【実話】目を背けたい“親の老い”…全裸で倒れた父の「苦労かけて申し訳ない」に心が救われた話

「父が全裸で倒れてた。」第23話 作=キクチ

右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をわかりやすくコミカルな漫画で描いてきたキクチさん(@kkc_ayn)。なかでも、母親の自宅介護と看取りがテーマのコミックエッセイ『20代、親を看取る。』では、自宅介護の現実や、“親との死別”と向き合うなかで複雑に揺れ動く感情が描かれており、同じ経験がある人や親の老いを感じ始めている同世代などから大きな反響を集めた。

「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ

第1話1-1 作=キクチ

第1話1-2 作=キクチ


※本作は著者の闘病体験を描いたコミックエッセイです。紹介している病状や治療の経過には個人差があり、医学的な見解を代弁するものではありません。気がかりな症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

コミックエッセイ『父が全裸で倒れてた。』は、母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう物語である。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、一人っ子として頼れる家族がいないなかで、キクチさんはさまざまな決断を迫られることになる。いつかは誰もが直面する“親の老いと死”について紹介する本作。今回は、本格的なリンパ腫治療の開始と、父からのビデオ通話に関するエピソードだ。

コロナから回復!本格的な治療開始と父からのビデオ通話


父親がコロナにかかってから少し経ち、担当医師に呼び出されたキクチさん。コロナの影響で抗がん剤治療をストップしていたため、腫瘍が大きくなっているという心穏やかではない報告だった。しかし、コロナからは回復しつつあるため、ここから本格的な治療が始められるという。父が倒れてから約2カ月弱、さまざまな困難を乗り越えてきたなかでの喜ばしい一歩だ。

腫瘍が大きくなっていると聞いたときはやはり不安になったというキクチさんだが、やっと本格的な治療ができると聞いて安堵したと振り返る。これまでは体がズタボロで標準的な抗がん剤に耐えられる体力がなく、様子を見ながら少量で投与するにとどまっていた。本格的な治療ができるということは、父の体力もずいぶん復活してきた証拠であり、「ここからがスタートラインだと感じた」と当時の思いを明かしてくれた。

スマホで文字を打てるまで容体が安定した父親から、なんとビデオ通話がかかってきた。担当医師から「リンパ腫が悪くなっているかも」と聞いた直後だったが、“顔がつぶれすぎ”な1コマやあっけらかんとした話し方からは、前著『20代、親を看取る。』でも描かれていた、元気だったころの父親に近い様子が見て取れる。

ビデオ通話に出た際、画面に映った父の姿があまりにも“コレ(顔がつぶれた状態)”だったため、キクチさんは本当に笑ってしまったという。いつもよりむくんだ顔が、余計につぶれた表情を誇張していたそうだ。コロナに罹患していたとはいえ、医師の言葉通りほとんど症状がない状態で、かつ体力も復活してきていたため、「元気だったころの父が戻ってきた印象だった」と嬉しそうに語る。

せん妄の記憶を持つ父からの謝罪と、安堵の先の不穏な結末


父親は、自分がせん妄だったときのことを断片的に覚えていると話し、「苦労をかけてしまっただろうから申し訳ない」と謝罪した。せん妄の症状が出ていた父親と対峙し苦悩していたキクチさんにとっては、その苦労が報われるような言葉だった。

せん妄は脳の意識障害であるため、まさか本人が覚えているとは思わなかったという。「今思えば『意識がありながらあんなひどいことを言ってたんかい!(笑)』と突っ込まずにはいられない」と笑いつつも、過ぎ去ったことなので責める気にはならないと語る。それでもやはり、謝ってもらえたことで心が救われたそうだ。せん妄での言動を振り返って謝ってくれる人は稀だろうと感じ、「自分はすごく幸せ者だと思った」と親子の深い絆をのぞかせた。

コロナも全快に近づき、この先は本格的な治療ができると安堵したのもつかの間、不穏な締めくくりとなった今回のエピソード。つらい状況も淡々と、ときにクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しんでほしい。


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