる未来がいつか来ますように」といった温かいコメントが寄せられている。日本のどこかでひっそりと起こる不思議な怪異に注目したい。


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